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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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ありそうでない猶予



 ウルガモットからアニーティカまで実際にどれくらいかかるのだろうか、と思えば、そこまで遠くはないらしい。おばあさんの住んでた村からウルガモットまでは馬車でどれくらいかかったんだったかな。半日くらいだったと思う。何分結構前の事なので朧気だけど、馬車の中で夜を明かしたとかでもないし、途中の宿場町で宿をとったなんて事もない。馬車の中が揺れて尻がいてぇ、とか思ってたから余計に長く感じた可能性はあるけど、多分そこまでの時間はかかっていないはず。


 ……おばあさんが住んでた村にもここから行こうと思えば行けると思うけど、そもそも行ってどうするって話よね。

 おばあさんは自分が死んだ後の事も同じ村の人に頼んでたけど、お墓とかそこまでしっかりしてなくていい、みたいな事言ってたっぽいからなぁ。

 村を出る前に一応村の人に確認したけど、個人のお墓を用意するところはあの村にはそんなに存在してなかった。

 なので大抵は纏めての埋葬だ。


 お墓参りに行ったとしても、おばあさんのお墓にはおばあさん以外の村の人たちも埋葬されてるっていうね……埋葬雑、って思ったのはきっと前世の記憶のせいだろう。

 場所によってはロクに弔われないところだってあるらしいし。


 というかおばあさんは私があの村に戻ってくる事をあまり望んでないと思うんだよね……

 死期を悟って自分が死んだ後の事あれこれ他の人たちに頼んでたところからして、多分村に戻ってもな、って思いしかない。

 一応村の人たちだって私が戻ってきたとしても困るのではないだろうか。おばあさんが住んでた家も他の人に任せたっぽいから、既に無いか新たに誰かが住んでる可能性がある。ちょっと旅の途中で立ち寄りました程度ならともかく、またあの村で暮らすとなればそれは難しいだろう。


 まぁ、あの村で生活するつもりは私にもないんだけど。


 あの村がウルガモット寄りなのかアニーティカ寄りなのかまではわからないけど、まぁそこはどうでもいいのよ。

 問題はウルガモットからアニーティカまでどれくらいかかるかなのよ。


 一応お隣さんって認識だけど、そもそもウルガモットに住み始めてアニーティカの名前聞いたのって今回が初めてでは?

 アニーティカに住んでた時はちょいちょいウルガモットの名前耳にしてたと思うんだけど。


 前世の記憶思い出した時に、今住んでるところはゲームの主要舞台ではなかった、ってなる程度にはウルガモットのお名前耳にしてたと思うけど、でもウルガモットでこうして生活し始めてアニーティカの名前聞いたかっていうととんと耳に入ってこなかった。


 ギルダーの人からのうわさ話とかにも上がってなかったと思う。


 まぁいざこうしてウルガモットで生活してみれば、なんだかんだちょいちょいイベントめいた事があったし、メルドーラには応援要請で行くような事にもなったわけだし、ウルガモットそのものの知名度が高いのだろう、とは思う。

 そう考えるとアニーティカはウルガモット程ギルドの人員がいないのではないだろうか、と思える。

 もし向こうもギルダーがそこそこいて、その実力はこっちとそう変わらないのであれば、魔物の討伐の時向こうからも駆り出される可能性があったわけだ。


 ……お隣さんとはいえ、その距離が離れているので無理、ってオチもあり得るけど。


 というわけで早速ギルド長にウルガモットからアニーティカに行くまでどれくらいかかるのか、と聞いてみれば、ギルド長はそうだなぁ、と視線を何となく天井へと向けた。


「ここから馬車が出てるが、乗合馬車なら三日。宿場町も途中にあったとは思うが、一度は野宿がどうしてもあったはずだな……乗合馬車ではなく普通に馬借りて飛ばせば一日半くらいでいけなくもないが、馬が潰れるからなぁ……途中で馬を新しく借りていけばまぁ、一日半でも問題はないだろう。だが、借りる事ができなかった場合は馬が潰れるから行くのは良くても帰りの馬がな……アニーティカで別の馬を借りるにしても、ウルガモットとアニーティカでは馬借りる料金が異なるからなぁ……向こう高いんだ。

