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いつもお読みいただきありがとうございます!

 差し込む光が眩しくてカイルは目を開けた。見慣れない天井が目に入る。


「う、ん?」


 目を瞬かせる。ここはどこだ?


「あ、おはようございます! ご主人様!」


 視界いっぱいにエレノアの顔が広がった。


「は?」


 カイルは素で驚いた。


「びっくりしました! 夜中に目を覚ましたらご主人様がイスで寝てるんですから!」

「あ、あぁ」


 そこまではカイルも覚えている。しかし、なぜベッドでしっかり寝ているんだ?


「イスで寝たら体痛くなっちゃいます。しっかり寝ないとだめですから! 私が運びました! こう見えて力持ちなんですよ!」

「いや、そもそも男をベッドに引っ張り込むな」


 というかこいつ、あんなにうなされて泣いていたのに今はへらへらしやがって。昨夜のことは幻か?


 カイルはベッドから身を起こす。

 エレノアはカイルのツッコミを完全にスルーして鼻歌を歌いながら鏡の前で髪を梳かしている。


「自分で身支度をやっているのか」


 人にやってもらうのが当たり前の生活をしているカイルにはそれが新鮮に映った。


「そりゃそうですよ~。やりますって言われても慣れないです。だって私もともとお嬢様じゃないんですから!」

「それもそうか」

「うげっ! わ、なんか絡まりましたぁ!」


 早速うるさい。というかこいつ、朝から元気だな。


「うわぁ、取ってください~。髪の毛ごっそり抜けちゃう」

「はぁ、分かったからそのまま。ちょっと待ってろ。おい、無理矢理引っ張るなよ!」


 これ以上騒がれたら堪らない。ベッドから抜け出て、櫛を持ったまま騒ぐエレノアに近付く。

 絡まった髪を丁寧に取って引っ掛かっていた櫛を取る。


「ほら、できたぞ」

「良かったー。髪の毛抜けちゃうところでした。ありがとうございます!」

「また絡まったら取るのが面倒だからついでに俺がやる」

「え、もう終わりました」

「あんなに髪が絡まってるのにか」


 カイルは久しぶりに体が軽く、よく眠れたと感じた。いつも夜中に何度も目を覚ますのに。なぜ昨夜はあんなに眠れたのだろう。

 エレノアから取り上げた櫛を髪の毛に当てようとして、カイルは思わず動きを止めた。


「おい」

「はい?」

「お前、髪の毛染めてるのか」

「あ!」

「あ、じゃないだろ」

「お母さん亡くなってから……染めるの忘れてました……」


 瞬く間にシュンと項垂れるエレノア。カイルはエレノアの髪の根元を再度よく確認する。明るい髪色がちょこんとのぞいていた。


「もとの髪の色は?」

「ピンクブロンドなんです。お母さんが目立つし誘拐されたらいけないから染めなさいって。だからよくある紺色に染めてました」


 カイルは思わず天を仰ぎたくなった。


「でも髪染めてても誘拐されましたし、別に髪色は関係なかったんですかね……。お母さんに厳しく言われていたから頑張って染めてたんですけど……」

「そ、そうか」


 カイルは呆然としながら相槌を何とか打つ。


「母親は他に何か言ってたか? その、髪について」

「え、うーん。ピンクは珍しいから誘拐されないようにって。小さい頃は帽子をいつも被ってた気がします」

「確かに珍しいな。その髪色は父親からの遺伝か?」

「む、あんなのは父親じゃありませんから。そもそも会ったこともないし、どこの誰かも知りません。生きてないかもしれないですし」

「そうか、悪かった」

「はい。お母さんを傷つけた奴ですから顔も名前も知らないけど嫌いです」

「そうか」


 カイルはぼんやりしたまま、櫛を置く。


「どうしたんですか? ご主人様」

「いや……腹が減ったな」

「はい。お腹すきました! 今日の朝ごはんは何ですかね? あ、ご飯の後で料理人さんにお礼を言いに行ってもいいですか? 公爵家のご飯、すっごい美味しいので!」

「あぁ、門から外に出る以外は好きにしていい」

「やったー!」


 カイルは返事をしながら、まず殿下に報告しなければと考えていた。


あ、朝チュン(違う)

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