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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
二章 攻略本とまではいかないけど攻略のヒントもない時点で人生の難易度は高め

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同居人は魔女



 大魔女ことレーゼリナさんと一緒に暮らす事になりました。

 えっ、何それどういう展開?


 正直私今でも何がなんだかよくわかってないんだけど。


 呪いの一部を解呪できるけどするか? と言われてお断りした結果、それがフラグだったのかまさかの大魔女と同居フラグが立つとか思わないじゃん?

 とはいえうちもそこまで裕福なお家じゃないので、ここで暮らすならそれなりの生活費だとかきちんと出してね、と告げれば何でか爆笑された。

 大魔女相手にっていうけど、相手がなんであれ私が養う義理はない。

 そもそも私だってリタさんに引き取られた時、生活費を支払う余裕はなかったからその分きっちり労働とかしたんだぞ。まぁ微々たるものだったかもしれないけど。でも一応できる事はしようというつもりだったし、ごくつぶしになったりはしてないと言える。


 まぁ一応部屋はあるから一人くらい同居人が増えるのは問題ない。

 レーゼリナさんが暮らすだろう部屋は必然的にリタさんが使ってた部屋になるけど。


 部屋を案内しようとしたけど、知ってるからいいよ、と言われてしまった。


 まぁ、リタさん弟子だったっていうし、独り立ちした後でも師匠が様子見に来るとかありそうっちゃありそうだし、知ってても別におかしくはないか。

 使ってない部屋とはいえ一応掃除はこまめにしてあるし、ベッドにシーツとかはつけてないけどそれもどうやらどこにあるか知ってるらしいので、もう好きにすればいいんじゃないかな、という気持ちだ。



 その後はなんやかんやヴィンセントさんが薬の材料を持ってきたのでとりあえず明日作成に取り掛かって出来次第届けるという話をして、長かった一日は終わった。


 うん。

 思い返せば随分と濃い一日だったように思えてくる。


 ディットさんと一緒に収穫祭を見て回って、色々買ったり食べたりして、花祭りや星祭りの時みたいな不審者と遭遇したりってのはなかったとはいえ、ヴィンセントさんと彼に恋しちゃったらしい巨漢との出会い。

 ホットミルクで絡み酒みたいな反応しちゃったゲヘノムさんにはリタさんの思い出話を聞かされて、その後家に戻ってきたらレーゼリナさんとの遭遇。

 いや、私がうっかりリタさんとおばあさんのお師匠ってどんな人だったんだろうなぁ、とか呟いたのが原因っぽいけど、もしそんな独り言を言わなければレーゼリナさんは出てこなかったんだろうか……?

 どうだろう。

 何か別の事でひょっこり出てきててもおかしくないな。


 そんでもってそこからの流れでレーゼリナさんが一緒に暮らす事になるとか、うん。

 収穫祭の朝では予想も何もしていなかった展開である。人生どこで何が起きるかわからないなぁ。


 ともあれ、レーゼリナさんは放置で大丈夫そうだし、ヴィンセントさんが頼んだ薬に関しては今から作るとなると徹夜確定なので明日起きてから作るのは自分の中で決定事項だし。

 よし、寝るか。


 正直色々食べ歩いたせいか、お腹は全然減ってないし、今なら何かこう、ぐっすり眠れる気がする。

 お腹いっぱいかつちょっと暖かいとすごくよく眠れそうな気がするよね。後々体重とかそこら辺気にしないといけない気もするけど。



 ――で、翌朝。

 起きて簡単に朝食を用意して、レーゼリナさんに声を掛ければ、まだ眠そうな反応をされたけどそれでも起きて用意したご飯を食べていた。


 一緒に暮らす事になったとはいえ、別段ずっと付き従って世話をしろとか言われてるわけでもないし、そもそもこっちはそういうのをお断りしているにもかかわらずレーゼリナさんが勝手に居着いたようなものだ。

 押しかけ弟子ならぬ押しかけ師匠とか一周回って新しく感じるわ。


 何か色々教えてやろうねぇ、とか言ってたけどこっちにも生活があるのでレーゼリナさんの都合で振り回されるつもりもない。

 というか、レーゼリナさんも生活があるのはわかってるようで、別にいきなりあれをやれこれをやれ、とか言うような事はなかった。

 途中ちょっと気になったから何してるのかな? って感じでリタさんの部屋を覗いてみれば、リタさんの部屋にあった本を読んでいた。恐らく本の内容はとっくに知ってるものなのか、ページを捲る速度がやたらと早い。