 徒歩だと言うまでもないが結構かかるな。乗合馬車でも一度は野宿が確定してる時点で、徒歩ならほとんど野宿だな。

 春夏秋あたりはともかく、冬はそうなると移動だけでもとても厳しい」


「メルドーラと比べると遠い、ってところなんですね」


 メルドーラだと何だかんだ一日で辿り着いたわけで。とはいえそれも少々急がせたからというのもあるけど。


 ゲームのフィールド歩くだけならそこまで遠いって感じがしないんだろうけど、まぁ実際に移動するってなると結構な時間がかかるのは仕方がない。

 とりあえず乗合馬車で移動するとして、行って帰ってくるだけで大体一週間が潰れるわけだ。


 ギルド長はアニーティカギルドに連絡取りたいって言ってゲヘノムさんに手紙渡したけど、そのお手紙が向こうのギルドに届くのは早くて二日後くらいか。

 馬かっ飛ばすにしても帰りの事を考えると潰すわけにもいかないだろうし。


 馬を借りる値段に関してギルド長はハッキリ口にしてなかったけど、向こうの方が借りるの高いって言ってたとなれば本当に高いんだろう。

 そりゃあ馬のレンタルしてる町や村で多少の値段の変動はあると思うけど、それを理解しているギルド長の口から高いって出た以上、予想してるより更にお値段お高めを想定しておいた方がいい。


 ウルガモットの二倍で済めばいいけど、下手したら三倍……いや、五倍とか十倍とかもあり得るぞ……

 流石に十倍もしたら借りる人がいるのかっていう疑問しか出てこないだろうけれども。


 とりあえずゲヘノムさんが次アニーティカのギルド長からのお返事を持って帰ってこない事にはギルド長も動くに動けないわけだ。

 そうなるととりあえずマッシュルームベアについての注意喚起が現時点での精一杯ってところかな。



「……なぁエルテ。恐らく決定事項になるとは思うが、次の魔物討伐戦にはお前さんも参加してほしい」

「回復要員として、ですよね?」

「あぁ、前のようにギルド待機で、じゃなくて、現場に向かってもらう事になると思う」


 まぁ、確かに戦う人の近くにいた方が万一怪我をされてもすぐさま治せるから、その言い分は理解できないわけじゃない。

 前のコフの時はなんだかんだ軽傷で済んでたから一応こっちまで戻って来てもらって、もっかい戦線に参加、みたいになってたけど、相手がマッシュルームベアだったらそんなんやってる余裕なんてないだろう。

 下手したら回復地点とでもいうべき私のところまで来れるかどうかも疑わしい。


「それは構いませんけど、ボクあのクマの花粉対策はできるかどうか自信がありませんよ」

「それは問題ない。いざとなったら魔法で風を起こして常にこちら側を風上にしておけばどうにかなる。とはいえ、うちで魔法を扱えるギルダーは限られてるし、アニーティカにも魔法を使えるギルダーがいる事が前提になってくるんだがな……」


「うーん、ゲヘノムさんはそういやあのキノコを使って事前にお薬作っての対策をとろうとしてましたよね。ちょっと家に帰ったら他に対策できそうな薬がないか調べてみます」

「おう、頼む」


 とはいえ、期待はあまりできないかな。


 マッシュルームベアは人里であっても平気で近づいてくるようなので、とりあえず今手が空いてるギルダーの皆さんは一先ず周辺の警戒にあたる事になったようだ。

 とはいえ、遭遇したからといって倒せるかどうかは微妙な場合もあるのでそういう時は大きな音を出すとかして追い払う方向性でいく事にしたらしい。

 大きい音くらいで逃げ出したりする……?

 バーサークベアの時なら案外どうにかなりそうな気はするけど、マッシュルームベアってあのキノコのせいでご本人っていうか本クマもラリってる状態でしょ? 逆に興奮したりして余計襲ってきたりしない……?


 普通のクマの生態と同じように考えてしまいがちだけど、もしかしたらどっかは違う部分があるんだろうか……いや頭にキノコ生えてる時点で違いも何も、って話だけどさ。


「あとギルド長、もう一つ聞いておきたいんですけど」

「おう」

「収穫祭って何するんですか?」


「……お前それも未体験か!?」

「え? えぇまぁ。そういや去年の秋ごろにリタさんが何か色々な食べ物買って帰ってきた日があったような気はするけど、もしかしてそれがそうだったんですか?」

「お前なんで祭りのことごとく不参加してるんだよ。あの薬師の婆さん怒らせて外に出してもらえなかったとかなのか?」

「いえ、ただちょっと薬の調合のあれこれで忙しい時期だった……ような」


 暇な日は暇してたけど、忙しくなるとホント外に出る余裕もないくらい忙しかったものだから。

 リタさんがわざと私を祭りなんかに参加させてたまるか、みたいな感じでやらかしたわけではないと思う。

 イベントの前後ってなんだかんだ怪我をする人も増えたりするからね。

 準備だとか、その後の後始末だとかで。


 リタさんはそこら辺見越して色々薬を用意しようとして、そのついでに私にいくつかの薬を教えたに過ぎない。


 穿った見方をすればどこまでもリタさんが黒幕っぽくなるけど、あのリタさんがわざわざそんな立ち位置を演じるとも思えない。だって無駄だもん。

 面白半分で私をからかうためだけにやる、という可能性があるかもしれない、とか考えてもそもそも私のリアクションが楽しいとかならともかく、リタさんが望むようなリアクションができるかってなると微妙だと思っている。

