望み薄な期待
知り合いの作ったフリゲはそれなりに数がある。
その全部をプレイしたわけじゃないけれど、それでも八割くらいはプレイしたと言えると思う。
最初はほのぼのしてたのにバージョンアップを重ねるごとに不穏さが増して最終的にほんわか友情ゲーがサイコパスホラーになってるとかよくある話だった。いやなんで? と何度も突っ込んだけど、結局そこら辺の答は解明できていない。多分あれはもう彼女の業だと思う事にした。
ともあれ、そうやって話を変えていくうちに、何かこの主人公だと話の内容的にしっくりこないなぁ、なんていうのも当然存在するわけだ。
そりゃそうだろう。
最初の世界観と違い過ぎて浮くのなんてザラだ。
パステルカラーが似合いそうな乙女ゲーム系ヒロインちゃんが血みどろサスペンス劇場系ワールドに行ったらそりゃあ浮く。ヒロインから被害者にクラスチェンジとかならまだしも、そこで戦闘バリバリこなせるクールかっこいい系お姉さんに、となると見た目と中身が一致しなくてプレイヤー側からすればそのギャップがいいとなるか、はたまた何か違和感あって脳がバグる、となるかのどっちかだ。
それでもどうにか作品を完成させることができればまだいい。
けれど、どうしたってこのキャラでこのまま話を進めるには難しい……! といったものも勿論あるらしく、いくつかの作品は途中で断念してしまったなんて事もあった。
完全凍結というよりは、一時的な凍結でネタができたらどうにか続きを作ってみるつもりではあったようだけど、いくつかの作品は結局凍結されたまま数年が経過していたはずだ。
勿論ゲームになってはいるので、そこそこ途中まではちゃんとしている。ただ、終わり方がどう考えても次回に続く……!! 的なやつだった。続編ありきで作るのはいいけど、肝心のその続編が出ないままなんだよな~~~~!!
最初のほのぼの系ルートで突き進めばいいものを、何でか途中から方向転換するからそうなるのでは? と何度か突っ込んだけど、多分あれはもう彼女の癖というかそういうやつなんだろう。多分最初は本当にほのぼのしたお話を作るつもりだったんだろうな、って思えたのもあったけど、推しには目一杯大変な目に遭ってほしい、とかいう思いもあるのもあって、途中からとんでもサスペンスだとかデスゲームだとかが始まるんだと思う。
ちょっと試練の幅がぶれすぎだと思う。
そんなわけで、もしかして彼女、あのゲーム、ミラを主人公にして話を進めたまでは良かったけれど、途中で先の展開に困って悩みに悩んだ末に世界観はそのままに別のキャラを主人公にした方が良いのでは? という方向転換をした可能性が出てきた。
同一の世界観だと登場人物のいくつかは同じところから引っ張ってこれるからね。
これが近未来系SFの登場人物を完全ファンタジー系作品に移動させるとなると設定をいくつか変更したりする必要が出てくるかもしれないけれど、同じ世界観なら一部の設定を変えたりする必要もほとんどないからね。
なんだかんだあったけど、ミラたちはどうにか学校を卒業する事ができました。
という終わりの後の話を新たに作成してたりして。
なんて思ったわけだ。
だってなんていうか、それくらいここ最近の出来事が何かそういう感じがするなっていう気がね、どうしてもね、しちゃうもので……
ただ、もしそうだったとしたら、じゃあ新しい主人公は誰なんだろうって考えるとさ……
もしかして、自分。
というイヤな想像がよぎるわけで。
ここでそれを完全に笑い飛ばせないのがとてもイヤ。
だって考えてもみてほしい。
私が前世の記憶を思い出すあたりの人生、正直ハードモードすぎやしなかった?
不幸な過去って割とその手のキャラにありがちだよね。
そりゃあ、平凡で何の取柄もないような主人公だって世の中には溢れているかもしれないけど、そういうのは大抵どっかで謎のパワーを得るかして非日常に巻き込まれていくやつだ。もしくはそういうの一切関係ないほのぼの日常系。
力を得る事がなくても、周囲が非常識レベルの連中でそれらに巻き込まれてる、なんてのもあるけど、とりあえず私の過去だけを見ると何となく主人公としての可能性がわずかでも存在しているという恐ろしさよ……
ほら、勇者として旅立つ少年だって大体故郷焼き討ちされるか滅ぼされたり追放されての逃亡生活とかありがちじゃん。
幼少の頃に大変な目に遭ってるだけで主人公フラグが立つのもどうかと思うけれども……ッ!!
だってそれ言っちゃうとスラムで暮らすお子様とか皆主人公フラグが立ってる理論になっちゃうからね。
まぁ、全員にそのフラグが立たなくても極一部にはあると思うけど。
ただ、私の場合フリーゲームの主人公かはたまたその仲間になりそうな感じが全くしないか、って言われると……二軍あたりにいる仲間キャラとしてはありそうなんだよね。
回復薬とか作れるし。
材料渡せば調合する系キャラとしてなら仲間にいそう。
自分が主人公であるという説は認めたくないので仲間あたりのポジションとして考えたとして。
では、主人公は誰になるんだこの場合。
……ギルダーの誰か、かな……?
