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いつもお読みいただきありがとうございます!

 スキルが発動しないらしく、男は焦ってエレノアを床に放り投げた。


 床に叩きつけられて受け身は取れなかったが、痛みはなかった。階段ではなかったことと鈍感であることはありがたいが、鼻に生温かい感触がある。手が縛られていて触れないけどおそらくこれ、鼻血が出てる。


 顔を上げると、男に刺さっていたナイフはさっきまでのように腐り落ちていた。でも、男の体には確実にダメージを与えたようで血が床に滴っている。


 どういうこと? なんでさっきは攻撃が通ったの? なんでさっきまであのナイフは腐らなかったの? もしかして、私が離れたから?


 レオポルドと男が動きを止めていたのは一瞬で、すでに二人は戦いを再開している。攻撃が通らないのでレオポルドの方が押され気味だ。


 レオポルドは年齢に見合わない動きで窓ガラスを割って入って来たが、他の人たちはまだ一階にいるのだろうか。


 地面に這いつくばったまま二人の邪魔にならないところに転がってどうしようか考えていると、背中に何かが乗った。さらに縛られた手首に何か当たっている。このフワフワした感触は。


「エリーザベト様?」

「シャー」


 まるで、うるせぇ黙ってろと言わんばかりに唸られた。

 動物と会話できるスキルではないようだ。エリーザベトはエレノアの手に爪を立てて力を入れながらガリガリと何かやっている。しばらくして両手が自由になった。


「あ、ありがとう」


 フンと鼻を鳴らす音がして、今度は足の縄をガジガジかじりはじめた。邪魔にならないように私も縄を緩めるように手足を動かす。


 やっと手足が自由になった頃には、レオポルドは足や肩を切りつけられて明らかに動きが遅くなっていた。


 男が短剣を振りかぶるのが見えて、慌ててエレノアは比較的近くにあった男の足に縋りついた。


「いけませんっ!」

「ちっ。やっぱりお前にはスキルが効かない!」


 レオポルドが今日一番の焦った声を出す。触れたらミイラのように腐るのだろうが、エレノアはそうならない。さっきもそうだったから自信があった。


 男はエレノアを引きはがそうと蹴るが、それでも必死でしがみついた。視界にレオポルドが散々投げたナイフが映る。レオポルドがこちらに近付いているのを確認して、片手でナイフを拾って男の足に突き刺した。


「くっ! このっ!」


 やっぱり、なぜだか分からないけど私が触っているところの近くには攻撃が通る!


「エレノア様!」


 もう一度ナイフを刺そうとしたが男の行動の方が速かった。


 手の甲を切りつけられるが痛みを感じないので、そのまま男の足に再度ナイフを刺す。

 今度こそ自分の肩や背中を刺されるかもしれないと怯えながらも、レオポルドの反撃を期待して足にしがみつくのはやめなかった。


 外でたくさん鳴っていた乾いた音が近くでした。もう一回、した。床に飛び散った赤いものが見えて驚いた。


「まだ手を離すな!」


 小さな武器を片手にカイルが叫んでいた。その言葉でエレノアは再び男にしがみつく。

 パァンという乾いた音で男はゆっくり倒れた。

 カイルは近付いてくると、エレノアの体を男から引き離して至近距離でまた男を撃った。ピストルだ、初めて見た。銃弾は男の体に到達した瞬間にすぐ腐った。


「腐敗が効かないのはエレノア様のスキルでしたか」


 レオポルドが血を流しながらよろよろと近付いてくる。

 カイルはエレノアの顔を見るや否やハンカチを押し付けてきた。鼻血のことをすっかり忘れていた。


 ハンカチを鼻に当てていると、カイルはエレノアの全身を調べて折られた三本の指や切られた手を見て苦し気な表情をする。


「夫人は捕まえましたか?」

「お前は……」


 エレノアとカイルの発した言葉は同時だった。何か他の音も同時に聞こえた気がする。

 続きの言葉を待ったが、彼は驚いた表情で自分の肩を押さえた。


「シャアア!」

「殺すな! 生け捕りにしろ!」


 カイルの肩からは血が出ていた。

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