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いつもお読みいただきありがとうございます!

 その後、スキルで移動して来た王子や部下の人々によってカイルとオニキスと夫人は落とし穴から救出された。

 夫人は自害しようとしたらしく、オニキスが噛みついて阻止している間にカイルが記憶を操作して抜いて気絶させたのだという。


「ご主人様、歩き方がおかしいです」

「片足の骨が折れてる」

「え! 死んじゃう!」

「死ぬわけないだろ。お前だって指折られてなんでそんな平気そうなんだ」

「痛くないので」

「そんな馬鹿な」


 レオポルドにやったことを思い出して、慌てて地面に座ったカイルの折れた足に手を乗せる。


「痛っ!」


 カイルは一瞬顔をしかめたが、すぐに困惑した表情になる。


「痛くない」

「えへへ、良かったです。レオポルドさんにもやったんです」

「どういうことだ。まさか二つ目のスキルか? さっきの男のスキルだって無効化していたよな。しかも痛みも感じなくなった」


 カイルの肩の傷は応急処置されてそのままだ。足の骨折もエレノアが手を当てて治ることはない。エレノアはやっぱり癒し系のスキルではなかったと落胆した。


「スキルを暴走させたか?」

「何ですかそれ。分かんないです」

「命の危機だったか?」

「だってヒヴァリーさんと……あ、ヒヴァリーさんは?」

「無事だ。お前は指も折られてるし……ボロボロだからな。二つ目のスキルもそれで暴走してダンカンのスキルによるマーキングが消えたのかもな」


 カイルはパーティーに参加した時のままの服だが血も付いてボロボロだ。自分のドレスを見ると、見事にあちこち破れて汚れている。


「うわぁ、せっかくのドレスがボロボロ」


 よくこのドレスであそこまで動けたものだと感心していると、頬をムニッとつままれた。


「ごひゅじんしゃま?」

「まったく。また誘拐されて」

「わひゃしのせいじゃにゃいです」

「手洗いくらい我慢しろ」

「えぇー、しょれはきびちいです」

「しかも指まで折られて鼻血まで出して」


 頬をつままれたままムニムニされる。カイルは半笑いだ。


「訳の分からんスキルを訳の分からんタイミングで殺されそうになりながら使うし」

「それも、わひゃしのせいじゃないです」

「フェルマー公爵夫人の記憶を抜いたからそれを解析すれば何か分かるかもな。お前の母親のスキルが偶然遺伝したかもしれない」

「しょーなんですか?」

「抜いた記憶を軽く見た感じだと、確かに夫人とお前の母親が接触した後で夫人はスキルを使えなくなってる」

「おかーさんはスキルを奪ってにゃんかいましぇん」


 もう片方の頬もつままれてムニムニされる。


「自分でも知らなかったスキルが命の危機を感じた時に発動したのかもしれないだろ。平民なら鑑定されていないだろうしな。お前の母親は、お腹のお前を守るためにスキルを使ったんだ」


 なんだかカイルはカッコいいことを言っている。エレノアの頬を両側からつまんだまま。


「公爵はむかんけーだったんでひゅか」

「フェルマー公爵も人身売買について関与はありそうだ。記憶を解析して捕まえる。これから忙しいな、夫人の人身売買の目的なんかも探らないと」

「よかったでふ」


 先ほどから気を失ったり怪我をしたりした様子の人たちが何人も縛られて、連れて行かれている。そのおかげで二人は応急処置後に放置されているのだ。


「あれは公爵夫人の部下だ。孤児で使えそうなスキル持ちであれば金を出して養育して犯罪に加担させていたようだ。表では人格者で裏では犯罪者だな」


 触ると腐っちゃうスキル持ちの男の人も孤児だったのだろう。フェルマー公爵夫人に従うのは当然という態度だった。


「変身系のスキル持ちが多かったせいで助けるのに手間取った」


 頬をムニーッと両側に伸ばしてからカイルはやっと手を放した。


「どうやってここが分かったんですか」

「ダンカンのスキルで追える予定だったができなくて。そうしたらエリーザベトがここまで連れて来た」

「エリーザベト様とオニキス様は今日大活躍でしたねぇ」

「そうだな。エリーザベトのおかげで辿りつけて、オニキスのおかげで落とし穴が判明して夫人も捕まえられたわけだ」

「エリーザベト様の尻尾は治りますか?」

「尻尾だけだから大丈夫だ。城に治せるスキル持ちがいる」


 カイルは疲れたようで、両手を後ろについて空を見上げた。


「助けに来てくれてありがとうございます、ご主人様」


 カイルの首が動いてグリーンの目がこちらを向いた。カイルの視線はエレノアの顔から徐々に下りていって指先で止まる。


「もう少し早く来れたら良かったな。そうしたらお前はこんなに傷つかなかった」

「うわぁ」

「なんだ、その反応」

「ご主人様ってなんか今だけ王子様みたいでした」

「こんなボロボロの王子がいてたまるか」


 そう言いながらもカイルは柔らかく笑っていた。


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