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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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原作剥離



 ――友人が死んだ。


 元々は知り合い経由で知り合った、そこまで近しい仲というわけでもなかった相手だけれど、それでも話は合ったし一緒にいてそこそこ気が楽で、ついでに向こうはフリーゲームをかなりの数遊んでいて、だからこそ、だったのかもしれない。

 自分もフリーゲームを作成している事があったけど、デバッグ作業とかは一人じゃ中々進まない。というか、自分は既に話の流れを理解しているので、予想外のプレイをする事がないのでそういった事をした場合に出るかもしれないバグを見つけるとなると中々に大変だったのだ。


 彼女はそれじゃテストプレイとかよければ手伝うよ、と言ってくれたので、遠慮なく手伝ってもらう事にした。



 最初はちょっとした悪戯だった。

 いたって普通の話だったけど、途中で進行不可能なバグが出てしまったゲーム。そのバグを取り除くよりはもういっそ新しく話を作り直した方がマシ、くらいになってしまって。

 だからこそ、ちょっと話のテイストを変更してみた。

 結果としてそのバグも消えたし、他に大きなバグもない。前の話と若干変わってしまったのは少し残念だったけれど、これはこれで有りだよなぁ、なんて思って再度テストプレイをお願いした。


 思った以上に驚いてくれた友人に、恐らく私は味を占めた。


 ほのぼの系ストーリーから一転させてホラーテイストにしてみたりする事がなんだか楽しくなってしまった。

 ゲーム制作する側としては、ある意味時間の無駄というか、途中からがらりとシナリオを変更するわけだから最初からその方向で話を作った方が勿論手間は少ないんだけど、友人のリアクションが面白くてついついやらかしてしまっていた。


 今までよりもゲームを作って完成させるまでの時間がかかるようになったけれど、後悔も反省もしていなかった。


 そうして新しく作ったのは、学校を卒業するために頑張る女の子が色んな事件に巻き込まれるドタバタ系RPG。とはいえこれも途中からシリアス要素を足して話のテイストを変えるつもりだった。


 そのテストプレイの途中、舞台となる街ウルガモット近隣の盗賊たちを束ねていた親分を倒したあたりで、一度進行できなくなるバグを意図的に仕込んでおいた。我ながらなんて無駄な事をしてるんだろうと思ったけれど、ここから話の流れを変えるつもりだったのでここまでプレイしてもらってそこで止まってもらう必要があった。


 いかんせんフリーゲームを作ったといっても、そういうのが集まる投稿サイトに出すには気恥ずかしく個人サイトにそっと置いておくだけだったので感想に飢えていたというのもある。

 けど大勢の目に触れてボロクソに叩かれるのも怖い。生憎そこまで強靭なメンタルは持ち合わせていないので、もしそんな感想がきたらと思うと個人の趣味でやってるものだし、まぁひっそりでいいじゃないかと思ってしまったわけだ。

 友人の反応はここはどうかと思うよ、という悪い点であってもこちらを気遣ってコメントしてくれるのでまだいいけれど、それ以外は下手すると自分のメンタルが危うい。


 個人の趣味で、ついでにもう友人のために作り始めたと言ってもいいゲームだったが、その友人が死んだ事で私はそのゲームの製作を一度止めてしまった。


 死因としては本人も気付いてなかったらしい持病があったらしく、寝ている間に……という話だった。


 こんなあっけなくお別れになるだなんて思ってなかった。

 こうなるってわかってたなら、途中でわざわざあのゲームに変な仕込みしないで最後までプレイできるようにしておけばよかった。

 途中で話のテイスト変えると大体不穏な話になりがちだから、最初から最後までほのぼのしたのないの? って言われた事も勿論あるけど、友人の反応が面白くて結局そういうのは作ってなかった。



