フラグでも見えてるんだろうか
知り合いが作ったフリーゲームの世界とほぼ同じだと思える世界ではあるけれど。
それでも私の知らない事はたくさんある。
転生したのがフリゲ制作者である彼女であったならばこことゲームとの差異を理解できたかもしれない。けれども私にはそれがわからない。何故ってこの世界を舞台にしただろうゲームは途中までしかプレイしていなかったからだ。
だからこそゲーム内で出ていなかった情報があったとして、それがこの世界特有のものかどうか、を判断できなかった。設定とかであった可能性もあるからね。
こう……本編に特に出てくる事はなかったけどこの世界にはこういう感じの話が設定としてありましたよ~、みたいなやつとか。他のフリーゲームとかでもクリア後のオマケとかでそういうの出してくれるやつとかあったけど、私が途中までプレイしていたゲームがクリア後にそういう設定をオマケで見せてくれたかはわからない。
ゲームを一通りプレイした後で、知り合いにあれこれ聞けばもしかしたら教えてくれたかもしれないけれども。
なんでこんな事を今更のようにかみしめてるかと言えば、とうとう本格的な冬が到来してしまったからだ。
とはいえこの辺りは毎年そこまで雪が降る事もないし、降っても積もるまではいかない。
けれど、この世界の創造主は冬に生まれたとされている……らしい。
世界創世の話というのは時に仰々しく、時に幼い子にもわかるようなお伽噺めいたものとして語られる。
私も前世の記憶を思い出す前、両親が生きていた頃に寝物語として語られていた事があった。
雪は神の足跡で、だからこそ冬は神が降臨する季節なのだと。
神は人を作り出したけれど、人と神は決別し、それ故に冬は厳しい季節になったのだとか。
雪深い土地はだからこそ、神に愛された土地なのだと。
何かそんな感じの内容を幼い頃に語られた気がする。
……これゲームの設定にあったやつかなぁ……? ってちょっとそこハッキリしてほしい気がするんだよね。
いや、だからなんだって話でもないんだけど。
ただ、なんていうか陰謀めいたものを感じない事もない。
そりゃあね? 空から降ってくる雪ってなんかこう……場所によっては神秘的な感じするよ?
晴れた空から羽のような軽さでもってふわふわ漂うように落ちてくる雪とか。
はたまた晴れた日に見えるダイヤモンドダストだとか。肺が凍り付きそうな寒さの中で見るそれに大自然の神秘とかそういうのを感じない事もないわけで。
雨は一年中降るけれど、雪は冬だけだしね。
そりゃあ、一年中雪に覆われてそうな寒い土地ならともかく、この世界の大半はそういう土地ではないわけで。
でも逆に考えると、なんていうか人が暮らすには厳しい土地を神が愛した土地だからこそ、みたいにコーティングしてるような気がするんだよね。私がとても穿った見方をしているだけかもしれない。
まぁともあれ。
春に花祭り、夏に星祭り、秋に収穫祭、ときて冬にもお祭りがあるのか、となればそういう意味で存在している。
雪が降り、今年も神が降臨なされた、みたいな感じで祝うお祭り――降臨祭である。
名前だけならとんでもなく厳かな感じがするけれど。
やる事は特にこれといってない。精々家で家族とチキンとケーキ食べて過ごす……いや、クリスマスやないかーい。
いやね? クリスマスは家族とじゃなくて恋人と過ごしまーす♪ って人も前世ではいたと思うけど、家族じゃなくても友人だとかと集まってケーキ食べるとか、チキン食べるとかだったよなぁ、と。
クリスマスは国によっては七面鳥だったりするけど日本は大体鶏肉だったっけ。まぁ馴染みないもんね七面鳥とか……そもそも売ってるお店も限られてたっけ。少なくとも前世の私の近所のスーパーでは扱ってなかった七面鳥。
そういや一度だけ遠くにできたっていう海外雑貨とかも扱ってるスーパーに行った事あったけど、そこではダチョウの卵なら売ってたな。……えっ、あれどうやって食べんの? ゆで卵? それとも卵焼き? どっちにしても鶏卵とは比べ物にならない大きさだったから普通に調理しようにも大変なのでは……?
