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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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魔女



 何をどう言い繕ったところで、結局はおばあさん経由なのでコネとか伝手とかそういう話になる。

 とはいえ、ゲヘノムさんにそう言った所で素直に納得はしないだろう。実際その表情はどこか納得がいっていない様子だ。


「まず、行くアテのなかったボクは倒れているおばあさんを発見しました」

「お、おう」

 いきなり何か始まったな、みたいな顔をしているが、何の話だとか言って打ち切ろうという感じはしない。一応聞くだけ聞いてやるか……といった雰囲気はある。


「ボクは結界と治癒魔法くらいしか使えないんですけれど、その治癒魔法で倒れていたおばあさんを治したわけです。時間がそこそこ遅くて、行くアテがないならうちにくるかい? というおばあさんの申し出を有難く受け入れました」

「ま、旅の途中でそう言われたら俺も場合によるけど受け入れるなぁ……」

「そこでまぁ、ちょっとした身の上を話したところ、おばあさんはそれならうちの子になりなさいな、という感じで住まわせてくれまして」

「……リタがそんな事いうかあ?」

「おばあさんはリタさんではないです。で、まぁ、おばあさんとの生活は大体五年ほどだったんですが、亡くなってしまいまして。

 薄々お迎えが近づいてるな、と勘づいてたおばあさんは、自分が死んだ後一人残されるボクの事を案じたのか、この人のところへお行きなさい、と残していました。そしてやってきたのがここウルガモット。

 おばあさんの知り合いを訪ね、そこで出会ったのがリタさんです」


「……そういう風に聞くと確かにコネなんだが……」

「おばあさんというのはローズマリーの事ですよ」

「あいつか!?」

 こそっとディットさんが耳打ちした言葉を聞いて、ゲヘノムさんはようやく合点がいった、とばかりに膝を打った。


「坊主……お前変な所で運がいいな……?」

「まぁその前に親が殺されてるので、運がいい、っていうかプラマイゼロっていうか」

「そうか……じゃあ一概に運がいいとは言えないのか……」


 一歩間違ってたら私野垂れ死にしてたもんね、あの時。


 というかだ。


「ディットさんはおばあさんの事を知ってたんですか?」

「あー、というか、リタの知り合いで気軽に頼みごとができる相手、となれば彼女くらいしかいないんだよ。結構有名なんだ、あの二人」

「そうだな。ローズマリーもまた凄腕の薬師として有名ではあるな」


 へぇ、なんて相槌を打てばゲヘノムさんは呆れたように片眉を跳ね上げた。


「坊主、お前なぁ……あの二人マジで凄い人なんだからな。それをそんなあっさり……」

「いや、確かに薬に関して凄いなとは思ってますけれども」


 実際色々教えてもらった時に、それはもう充分実感してる。


「実際魔女としても有名でしたからね」

「へぇ……魔女!?」


 当たり前のように頷くディットさんに、またもやへぇそうなんだ、みたいに相槌を打とうとして何だか聞き流しちゃいけない単語でてきたな!? となる。


「実はエルテがギルドの手伝いをする前に、少し調べさせていただきました」

「はぁ」


 いきなり何を言い出すんだろう、と思ったけど、よくよく考えてみたらディットさんはギルダーであるけれど貴族でもある。貴族って何かこう、色々面倒な人物とか近づいてきそうなこともあるだろうし、そうなってから対処するにしても後手でしかない。何か面倒な事になりそうなら事前に手を打つくらいはするよね。

 ましてや、新たに入ったメンバーが厄介ごとをどんどこ持ってくるような奴だったら、ギルド長に忠告というか警告というか……まぁ、多少なりとも何かを言うくらいはしていただろう。