 とりあえず店番をしつつヴィンセントさん用の薬を調合するべくあれこれ準備してたら、いつの間にやらレーゼリナさんがそれを見ていた。

 うっわびっくりした。いつの間にいたんだろ……って思ったけどそれを聞こうとする前にお客さんがやってきたので接客するべくそっちに向き直る。そうしてお求めの薬を売った後で気付いたんだ。


「レーゼリナさん、何かの魔法使ってます?」

「おや? どうしてそう思ったんだい?」

「どうも何も……今のお客さん完全にレーゼリナさんの事認識してませんでしたよね。思いっきり真正面にいたのに」

「まぁねぇ、いきなりアタシがいるとなったら余計な騒ぎになりそうってのもあったからねぇ。魔法でアタシの事は認識できないようにしておいたのさ」

「なんていうか悪用しようと思えばできそうな感じの魔法ですね」

「そりゃあね。というか魔法なんてものは全部そんなものさね」


 なんて身も蓋もない……いやまぁ確かにそうなんだけども。

 大体身を守るための結界だって私が使えば立派に暴力の道具だしね。これに関してはあんま堂々と言えるものでもないけど。


 って事は何かいきなり同居人が増えましたよ、って事がご近所の話題になるような事はないってことでいいのかしら……?

 正直説明に困るといえば困るんだよね。


 リタさんのお師匠様でした、とか言ったとして果たして何人の人がそれを信じるか……

 リタさんが魔女って事が大っぴらに知られてるなら大魔女であるレーゼリナさんの事ももしかしたら知られてると考えていいとは思うんだけど、一般常識かどうかもわからないもんなぁ。


 レーゼリナさん見た目だけならそんな年くってるように見えないし。

 大魔女だってことを知らない人にリタさんのお師匠様です、なんて言ったとして、何かの冗談だとしか思われそうにない。勿論知ってる人からすればそれが事実だとなるんだろうけれども。



 うーん、とりあえずレーゼリナさんは魔法で自分の存在を知られないようにしている、って事は店番とか頼めそうにないって事か。まぁそれはいいんだけど。


 ただなんていうか……私が家を出てる時にレーゼリナさんだけが中にいて、物音とか出されたら泥棒でも入ったんじゃないかとか、はたまた誰もいないはずなのに物音だけがするとか、そういう方向で噂広まったりしないかな……とは思うんだよね。

 泥棒とかは最初に疑いがかかっても特に何も盗まれたりしてないってなれば、泥棒説は消えるけど物音そのものがなかったことになるわけじゃない。そうなると次に出てくるのは幽霊説かなぁ……呪われた薬屋、とかそんな噂出たら商売に響くかもしれない。


 まぁレーゼリナさんの事だからそんな噂が出るようなヘマはしないと思うけど。



 実際レーゼリナさんと一緒に暮らすようになって数日経過したけど、特に不審な噂とかが流れる事もなかった。

 って事はつまり、私が店にいる時にレーゼリナさんにうっかり話しかけたりしなければ特におかしな噂は出ないって事だな、と思う。

 客からすればいきなり大きな独り言始まるようなものになるもんね。流石にそれは避けたい。

 そんな事になったら幽霊説どころか私が精神病んでるとかいう話が今度は噂として流れそう。

 流石にそれは居た堪れない……


 なのでレーゼリナさんと私が会話するのは大体店仕舞いしてからで、店をやってる間は話をする事がほとんどなかった。

 レーゼリナさんもそこら辺わかってるのかおかしなちょっかいはかけてこなかったし、そういう意味では突然始まった同居生活は概ね上手くいっていた。


 同居人が増えたとは思えないくらいに、いつも通りに。


 朝だけ店を開いて、お昼過ぎたらギルドへ。

 収穫祭が終わってからは徐々に寒さも増してきて、冬が近づいてきてるなぁ……と思いはするけど別段何か事件があったりはしていない。

 魔物退治に出かけたギルダーさんが怪我をして戻ってきたのを治癒魔法で治したり、マトハルさんがいる時は薬草調達に行ったり。


 あまりにもいつも通りすぎて、ギルド長とかにそういや同居人が増えたんですよー、なんて世間話をする事もなかった。

 いや、まぁ、相手がレーゼリナさんという時点でそもそも周囲に話していいものかどうか、ってのもあったから話をする機会があっても話したか? ってなると首を傾げるしかないんだけれども。


 あまりにもいつも通りすぎて、だからこそレーゼリナさんの存在も何かこう、そういうもの、と認識して特に気にするでもなくなって。


 だからこそ。


「お前に魔法を教えてやろうと思うんだよねぇ」


 なんて言われた時は驚くしかなかった。

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