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いつもお読みいただきありがとうございます!

「スキル『鈍感』だと?」

「鑑定結果にはそう出ています。中々見ないスキルですね」

「鈍感だから薬品や物理攻撃、他のスキルが効かなかったのか」

「そのようです。毒なども効きづらいですが、その代わり薬も効きづらいでしょう。現在熱を出していますが、薬の効果はほぼ見られません」

「本人は熱があったことも全く気付いてなかったからな。鈍感なのも難儀なものだ」

「熱があるのに動き回ろうとするので、侍女が大変です」


 知らせを持ってきた男が出ていくと、三人の男たちは再び顔を突き合わせた。


「で、あの女をどうする?」

「どうって?」

「裏の仕事をしている俺たちを見られた。記憶操作もできない。しかも面白いスキル持ち」

「鈍感が面白いか?」

「あぁ、とても。それに彼女にはもう一つスキルがある」

「二つのスキル持ち?」

「そうだ」

「珍しい。殿下くらいでしょう、二つのスキル持ちは」

「そうかもな。もう一つのスキルは聞いたこともないようなスキルだ。一体、何ができるのやら。そしてあの濃い紫の瞳。まだ調査中だが、きっとどこかの貴族の愛人が生んだ子供だろう」

「彼女の家にあった物はすべて回収しました」

「あぁ、母親はつい最近死んでるが嗅ぎまわっている怪しい奴らがいたからな。彼女が勤めていた青果店には?」

「行きました。店主が気の強い女性で。彼女はどうなったんだ!と凄まじい剣幕で詰め寄られましたよ」

「口止めはできてるんだろうな?」

「はい。記憶操作も済んでいます」

「そうか。ならいい。ん? 確かカイルには婚約者がいなかったよな?」


 カイルと呼ばれた黒髪の青年は嫌そうに顔を歪め、長い赤髪を一つ結びにしている王子を見る。


「まさか」

「あぁ、そのまさかだ。ちょうどいいじゃないか。公爵家の次男のお前が攫われそうになっていたあの女を助けて恋に落ちる。どうだ?」

「殿下、少女向けの本の読みすぎでは?」

「でも、そういう話って受けるんだよなぁ」


 途中で口をはさむのはガタイのいい金髪の男。


「ダンカン、お前な」

「どのみち婚約者は必要なんだ。監視と犯罪グループからの保護がてらあの女を飼え」

「ペットみたいだな。まぁ犬っぽかった」

「猫じゃないか?」

「いや、犬だ」

「猫」

「そんなことはどうでもいいでしょう」


 犬猫の不毛な言い合いをカイルは制した。


「ゲイリー殿下のご命令ですか?」

「いや、命令まではしない。でも結構可愛い顔してたし、お前と婚約するなら仕事内容は知っている方がいい。危険も付きまとう。ちょうどいいだろ。身寄りがないから最悪死んでも大丈夫だ」

「ちょうどいいって……」

「鈍感なら精神干渉もされないしいいんじゃないか?」

「……人の婚約者をそんな簡単に……」

「まぁいいじゃないか。彼女をこのまま王宮に置いておくことはできない。ブラッドリー公爵家で引き取って監視・調査してくれ。そうすれば、情報を得た者たちはブラッドリー公爵家を嗅ぎまわるはずだ。敵を一か所に集められる上に記憶操作で何とでもできるな」

「あの女に記憶操作ができていればこんなことには……」


 カイルはげんなりした顔を隠しもしない。


「でもさぁカイル。考えようによっちゃあお前の一番の弱点がお前の家にいるんだ。いいじゃないか。敵にいるよりマシだろう」

「あぁ、敵の手に記憶操作されない者がいたら困るな。ブラッドリー公爵家はその『記憶操作』が存在意義。その意義を揺るがすあの女は手元に置いておけ。人身売買の黒幕の存在もあることだしな」


 カイルは嫌そうにしぶしぶ頷いた。


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