 友人が亡くなって、彼女がいない事が当たり前になる程度に過ぎた時間で私は考えた。


 そうだ、追悼の意を込めて彼女のためにゲームを作ろう。


 どうせ作った所でプレイしてくれるはずがないのはわかっている。だってもういないのだから。

 これは自分のためのけじめのようなものだ。私が先へ進むためのもの。


 そう思って、途中で放置状態だったゲームの続きを作ろうとしたのだけれど、全くと言っていいほど制作は進まなかった。所謂スランプ。


 同じ場所で延々足踏みをしているような状況に余計焦って、結果として私はあきらめた。

 諦めて一からゲームを作ろうと思い直した。


 そうだ、彼女をモデルにしたゲームにしよう。

 ほのぼの……乙女ゲームっぽい感じでいいだろうか。

 舞台は途中で制作が止まってしまったゲームと同じ舞台でいいか。


 両親を殺されてしまったヒロインが、魔女と出会って成長して、復讐を望まなかった両親がかけた呪いを打ち破って盗賊殺しへと成長するストーリー。

 これだけだと殺伐とした感じだけど、仲間になる男性キャラと途中でいい感じに仲を発展させて最終的に共に復讐を果たしてくれた相手と一蓮托生な人生を送るとか、はたまた途中で復讐を止めて相手と共に暮らすとかの分岐をつければいい感じになるのではないだろうか。


 なんだかほのぼの系統のゲームは久しく作ってない、というか大体途中で進路変更してるから最後までほのぼのしてるのがないというか、まぁともかくすっかり不穏な話とか作る方向性で慣れきってしまったから、こういう感じで複数のエンディングにしてほのぼのした終わり方とか、リハビリ感覚で作ってみればいいだろう。


 途中で大魔女に呪いを解かれて殺伐とした方向に話は進むけど、その先は乙女ゲームでいうところの攻略対象との仲次第でエンディング分岐するようにして……

 仲間の数正直少ないかな? と思わなくもないんだけど、まぁ、フリーゲームの乙女ゲームとか攻略対象一人とかってのもザラだし、これ以上増やすと正直私の手には負えないし、まぁいいか。

 後から追加でキャラを増やそうと思えるようになったら、その時は追加パッチとか作ればいいしね。


 ……なんて感じでせっせと作っていたら、気付けばゲームは完成していた。


 テストプレイとして自分で改めて最初からスタートしてみる。


 攻略対象とかがいるゲームなので、周回プレイが基本になるからと思ってストーリーはサクサクいくようにしてあったためか、我ながら良い感じのプレイ時間でクリアする事ができた。

 途中ちょっとバグっぽいものもあったけど、このくらいならすぐに修正できる。


 好感度とかそこら辺でもおかしなバグはなかったし……うん、うん。

 出来は中々に良いのでは?

 我ながら自画自賛して、少し悩んだ末に私はそのゲームをフリーゲーム投稿サイトへと投稿した。

 一応、いつかは自分の作ったゲームを投稿しようと思ってはいたのだ。その気がなかなかなかっただけで。

 だからこそ、そのサイトに一応ユーザー登録だけはしてあった。だからこそ呆気なく、あっさりと……とはいえ今は投稿申請しただけでまだ公開されたりはしていないけれど、問題がなければ数日以内に投稿され公開されるはずだ。


 このゲームが公開されたからといって何があるわけじゃない。ただ私なりの供養とか、そういうものだ。


 ……うーん、でももし感想とかでボロクソ言われたらそっとゲームは非公開にしておこう……私なりの供養とはいえ、いつまでも公開しておくつもりがあるわけじゃない。あまりにも何かこう、ボロクソ叩かれるようならそっと撤去するつもりだ。そうじゃないなら公開したままになるとは思うけど……



 正直、死後の世界だとか来世だとか、そういったものを信じたりはしていないけれど、それでも。


「彼女の来世が幸せなものでありますように」


 そんな風に願うのは、無駄じゃないと思いたい。


 もし、私がいつか寿命だとか病気だとか事故だとかで死んだとして。

 あの世というのがあるなら、彼女はそこで待っていてくれるだろうか。

 もしいたとして、だとしたらきっと。


「ちゃんとほのぼのしたゲーム作れるんなら最初から作ってよ!」

 なんて文句を言われるかもしれない。


 そんな、あるかどうかもわからない事を想像して、思わず笑みがこぼれ落ちた。

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