表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/61

15.扇動師 司祭―――グロン

 司祭グロンは大通りの突き当り、聖堂の前の広場で演説を始めた。



「今、この城市は危機を迎えている!! 魔物が入り込み、騎士たちを懐柔、いや、操っているのだ!!」



 大声を張り上げ、身振り手振りで危機感を煽る司祭。

 彼にとって聖堂こそが人々を護る存在であり、頼るべき拠り所である。

 しかし、現在その地位はオークにとって代わろうとしている。

 聖堂の運営は税で賄われるが、それだけでは司祭個人の懐が寂しい。清貧を美徳とする聖堂のライフスタイルでは腹が膨れない。

 司祭の頼みは寄付だ。

 治癒魔法の際にお清め代として徴収している。

 その収益が芳しくない。

 魔物との戦闘が増えているにも関わらず収益が下がっているのはドドのせいだと考えた。


(奴が妙なことを吹き込み始めてから、負傷兵が極端に減った! おまけに怪しい料理で兵士たちは疲れ知らずだ!)



 これは単に、司祭の治癒魔法の腕が未熟であるからだが、当人はそうは思わない。



「考えてみて下さい! この城がオーガの襲撃を受け、勇者が来た! しかしその勇者は死に、戻ってきたのはあのオークだ!!」



 それを不審に思わない者ばかりではない。

 かん口令が敷かれたため大衆は勇者マリアの死の真相を知らない。もちろん、その仇を誰が捕らえたのかも。



「オーガが度々この城を襲撃している原因は未だ不明となっている!! 本当にそうだろうか!? オークが城に入り浸り、兵士たちの食事を作っている。これを異常に思わない空気は正気の沙汰ではない!!」



 城に出入りする者の中にはオークが自由に歩き回り、調理場で料理人たちと談笑しながら料理している様を見た者も多い。

 その様子は毎日見ている兵士たちとは違い、非常にセンセーショナルな光景として目に焼き付いたことだろう。



「魔物の襲撃も増えている!! 全てにあのオークが関わっている!! この問題を放置してはならない!! いずれ、より大きな災いがこの城に降りかかるだろう! その時、城は扉を強固に閉め、皆神に祈るだろう!! その時、内側から開けるものがいたら!? 神々はそんな愚かな我々をお救いくださるだろうか!! いざという時が来てからでは遅い!! さぁ、今こそ、この城を護るために行動するのだ!!」



 危機感を煽られた大衆は行動を起こした。

 市民たちが城に集い、ドドを引き渡すように騒ぎ立てるようになった。


 司祭の目論見通りになった。

 大衆を扇動し、目障りなドドを浄化魔法で自らが討伐する計画だ。


 ◇


「あの似非坊主め! 面倒なことを!!」


 城代ガナムはまたしても頭を抱えた。


「これではドドの評判ばかりか城の統治が難しくなります。かといってドドを差し出せば、我々が何か洗脳されていたと認めるようなものです」



 ジェミニは一貫してドドを擁護する構えだ。


「父上、私の実力はご存じのはずです。ドドのおかげで私は成長しました。軍そのものも」

「わかっている。だが、言いがかりだとしても否定できん。勇者の死の真相は明かせんし、実際魔物の数は増えている。それに、ドドはどこから来た? ラブロンの森にオークはいない」

「原因ですか……最初のオーガ襲来があったのは司祭グロンがこの城市に派遣されてきてからです」

「……そういえばそうだが……まさか、司祭を疑うのか!? それこそ根拠はないだろう!! 滅多なことを言うな!!」



 聖堂に疑いをかけるだけで不敬と取られる危険な行為だ。例え何か証拠があってもそれは変わらない。



「分かりました。では魔物の討伐にドドをお加えになるのはどうですか?」

「うん?」

「魔物の討伐の実績があれば、疑う理由が無くなります。城の外で活動し、従魔として働く。それなら責める口実は無くなります」

「そうだな。それで様子を見てみるか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