今までのイベント考えると、大体なんか厄介ごとを解決するだとか魔物退治だとかが主流っぽいし。
王道っぽいところで考えればカイルさんだけど、私との接点はそこまでない。
まあ私の存在二軍くらいなら関わりが少なくても全く問題ないけれども。
むしろ私との関わり多めで考えるとマトハルさんあたりが主人公になってしまうわけなんだけど……彼はどっちかっていうと主人公というよりも仲間キャラ側だと思う。というか元が敵側のせいで主人公とは対極の位置にいるようにしか思えない。
頑張っても主人公の仲間として何かたまに鋭いツッコミをするとかそういうやつだと思う。
…………いや、発想を変えよう。
前の時点で舞台がウルガモットだったからここが主要舞台だと思うのがおかしいのかもしれない。
アニーティカ側に、もしかしたら主人公っぽい人がいるのでは……?
過去にちょっと大きな事件はあったけど、それ以外は何もない平和な街にある日マッシュルームベアの脅威が……! うん、導入部分としてはありそうな気がしてきたぞ。
隣にある大きな街ウルガモットのギルダーたちと協力してこの脅威を退けよう、とかそういう感じの出だしは充分話の流れとしても有りに思える。
アニーティカギルドにもしかしたら新米ギルダーの主人公くんか主人公ちゃんがいる可能性はあるぞ……!
つまりウルガモット側はそんな主人公から見て先輩ギルダー勢。ちょっとキャラたってるだけのサブキャラである可能性もあるわけだ。
……そう考えると何か希望が湧いてきた。
ゲヘノムさんはそう考えると差し詰め各地のギルドを橋渡しするタイプのメッセンジャーでしょうかね。
よし、主人公っぽい子を見かけたらこっそり結界とかで支援しとこ。
私も今回の討伐戦に参加するのは確定してるわけだからね。
そう決意を新たにしたうえで、ギルド長にどういう感じの流れになりそうなんです? と聞けば。
アニーティカギルドとウルガモットギルドで協力するのはそうなんだけど、何か思ってたのと違う感じだった。
そもそも今回のマッシュルームベア大量発生は、カモミルド付近でバーサークベアが多く発生した事が原因だ。
でもそっち側ではマッシュルームベアになる必須アイテムのキノコがない。
そして増え過ぎたバーサークベアたちの中で弱めのやつらが縄張りから追い出され流れ流れてこっちにやってきた、わけだ。
そしてそっちにうっかり進化アイテムのキノコがある森があって、そこでそれらをゲットした結果マッシュルームベアの爆誕に繋がったわけで。
そこからは周辺の人里へ近づいたりするようになるわけなんだけど、森の奥でキノコを得て、そこから人里、となると地理的にウルガモットが近いのだとか。
更に森の奥へ行ってそこを突き抜ければアニーティカに行くらしいんだけど、マッシュルームベアは大体人里だとか多くの生物の気配がする方向へ行くらしいので、更に鬱蒼とした森の奥深くを突っ切ってアニーティカに行くよりはウルガモットに来る方が可能性としても確率としても高いのだとか。
なのでウルガモットから討伐隊が出るのは当然。
そっちでマッシュルームベアをおびき寄せたりしつつ、どうにか倒してもらっている間にアニーティカギルド側は森の奥深くにあるマッシュルームベアになるキノコを駆除……って言い方もどうなんだろうとは思うけど、とにかくキノコを撤去するらしい。
キノコがある場所は大体把握されてるものの、そもそもクマの頭から生えるまでは大きさもとても小さく、その大半が土に埋まってるようなものなので麻薬の原材料として求める人が来るにしても発見は難しく、そしてそこにあるやつを採ったとしても薬にできる量はとても少ないのだとか。
クマから生えたキノコくらいの大きさになれば言う事なしらしいんだけど……
かといって、採取した小さなキノコを上手い具合にバーサークベアの口に放り込める機会がそう簡単にあるか、となるとまた微妙。
しかも採取してしまったキノコは時間経過とともに乾燥し、あまり時間が経過しすぎるとバーサークベアが取り込んでも意味がない、なんて事もあるらしい。
うーん、乾燥したキノコを水でもどして、って感じでいけば可能かもしれないけど、そもそもバーサークベアと遭遇した時点でそんなんやってる余裕ある? って話よね。
小さなキノコ状の時だとそれで麻薬を作るにしても、とんでもない量が必要になるらしいからこそ裏稼業の人間もそのキノコを乱獲しない、って事なんだろう。割に合わない感じしかしないもんね。それならまだ危険を冒してでもマッシュルームベアの頭から生えてるキノコ一つ引っこ抜く方向性で頑張る方がマシ、といったところだ。
同じ金でも川で一粒の砂金を発見するよりは金鉱石が採掘されてた山でツルハシ振った方が、って考えるようなものだろうか。
とはいえ、アニーティカギルド側が安全なクエストというわけでもない。
キノコ付近にバーサークベアがいるならそれを退治しないといけないし、もしかしたら既にキノコを摂取してマッシュルームベアになってしまった個体がいる可能性もあるからだ。
キノコだってある程度どこにあるかを把握していても、完全に根絶できるかどうかは微妙なとこだしな……とはいえ、今回のマッシュルームベア大量発生を食い止める事ができれば後はどうとでもなる感じか。
ウルガモットギルドは最初からマッシュルームベアの相手をするのが確定してるからそこそこハードだけど、アニーティカギルド側はもしかしたらいるかもしれないマッシュルームベア、という感じでドキドキなスリルが味わえるという仕様。どっちにしてもうれしくはない。
協力はするけど、やるべき事はこっちとあっちでハッキリしてるので一緒の場所で共闘とかそういう事にはならなさそうだ。
となると、もしかしたらいるかもしれない向こう側の主人公の存在を認識できるかは難しいところだなぁ……




