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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
序章 難易度選択にイージーがない時点で人生はクソ
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パーソナルスペースは気持ち多めにとっておく



 ところで私、周囲から男だと思われてる。


 また唐突だなと思わなくもないんだけど、原因がわからないわけでもない。

 普段の私、オシャレとかしない。

 そういや私の外見的な特徴とか今まで一切言ってなかった気もするけど、それは特筆するほどのものでもなかったからとも言える。

 いやだって、外見とかよりもまず転生した事実に気付いた時点で両親死んでるし他にも色々ありすぎたし、外見とか些細な問題じゃない?


 ともあれ、私の見た目は黒い髪に金色の目、という二次元キャラなら割とよくある系統の色合いだった。

 金色っていっても常にビカビカ輝いてるわけでもないし、遠目で見ればイエロー系にしか見えないはず。


 多少、髪は伸ばしてるけどそれだって根本で一つに結ぶだけのとても無造作な髪型だし、服装も基本的にほとんど肌を出さないので、パッと見ただけで女の子、には見えないだろうなとも思う。


 いや、オシャレに興味がないわけじゃないんだけども考えてもみてほしい。

 この世界、物騒。

 下手に可愛くしててもなんか、ガラの悪い男に絡まれそう。

 それでなくとも街の外は魔物が出るし、盗賊とかの犯罪者集団もいる。

 そこに、可愛らしい姿の少女がいたらどう思うでしょう。


 魔物は別に外見にとやかく言わないだろうけど、盗賊とかは高く売れそうだぜヒャッハー、ってなるし何ならありがちな話として売る前にお試しで、とかいうエロ同人にありがちな展開にだってなりかねない。


 あと、外に薬草採取に行くにしてもだ、薬草生えてる所に行くのに下手に露出のある服装で行くとお思いか?

 ヘタしたら草で切る事もあるし、虫がいるから最悪刺されるし、ダニとかいたらどうすんだ。


 なんとなく汚れてもあまり目立たない、というか洗ってもいつまでも色が残るかもしれない……という不安を少なくするべく基本的に黒系統の服を着てるわけだけど、その服もサイズちょっと大きめなのを着てるものだから、身体のラインが出ない。

 それ故に女の子と一目でわからない。


 ついでに首にマフラー巻いてる。口元あたりを隠す感じで。


 いや、寒いからっていうか、首元も基本的に服で見えないようなの選んでるんだけど、それはそれとして首に布巻いておくとほら、何かの拍子であっても首とか鎖骨付近とか見られる心配ないじゃん?

 夏場は薄手のストールっぽい感じのにしてるけど、常に首元には布が巻かさっている。


 や、首元見えてるとさ、のどぼとけの有無で性別判断されそうだし……

 声は人と話す時気持ちワントーン落として喋ってるから、声変わりする前くらいの少年くらいに思われてるなとは元々思ってたんだ。

 ご近所のお子さんにもエルテ兄ちゃんって呼ばれるまではその事実に気付けなかったけど、訂正するのも面倒になってきてな?


 まぁ男の振りしてる方が色々と……って思っちゃったのもあって、そのままにしてるよね。

 女の子だとほら、ご近所の世話焼きおばさんとかがあれこれ言ってきそうで……男だとどっちかっていうとちゃんと食べてるかい? とか健康方面でしか世話焼かれないのもそれはそれで楽で……


 もうこのメンタルからして女の子として向いてないのでは……? という気もする。

 自分がオシャレするよりオシャレしてる女の子眺めてる方が楽しいもんな……あかん、枯れてる。


 とはいえ興味がないわけではないので、多分そのうちある日唐突に「そうだ、オシャレしよう」ってなるかもしれないのでその時にするかもしれない。


 ともあれ当面は生活をどうにかする方が重要なわけで。

 薬の調合とかも何だかんだ服が汚れたりするものだから、白い服とか絶対着れない。染みがね……多分中々落ちない……黒い服だとそこまで目立たないからまだいいけど。


 薬屋をする、のはいいけど、客が来るかどうかは微妙なとこだし営業活動とかした方がいいのだろうか……いやでもな……営業って何をどうすればいいのかよくわからんのよね。

 前世もそういう職業じゃなかったからな……


 もし、そう、もしもの話だけど。

 この世界がRPG系ジャンルのままだったとして、更にはアトリエ系と似たり寄ったりな感じであるとしよう。そしたらギルドとか行ったら依頼とかにお薬が欲しいです! みたいな依頼とか出てたりしないだろうか。

 魔物退治の依頼とか護衛の依頼とかがよく出されるっていう話は聞いてるけど、そういう例えば物品納品とかの依頼がないわけじゃないかもしれない。


 もしそういうのがあるのなら、お店に人が来なくてもそういう依頼を細々とこなしていって少しずつでも人脈広げるのもありかもしれない……とは思う。


 ……よし、ダメ元でちょっくらギルドに行ってみるか!


