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6.ブリジットという女―――セブンスター

 ブリジットは馬具屋にわざわざ依頼した。


「何!? すぐ造れないのか!?」

「へぇ。そりゃ荷馬車の車輪やら軸やらは特注ですんで、鍛冶屋にも依頼しますし……」

「むむむ」



(だから言わんこっちゃない)



 二人はギルドに戻った。


「あの、ブリジットさん」

「今忙しい」



 ギルド職員はブリジットに何か頼みたい様子だが取り付く島もない。


 こそっとドドが声をかける。


「いいのか? 君の雇用先みたいなものだろう?」

「雇用? まぁ確かにそうだが、私たちは自由職だ。仕事をするもしないも自由。評価は実績でのみ。媚を売る必要はない」

「困っているみたいだが」

「ああ、ここは年中困ってる。何せラブロンの森に接するカースタッグ城だ。ここはそういうところだ。構い始めたらきりがない」

「そうか」



(それにしても、有名人のようだな)



 ドドが連れ添って歩いているわけだから相当目立っている。しかし、一日経っても未だ誰もちょっかいを出してこない。


 実力主義のこの冒険者ギルドで、ブリジットはかなり上の立場なのだと察するドド。



(だが、同時に彼女は見た目以上に幼い印象もある。計画性がなかったり、ムキなったり……)



 二人は宿替わりの訓練所の納屋に戻った。



「ふぅ。ドド、何食べる?」

「ブリジット、君は今いくつだ?」

「ん? たぶん18か19歳だが?」



 ドドの思っていたよりも若かった。



(まだ子供だったか。おれは人にもっと関心を持つべきだな)



「なぜ冒険者に?」

「どうしたのだ、急に?」

「うん。おれは訳あって放浪を強いられたりして、いろんな世界を見て回ったが、できれば一所に落ち着きたいと思っていた。そんなものだろう? 見たところ士官する腕はあるようだし、なぜ冒険者をやっているのか不思議でな」



 士官という言葉を使ったが、もっと別の仕事もあるように思えた。

 何せ容姿が整っている。言葉遣いや雰囲気が市民離れしている。

 本人は顔の傷を気にしているが、そんなものはおしろいで隠せばわからないだろう。

 その気になれば貴族の奥方に収まり悠々自適の生活もできるのではないか。

 そう思うのはドドの主観に過ぎない、というわけでもない。


 実際、貴族から求婚されることも多い。

 しかしブリジットは興味がない。



「ふん、地位などに興味はない。それに私はあまり集団に属するのが得意ではないのだ。そうだな、冒険者を続けているのはこれしかできないからさ」



 ブリジットはそれを少しも気後れしていない様子だ。

 冒険者として成功していることを誇っている。



「冒険者と街の兵士は何が違うんだ?」

「全然違うぞ! 冒険者は未確認の手がかりを頼りに時に未開拓、未知の場所へ赴き、新しい真実や希少な情報を手に入れるのが仕事だ。兵士は命令で戦うだけだろう?」

「なるほど……必ずしも戦う必要はないのか」

「まぁ、その目的の過程で戦うばかりではあるから、兵士と似ているのかもしれないな。護衛や討伐依頼が多いのは事実だ」

「特殊な仕事だよな。疑問なんだが依頼主は冒険者をどの程度信用するんだ? 正直ギルドが保証していようが、依頼内容が重要な案件の場合、見ず知らずの相手に依頼する気になるとは思えないが」

「それはランクを見ればおおよその信用度はわかる」

「ランク?」



 モンスターの脅威度に応じて階級分けがあるように、冒険者にも階級がある。


 星1~星10までの十段階。



「星の評価はより脅威度の高い任務の成功率で決まる。だから依頼内容に応じて相応の実力者が任務に就くように、任務の適正ランクが設定されている。それに依頼人は任務に就く冒険者の実績を確認できるんだ」

「思ったよりしっかりしているな」

「ああ、そこらの小貴族なんかよりずっと誠実な運営をしているさ。ちなみに私は七つ星だ」

「それで、皆君によそよそしいんだな」

「言っただろう。集団は苦手なんだ。逆に言えばここまでしっかりした運営をしなければ無頼漢がいつでも不正を働くのが冒険者だ。ランクが高くても信用できない人間も多い」




(その割に、オークであるおれのことはやけにあっさり信用したな)



「ブリジット、ありがとう」

「な、なんだ突然!!」

「おれも君を信じる」

「そうか。安心しろ。私があなたを人間に戻す」




 そのころ馬具屋は鍛冶屋と大工屋に依頼し、大工屋は城の御用職人に相談。



 案の定、まごまごしている内にブリジットたちを厄介ごとが訪ねてきた。




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