 だから別に調べた、という部分に関しては特に何とも思わない。


 その調べた、も恐らくそこまで詳細ではなさそうだし。

 だってさぁ……私の事を男だと思ってる時点で、って話だよね。


「興味本位で聞きますけど、調べたってどこからどこまでですか?」

「調べた、って言って不快さを示されるのはともかく興味持たれるとは思いませんでしたね……

 調べたといってもウルガモットに来る以前の――ローズマリーと村で過ごしてたあたりまでですね」

「ふぅん」


 それなのに女とバレてない不思議よ。

 いやまぁ、村にいた時も今とそこまで変わらない暮らしだったってのもあるけど。

 汚れが目立つような色合いの服は避けてたし、オシャレとか程遠い生活してたし、薬草に関するあれこれとか教わったり雑用したりしてたからどっちかといえば動きやすい服を選ぶとそりゃまぁ、男の子っぽい感じになってたかもしれないけれども。


 リタさんは一応私の性別を理解してたけど、でも村にいた時とそこまで生活を変えたわけじゃない。見た目は大きく変化するでもなく、だからこそ今現在の私はご近所さんから男の子扱いされてるわけだ。

 洗濯物とかもね、別にお外に干すような事なかったからね。いや、流石に下着とか外に干す勇気はない。そもそもそういう場所がないので基本お部屋の中で干すしかないので、まぁ、家に侵入した空き巣とかなら気付いたかもしれないけどそういうのもいなかったしなぁ。


 確かに魔法に関しても多少は教わったけれど、それはもう私が結界と治癒魔法くらいしか使えなかった事で割と早めに諦められてしまった感があるというか。

 水を出すくらいはどうにか。風もそよ風程度。明かりにする程度の光もどうにかなるとは思うけど、火に関するのは一切駄目。土属性魔法は……どうだろ。あんま試した事ないけど、人に危害を加えられそうにない程度のものならできるんじゃないかな。

 工夫を凝らせば人を傷つける事は可能かもしれないけれど、魔法として発動させてすぐさま人に危害を加えられるか、となれば無理としか言いようのない程度のものしか使えない。

 それもあっておばあさんもリタさんも早々に諦めた感がある。


 リタさんに至ってはあんたはもう結界と治癒魔法だけを極めな。とか言ってそれ以外の手段は道具でどうにかするんだよ、とか言ってたもんなぁ。まぁでも確かにその方が手っ取り早いのは確か。

 だからって攻撃手段として火精霊イフリートの息吹とか火蜥蜴サラマンダーの息吹とかいうアイテムの作り方教えちゃうのもどうかと思うけど。

 正当防衛通り越して過剰防衛なんよあれ。


 けれどもリタさんのあの物騒さが魔女だったから、と言われてしまえば納得できない事もない。おばあさんの方は魔女って言われても正直「え?」って感じだけど。いやでも、思い返せばそれっぽいのはあったような気がするな……私に対して向けられたわけじゃないけど、村で酔っ払って暴れてた人たちに向けた視線の鋭さとか、啖呵の切り方とか……単にそう、だてに長く生きてるわけじゃないからとかそういう風に思ってたけれども。


 魔女についてふわっと程度にしか知らないけど、ディットさんの話からして多分私の認識はそこまで間違ってないし、恐らく世間一般でもその程度しか知られてないっぽい、というのはわかった。


「あの二人は師を同じくしていたライバルみたいなものだったからなぁ。とはいえ、大魔女へは至れなかったようだが。でもまぁ、凄い事だよ魔女ってだけでも」

 ゲヘノムさんがくっ、と涙を拭うような動きをしたが、別に泣いてないし涙だって一滴も出ていない。ついでにくっとカップの中に残っていたやや冷めかけたホットミルクを一気に呷った。

 なんだろう、お酒だったらなんとも思わないリアクションなのに、中身がホットミルクってわかってると途端似合わないな……なんて思ってしまう。


「だからまぁ、坊主がリタの弟子みたいなものだって言われた時はこれでも内心驚きはしたんだ」

「あー、でもまぁボクは魔女っていうかそういうのは無理でしょうねぇ……そういう方面でのあれこれは教わってないですし。魔法に関してはホント基礎中の基礎程度です。使えるのは結界と治癒魔法だけで、リタさんには早々に匙を投げられましたよ」