 そう思い立ったので善は急げとばかりに私はウルガモットギルドへと足を運ぶ事にしたのだが。



「誰かー! そいつ捕まえてひったくりよー!!」

 そんな声が聞こえてきて、思わず足を止めたのは狭い路地裏から出て大通りに出た直後の事だった。


 普段自警団とか見回りしてるし、何ならギルドの人間も常にギルドにいるわけじゃないだろうからその辺にいるだろう事を考えてもなおやらかす奴ってのはいるんだなぁ、なんて思いながら声がした方へ視線を向けてみれば、鞄を小脇に抱えたまま走ってくる男が一人。


 おっとこれ私がどうにかしないといけない流れか? と思って周囲を見回すも近くに他にどうにかできそうな人材がいない。

 あ、これ私がどうにかしないとなんですね、と思っても、流石に体格差もあって相手を拳一つで沈めるのは無理そうだし、精々足を引っかけるくらいか……? とタイミングを見計らおうとしたものの、鞄を抱えていない方の手で何と男はナイフを抜いたではないか。


 危険度が途端に増した!!


「どうしてそう事態を悪い方へと進めるのか……」

 刺さると痛いので結界を張ったものの、男から私はどう見えたのだろうか。

 恐怖で足が竦んで動けないとかそういうやつだろうか。


「邪魔だ、どけっ!」

 なんて言いながらナイフ振り回しつつ突進かけてきたんだけど、いや、邪魔っていうか、通りはまだスペースあるんだからわざわざこっちこないで避けて行けばいいだけでは?

 追手が来る可能性もあるから無駄に遠回りになりそうな事はほんのちょっとの距離でもしたくないっていう心理もあるんだろうけれどもさぁ。


 ナイフがこちらに向けて振り下ろされる。このままいけば結界に弾かれて、次に男は結界にぶつかって転倒する――はずだった。


「いてぇ!!」


 どこからともなく投げつけられた石が男のナイフを持つ手に命中したらしく、ナイフはこちらに下ろされるより前に弾き飛ばされ、男は悶絶するも鞄だけは手放すまいとしてそのままこちらに突進かけてくる。強引に私を突き飛ばすなりして余計な手出しをする奴を減らしておこうという算段なんだろうなとは思うんだけど。


「ぶべっ!?」


 ナイフ落とした時点でそこで足止めて悶絶してればよかったのに、わざわざ突進かけてくるものだからまぁ、結界にぶつかるよね。それも結構な勢いで。

 多分どっかの建物の壁とかにすり抜ける事なんてできないくせにすり抜けようとして突っ込んだくらいの威力はあったんじゃないだろうか。とりあえずぶつかった直後なんかすごく痛そうな音がした。顔面から突っ込んだのもあってとっても痛そう。鼻血出てる。


 頭から突っ込む形に近かったので、脳にもそれなりにダメージいったんじゃないかな。

 目に見えない壁にぶつかって、そのまま倒れる形になった。


「なんだ、危ないぞって声かけようとも思ったけど必要なかったみたいだな」

 そう言って姿を現したのは、片手で石をぽんぽん軽く放り投げてはそれを受け取りまた投げる、という片手お手玉みたいな事をしている男だった。


 ……何か見覚えのある外見の人出てきた!


 さっきナイフを弾いたのはこの人が投げた石であってるんだろうけれど、そういうのどうでもよくてむしろ見覚えがあるっていう方が重要。


 私の記憶に間違いがなければ彼はカイル。

 主人公の仲間になるキャラの一人だ。


 一応、一応こうして助けてもらったって事は彼は少なくともこの世界で犯罪者側とかそういうわけでもないらしい。

 いやうん、ほら、彼女の作ったゲーム最初は仲間だったはずなのにバージョンアップして話にあれこれ追加されると途中で敵対して離脱とかいうシナリオも普通にあったものだから……味方のふりして実は……っていう可能性もあるからいかんせんまだここで素直にわーいたすかったー! ってなれないんだよね……

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