 そんな驚かし甲斐のない相手に張り切ったら何か自分だけ浮かれてるみたいで馬鹿みたい、とかリタさんなら考えるだろうし、そうなるとやっぱりリタさんがわざと祭りの時期に私を外に出さないようにしてた説はないと思うんだよなぁ……


 リタさんが一緒に祭りに参加しよう、とか誘ってくれたら行ってたと思うけど、お祭りって人がいっぱいいるからリタさんなら早々に疲れたから戻るって言い出しそうだし、そうなると私も大して参加しないうちに帰る事になりそう。うーん……友達と呼べる存在がいなかったから友達と一緒に行っておいで、とかリタさんも流石に言えなかっただろうし、かといって一人で参加していたら……今年の花祭りと星祭りの一件を思い出すと何とも言えない。

 少なくとも私がリタさんなら一人で参加しておいで、とは言えないな。だってあの祭りの時に捕まえた不審者どんだけいたと思ってるのさ。


 私の反応にギルド長も何とも言えない顔をしていたけれど、とりあえず気を持ち直したらしい。

 オホン、と若干わざとらしい咳ばらいをすると収穫祭について教えてくれた。


 教えてくれたって言っても、まぁ大体想像通りだ。

 秋の実りに感謝をささげ、これから訪れる冬を乗り切るための英気を養うお祝い事。

 収穫された作物だとかを普通に売る店もあれば、それらを冬の保存食として加工して売る店もあるのだとか。

 まぁ去年何か色んな食べ物買ってきたリタさんの事を思い出せば、収穫祭ってのはそろそろ冬支度の準備もしとけよ、と暗に促すイベントでもあるのだろう。


 花祭りの時のように屋台ですぐに食べられる物が売られたり、冬の間に食べるため用の保存食として加工されたものが出回ったりする他に、防寒具などの冬用アイテムも売りに出されるのだとか。


 で、無事に冬を乗り切れば、また春がやってきて、その訪れを感謝する花祭りが行われる、と。


 世の中上手くできてんなぁ、とか雑な感想を抱く。


 だがしかし、その収穫祭を行うにしても、ウルガモット周辺にマッシュルームベアがうろうろしてるようなら場合によっては収穫祭そのものが中止になるかもしれない、とギルド長に言われる。


 花祭りと星祭りの時ですら何か色んな犯罪者が出たというのに収穫祭でそういうのが出ないなんてあり得るはずもない。

 勿論当日はパトロールするギルダーやら自警団やら騎士団の人がいるだろうけれど、それでも花祭りの時は何だかんだで結構大変だったのだ。

 収穫祭も花祭りと同じかもしくはそれ以上に大変な事になりそうな気がする。


 けどその状態で街の中の警備に人がとられてるとなると、外の方は警戒するのが難しくなる。

 厄介ごとが増えたからってそれを解決できる人も増えるわけじゃないからね。むしろそっちは変わらないのに厄介ごとだけ増えたら解決する側もそりゃあテンパりますわ。


「つまり……収穫祭が始まる前までにマッシュルームベア案件を片付けないといけないわけですか……

 ところで収穫祭って具体的にいつやる予定なんです?」


 私がそう質問すれば、ギルド長はぎゅっと強く目を閉じた。

 そしてそのままの状態でこちらに指を突き出す。立てられている指は一本だけだ。

 一日、のはずはないのでそうなると……


「一週間、あ、いや違うんですね。じゃあ十日……? あ、一月後」

 私の言葉に違うぞ、とばかりに首を横に振っていたギルド長が頷いたのは、一か月後の部分だ。


 来月かぁ……


 そう考えると何か余裕がありそうな気がするけど、ギルド長の反応からあまり余裕が感じられない。


 ……いやでも確かに落ち着いて考えると一か月ってあっという間だもんな……


 ゲヘノムさんがアニーティカから戻ってくるまでを考えるとこの時点で既に数日消費されてるわけだし。

 そこからアニーティカと連携するのかしないのか、でまた話が変わってくるだろう。

 連携するならそれこそお互いに話し合いをしないといけないわけで。


 そして恐らく収穫祭も花祭りの時同様に街の中を飾りつけたりする可能性がある。


 ……あれ、一か月で足ります? ていうか、この短時間で解決しないと駄目なんでしょ?

 というか、一か月まるっと余裕があるわけじゃないもんね。

 収穫祭までに片付けないといけないけど、当日に解決させるのは手遅れ。

 となると実際この案件にかける事のできる時間って……思った以上にないのではなかろうか。

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