「ま、薬の腕前だけでも認められてるんなら大したもんだよお前さんは」

 俺なんか弟子入りすら断られたもんなぁ……とテーブルに突っ伏して言われるも、これに関してはどういう反応をすればいいのかわからなかったので、とりあえず流す事にした。


 これでゲヘノムさんがお酒飲んでたら、危うく絡み酒に発展していたかもしれない。いや、素面なはずなのに何かもう既に絡み酒入りつつあるような気もしてるけれども。


 けど、こうやって話を聞いてると本当におばあさんもリタさんもなんだかすごい人だったんだなぁ、という感想しか出てこない。魔女、というのは種族的な意味ではなくてどちらかといえば称号的なものに近い。あれだ、勇者とか賢者とかそういう呼び名的なやつ。

 この世界に魔王がいたっていう話は少なくとも私は聞いた事ないけど、例えば魔王を倒したのが勇者と呼ばれるように、魔法関連で何らかの功績を残しただとかするとそれに関する称号を与えられるのだとか。

 国を救った人物が英雄と呼ばれる、とかそういう感じで。


 とはいえ、称号だけだと思っていると魔女に関しては痛い目を見るので気を付けるんだよ、とリタさんは言っていた。魔女と呼ばれるやつは大体厄介なのが多いからねぇ……と生前言っていたのを思い出す。

 でもそれ、つまりは自分の事も含まれてしまうのでは。と今更のように思う。まぁ、確かにリタさんはただ善良なだけの人ではなかったように思うけれども。


「まぁなんだ。坊主。お前、リタの名を……いや、ローズマリーもか、ともかくあの二人の名を落とすような事はするんじゃねぇぞ。ま、お前さんの店の評判は軽く聞こえてきたしそういう意味では問題ないと思うけどな」

 びしっと指を突き付けて言われたけれど、やっぱりこれゲヘノムさん酔っ払ってませんかね?

 周囲のお酒の匂いだけで酔っ払ったりしたとかいうオチなんだろうか。


 ともあれ、ゲヘノムさんは言いたい事を言い切ったのか、そのまま席を立って立ち去っていった。料金に関しては前払いなので用が済んだら勝手に移動するのは何も問題ない。

「そういやゲヘノムさん、マッシュルームベア討伐の時にアニーティカと連絡とる時はよく見かけてたけど、今はどこで何してるんだろう?」

 あの時は確か休憩とか仮眠とかでギルドの休憩室を使ってたのを二度程見たけど、マッシュルームベア討伐が終わってからはゲヘノムさんの姿はとんと見ていなかった。

 てっきりもう他の場所へ移動したのだろうかと思ってたけどこうして収穫祭にいるという事はウルガモットに滞在しているというわけで。


「前にうちの近所の家から出てくるの見たので、恐らく知り合いの家に厄介になってるとかでしょう。無駄に顔広いみたいですし」

 ディットさんに言われて、ふーん、と納得しかけたがディットさんの家の近所ってどう考えても貴族ですよね。そう言われると確かに顔が広いな……!?


 何だかんだゲヘノムさんに絡まれているうちに、結構な時間が経過している。

 流石にそろそろ帰るべきだろう。

 昼間の間に並んでいた屋台のほとんどもすっかり店仕舞いしてるみたいだし、今現在やってるお店はほとんどがお酒関連だ。酒のつまみみたいなのを扱ってるところもあるけど……今日は間違いなく食べ過ぎたと自覚できてるのでこれ以上はやめとく。


 そろそろ帰りましょうか、とディットさんに言えば送りますよ、と言われる。

 遠慮しようにも、位置的に私の家経由でディットさんは家に帰った方が酔っ払いに絡まれる確率も減るような気がしたので、素直に頷いた。

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