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いつもお読みいただきありがとうございます!

 エレノアが出ていくと、カイルは家令のレオポルドを呼んだ。


「あいつは自分の父親のことは知らないようだ。母親の遺品から何か情報は見つかったか?」

「母親は用心深い人物だったようで明確な情報はなにも。それかすべてを捨ててあの町に逃れたのでしょう。以前はフェルマー公爵家で働いていたという情報を掴みました」

「フェルマー公爵家か。あの家の子供は代々全員ピンクブロンドだな」

「はい。ですので父親は公爵家で働いていた使用人か出入りのあった貴族かとあたりをつけて探っています」

「そうか。引き続きよろしく頼む」

「調べ終わった遺品はエレノア様にお渡ししてよろしいので?」

「あぁ、いいだろう」

「承知しました」

「明日から手間をかける」

「私めにできることは何なりと」


 家令のレオポルドはカイルに頭を下げた。




 エレノアは勉強が始まる前にすでにご機嫌だった。昨日の晩ごはんもだが本日の朝ごはんも素晴らしかったからだ。


「なんですか! このトマト! 甘すぎるぅぅ。リンゴ? まさかトマトの形をしたリンゴ?」

「おい、うるさい」

「このオムレツ! 普通に焼いたらこんなに表面がピカピカツルツルになりませんよね! なんでこんなにツルツルなんですか! わ、中にチーズが入ってる! キノコも!」

「やかましいと言っている」

「ふぉぉ、キャベツ! このキャベツも甘い。このアスパラも!」

「なんでこの女はたかが食事でこんなにうるさいんだ。飢えているのか。おい、平民はどんなものを食べてるんだ」

「後でキッチンに行ってみていいですか!?」

「話を聞け」

「あ、さっきたかが食事って言いましたよね! たかがなんて失礼ですよ!」

「聞いていたのか」


 エレノアが好きにしていいと言われた部屋に食事が運ばれてきて、なぜかご主人様と食べる。監視されているような視線を感じるので、ペットのマナーが不安なのだろうか。これは躾の一環?


 あまりに美味しいので感動していると、ご主人様はずっと眉間に皺を刻んで難しい顔をしていた。お母さんと「美味しいね」と食べていたノリで食事をしてしまったが、お貴族様は一言もしゃべらずに食べるんだろうか。騒がしくして悪いことをしてしまった。



「昨日はエリーザベト様とオニキス様を綺麗にしていただきありがとうございました」


 勉強の時間になり、背筋をピンと伸ばして綺麗なお辞儀をするのはロマンスグレーの細身の男性。スマートな眼鏡まで鼻に乗っかっている。完璧なイケオジである。勤めていた青果店では絶対にお目にかかれないレベル。

 どこにも贅肉が見当たらない。よくあるはずのお腹にも。皺はあるもののそれは老いを示すのではなく、彼を上品に見せるだけのパーツに過ぎない。


「家令のレオポルドと申します」

「エレノアです。よろしくお願いします」

「今日からエレノア様の勉強を担当しますが、勉強の前にまずは傷口の消毒をしましょう」

「え、痛くないし大丈夫です」

「治りが遅くなりますので痛くなくてもやりましょう」


 レオポルドに押し切られ、後から入ってきたロザリンドが持つ消毒セットで傷の消毒をされて新しいガーゼに交換される。


 この人、物腰は柔らかいが有無を言わせないパワーがある。さすが家令。

 ん? 家令ってそういえば何だろう? 執事さんの上かな? ロザリンドさんよりも上みたいだし。


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