ちなみにこっちの世界、というか少なくともウルガモットではチキンに関して特にこれという明言はされていない。チキンであればなんでもいいらしい。
チキンなのはなんでかな? と思えばそれについてはかつて鳥は神の使いだったとかどうとか。
神の使い食べんの? って思うけど、どうやら神話というかお伽噺では冬の寒さとロクな食料がなかった人に神が使いであった鳥を分け与えた事からくるらしい。
それ以来降臨祭では神へ感謝しつつチキンを食べる事になったのだとか。
なので降臨祭の時のチキン料理は各御家庭、張り切って腕をふるうのだとか。
神から与えられた貴重な食料を無駄にしないで美味しくいただきましょうね、という意味合いなのは理解できる。
「へー、そんなお祭りというか催しが……」
「マジかよエルテ。お前さんマジで降臨祭まで知らなかったって事か……!?」
事の発端はギルドにいつものように手伝いに行った時にギルド長から、そろそろ降臨祭だな、なんて言われたからだ。降臨祭イズ何? と質問すればギルド長の表情が固まったのは言うまでもない。
いや、降臨祭に至る神様の話とかはね、何か遥か彼方昔に聞いた覚えはあったの。寝物語で両親、主に母親から。でも正直両親が生きてた頃に降臨祭やったか、って言われるとそこまでハッキリ覚えてないし、何かご馳走出た日があったから多分それだと思うんだけど……といった程度。
おばあさんと一緒に村で過ごしてた時にも思えば冬になると一度だけご馳走が出てた日があったけど、あれがもしかしたらそうだったのかもしれない。でも私普通におばあさんの誕生日とかなのかな? って思ってたわ。お祭りって感じじゃなかったもの。
今日は特別な日だから、とかおばあさんも言ってたし、何がどう特別なのかまでは言われなかったから私が勝手に誕生日なんだな、とか認識してただけだと思う。
リタさんと暮らしてた時もそういや……とは思うんだけど、ごめん、チキンは出たと思うけどケーキは出なかったから……ケーキというよりは菓子パンっぽい感じの甘いお菓子は出た日があったけど、恐らくそれがそうだったんだろう。
ただその日はリタさんの手伝いがとんでもなく忙しい日々が終了した直後で、お疲れ様パーティーとかそんな方向で認識していたような気がする。
外に出る暇もなかったから降臨祭がどうこう、っていうご近所さんの話とかも聞く事なかったしな。
そう考えると私、お祭りのほとんどをスルーしてるな……
そりゃあギルド長が驚くというか呆れるというかしてもおかしくはない。
ちなみにケーキは何で? と聞けばお祝い事というだけでケーキである事が必須というわけではないらしい。ただチキンは確定してるのだとか。
あぁ、だからリタさんはケーキじゃなかったんだな、と今更のように納得する。
しかし降臨祭か……作るのが難しい御家庭用にチキン料理もケーキも売られてはいるらしいんだけど、人気のお店のやつは既に予約されて当日販売も難しいらしい。
そこら辺前世と似通ってるのどうなんだろう。まぁ、その料理すら食べられないような経済状況じゃないだけマシなんだろうけれども。
レーゼリナさんもなんにも言ってなかったし、下手したら私当日普通のご飯しか用意しなかったんじゃなかろうかこのままだったら。
というか下手したらちょっと前に買った保存食いくつか出してそれで終わってた可能性もあるな……
私個人としてはそれで何の問題もないけど、レーゼリナさんがそれで納得してくれるかは微妙なところだ。
あの人が基本的に食事で文句言う事はないけれど、流石に特別な日の食事には物申す可能性がある。
しかしちょっと豪華なチキン料理とか急に言われてもパッと浮かばないなぁ……買うにしても人気のお店はもう無理そうだし、そうじゃないとこで買うにしてもな……という気もしている。となるといっそ自分で作った方がマシなのでは……? と思えてくるけど、私もそこまで凝った料理は作れない。うーん、悩むな。
いっそ素直にレーゼリナさんに相談する方がいいかもしれない。何も言わずに微妙な料理を出すよりは、事前相談してある程度どうにかするつもりはありましたよ、というのを出した方がまだマシに思えてくる。いや表面取り繕っただけ、って言われるとそれまでなんだけど。
まぁ、先に文句を言われるか後から文句を言われるかの違いと言えばそれまでかもしれない。
これだ! って料理が浮かんだならともかくそうじゃなかったらまずは相談かなぁ、と思いながらギルドから帰る。
そうして帰ってからレーゼリナさんに降臨祭の料理の事を話してみれば、何でかじっと私の頭の先から足下までを見つめて数秒してから、やれやれ……と言い出しそうな表情で首を横に振った。
「降臨祭、ね……ご馳走に関しては多分必要ないよ。アタシは勝手にどうにでもするし、お前にも必要はないだろうさ」
それで話は終わったと言わんばかりだった。
えっ、あの、ちょっと?
レーゼリナさんには一体何が見えていたんです……!?




