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スキル『鈍感』を持つペット兼婚約者は愛の夢を見るのか  作者: 頼爾@「軍人王女の武器商人」発売中


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いつもお読みいただきありがとうございます!

 自分の父親であろうフェルマー公爵をエレノアは無言で見上げた。

 護衛の広い背中と公爵の顔はピンと張った糸のように緊張しているのが伝わって来る。


「なぜここに?」

「……ここにいる彼はエレノアの知り合いだったから、いつか来ると思っていた」


 誰かから情報が流れているんだろうか。王子から何も知らされていないから再度の囮作戦ではないはず。


「会いたくないって言ったはずです」


 エレノアの言葉に公爵の顔色はまた悪くなる。

 この人、無理矢理でも会えば私が絆されて話を聞くとでも思ってたんだろうか。最低。


「君はとても……パロマに似ている」

「お母さんの名前を勝手に呼ばないで。見つけられもしなかったくせに」


 護衛が驚いたようにエレノアを一瞬振り返って、また凄い速度で公爵の方に顔を向けた。護衛の気持ちも分かる。エレノアはいつもニコニコヘラヘラしていて、こんな鋭い態度をブラッドリー公爵邸で示したことはない。


 でも、エレノアは今とても腹が立っていた。喉の奥がヒリヒリするくらいには。

 父親を目の前にしてこんなに自分の感情が波打つなんて、エレノアでさえ知らなかった。怒りで耳鳴りまでしてきた。


 お母さんと恋仲だったとか、そんなことはどうでもいい。

 勤めていたお屋敷からお母さんが逃げ出さなければいけなかったのも、その後の人生が苦しかったのも全部この人のせいだ。恋仲なら余計に、なぜ探さなかったのか、それこそ死に物狂いで。


「言い訳にしかならないが。私なりに彼女を探したが無理だった。妻にも妨害されてうまくいかなかった。彼女は亡くなったと聞いた……本当にすまない」


 この人の話なんて聞きたくない。声だけでムカムカする。


「何も話すことはないです。帰りましょう」


 護衛の袖を軽く引っ張って後ろを向く。


「エレノア! 待ってくれ! 彼女を探していたのは本当なんだ! 君のことも探していた! だが、私の予知では見えないことが多すぎた」


 何なの、予知って。スキル?

 スキルもお金も権力もあるのに、お母さんのこと見つけられなかったの? それってもう悪い意味で運命?


「本当に愛し合っていた。だが、妻が彼女の存在を突きとめて私が領地に行っている間に追い出してしまった」

「今更私に父親面しないで!」


 後ろから声が追いかけてくるので立ち止まって睨んだ。


「私を憎む気持ちは分かるが、エレノア。もしカイル・ブラッドリーと結婚したいなら貴族の身分はあった方がいい。人身売買を主導していたのはアバネシー侯爵家でフェルマー公爵家は妻の研究結果を差し出すからそれほど大きな処罰にはならない」


 なんでそんなこと言われなくちゃいけないんだろう。私の人生勝手に決めないで。

 それに、なんでこの人私をずっと追いかけてくるんだろう。嫌だって言ってるのに。


 パキリと小枝を踏んだような小さな音がした。でも、それは妙に耳に響いた。

 急に「ぐっ」と呻きながらフェルマー公爵が膝をつく。それは目の前の護衛も同じだった。


「え?」


 周囲を見回すが、エレノア達以外誰もいない。

 フェルマー公爵と護衛だけが息苦しそうにもがいている。


「え? え? 何?」


 護衛を助けようと手を伸ばしたが、触れた瞬間振り払われてしまった。

 びっくりして手を引っ込めたが、護衛は苦しそうにしながらも首を振って離れるように手で示す。


 目の前のよく分からない状況に泣きそうになった。

 あ、でも私には『吸収』のスキルがあるんだよね? それで何とかできない? フェルマー公爵はどうでもいいけど、この護衛さんだけでも。


 苦しんで吐いている護衛にまた触れようとした時に、後ろから腕を掴まれた。


「落ち着け。スキルの暴走だ」

「なんで、ご主人様が……?」


 エレノアの腕をがっちり掴んでいるのは、息を切らせたカイルだ。


「いいから、落ち着け。今この護衛騎士に触れたら別のものまで吸収するかもしれない」

「お、落ち着けってどうやって?」

「フェルマー公爵のところに行く必要はない」

「で、でもあの人は公爵で、なんかしつこいし。今更父親面して引き取ろうとしてきて!」


 エレノアもぎゅっとカイルの腕を掴み返した。その途端、頭の中にどこかの風景と人物が流れ込んでくる。見たことがある人だ。よくよく見れば髪色以外、私に似ている。これってもしかしてお母さん?


 会話が途切れてぼんやりしているとカイルに軽く頬を叩かれた。


「おい! まさか! 記憶を吸収するな!」

「え、でも今お母さんみたいな人が」


 そんな会話をしながらもエレノアの頭には次々と何かが流れ込んできた。


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