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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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思った以上のおおごと



 ところで今更だけど、ゲヘノムさんはマトハルさんの兄らしい。ただし、母親は違う。

 異母兄かぁ……単純にゲヘノムさんのお母さんが死んだ後でマトハルさんのお母さんと再婚して、とかならまだしも、そうじゃなかったら家族間ギスギスしてる~、とかそういう感じのやつ?

 とか一瞬考えたけど、しかしマトハルさんとゲヘノムさん、二人のやりとりを見る限りはそこまで不仲というわけでもなさそう。少なくとも、表面上は。


 そもそもマトハルさんはあまり普段から表情動かさないタイプだから何考えてるのかわからんタイプだし、ゲヘノムさんは表情こそコロコロ動くけどなんていうか、壁を作ってる感がある。ある程度手札を晒してるように見せて、その実肝心な事は一切言わないタイプっぽいぞ……

 前世の途中までプレイしたゲームの内容からしても雰囲気がそんな感じだったから余計にそう思えるのかもしれない。


 ともあれ、ギルド長からざっくりとゲヘノムさんについても聞いた。


 ゲヘノムさん、普段は別の所でギルダーやってたらしい。

 マトハルさんと一緒に行動とかしないんだろうか、と一瞬考えたけど、兄弟だからって別に常に一緒に行動しなくちゃいけないわけじゃないもんね。

 家族だから一緒にいないといけない、っていうのは違うわけで。


 一緒にいてもいなくても家族の距離感なんてそれぞれだもんなぁ……

 マトハルさんとゲヘノムさん、二人の距離感はつまりそういう感じだったんだろう。


 ルーウェンさんとディットさんは割と一緒に行動してるけど、この前のメルドーラの町の時はディットさん不参加だったし。


 で、ゲヘノムさん時々こっちの街にきて、一つ二つ依頼をこなしたらまたふらっと別の町に移動したりしてるんだそうだ。

 一か所に留まるのが苦手なタイプなんだろうか……?


 リタさんとか知り合いみたいだったし、もしかしたら各地にそういう知り合いがいてそういうのを定期的に訪ね歩いているのかもしれない。

 前世で仕事や結婚で住んでた土地を離れた友人が一年に一度こっちに戻ってきた、とかそういうのもあったし、仮にゲヘノムさんがそういう感じで各地を移動していたとしてもわからなくはない、かな?


 だがしかしゲヘノムさんが今回こっちにやって来た理由は見過ごせない内容だった。



 去年あたりから増加傾向にあったバーサークベアが今年は更に増えて、しかもマッシュルームベアに変化する件が増えつつあるのだ。

 バーサークベアが増えた地域にはマッシュルームベアになる例のキノコがそこまで存在していなかったから今まではそんな脅威でもなかったみたいなんだけど、増え過ぎた事で縄張り争いが発生し、その土地を追い出され流れ流れて別の土地へ……みたいな感じで移動したバーサークベアがキノコのある地域へ移動。

 そして結果としてマッシュルームベアへ……とかいうなんとも言えないピタゴラスイッチが発生したようだ。


 バーサークベアとかいう名前の割に縄張り争いで両者死ぬまで戦い続けるとかそういう感じではないのか……と思ってしまったのは仕方のない事だと思う。

 いやだって、ねぇ?

 狂戦士とかさぁ、ゲームだったらコマンド入力不可だったり死ぬまで戦い続けてるとかよくある話じゃん?

 そんな感じのお名前冠してるんだから、戦い始めたらもう死ぬまで止まらない……!! みたいな想像しちゃっても仕方ないじゃん?


 そもそもバーサークベアの時は人里に積極的に襲いに来るわけでもないって話だったし、思ったより理知的というか冷静に見えるというべきなのか……



「バーサークベアが増えたのはカモミルド近くの山だ。だがそこには他にも多くの魔物が生息している。そして、生まれたばかりでまだ弱い個体のバーサークベアがそこから追い出されあちこちへと流れ着いて……アニーティカとウルガモットを繋ぐ街道から少しそれたところにある森の奥へ行った個体がマッシュルームベアになり、各地を徘徊している」


 ん、んん? と首を傾げたのは馴染みのない言葉が聞こえたからだ。

 アニーティカ……地名、町かどこかの名前だろうか。聞いたような覚えがないわけじゃないけど、でも多分初めて聞くなぁ、といった程度だから、ゲヘノムさんのその言葉の意味がどれだけ深刻なのか私にはよくわからない。そりゃあ、想像するくらいはどうにか、って感じだけどその想像だってふわっふわしている。


 ギルド長にこっそりとアニーティカとは? と聞けば、ウルガモットの隣りにあると言ってもいい街なんだそうだ。

 あれ、それって……


 もしかして、私の故郷ではあるまいか!?


 聞き覚えがあるような気はしたけどそこまで馴染みがないな、ってのもそりゃそうだよねぇって話だ。

 幼い頃に自分が住んでる街の名前は耳にしたし、聞き覚えがあるのは当然。ただ、知り合い作フリゲではアニーティカは舞台になっていなかったから名前だけ聞いてもそんな重要な感じがしなかった。

 そうしてその後おばあさんの住む村で生活し、そこからフリゲで何度もお目にかかったウルガモットという名前のついた街へ……となったから、自分が住んでた街の名前なんてすっかり忘れてたわ。



「発生源がウルガモット・アニーティカを繋ぐ街道に近い事もあり、被害に遭うのは両街がもっとも多いと思われている。だからこそアニーティカギルドでも現在マッシュルームベアについてはとても警戒されている状態だ。見かけたら速やかに退治するように、と通達もされている。

 ……こっちにその情報が届いていないのは恐らくその通達に向かった人物が途中で死んだかしたからだろう」


 ゲヘノムさんの言葉に知らないうちに大変な事になるところだったのか……と戦慄する。


 危険な生物情報が届いているならこっちでも自衛のしようはあるけれど、その情報がなくて突然そんなのと遭遇、なんて事になっていたら最初のうちは情報を集めるだけでも被害が出たに違いない。


 単なるそこらの魔物ならばったり遭遇しても倒すか逃げるかできるけれど、恐らくその情報をこっちに届けようとしていただろう人はもしかしたらマッシュルームベアに遭遇して胞子を吸い込んでしまったのかもしれない。

 結果として意識がちょっとふわふわしてるうちに屠られた……まぁ、想像しといてなんだけど、とてもありそうな展開よね。


 マッシュルームベアになるのにどうしても切り離せないキノコがどうやら街道からちょっと離れたところの森の奥にあるらしく、それらを摂取してしまった魔物、またはキノコそのものを食べてしまった結果マッシュルームベアへと進化しちゃった、ってのもまぁ、理解はできる。


 本来ならその森にバーサークベアが来るような事はないし、その森にいる魔物がそのキノコを食べて最終的にバーサークベアに食べられるような事になる可能性もとても低かったから、そこまで危険視されてはいなかったみたいなんだけど、別の場所で大量発生してしまったバーサークベアが流れ流れてしまった結果がご覧の有様と言われると……何かいやーなピタゴラスイッチよね、って感想にしかならない。


 そういう部分を省けば単なる食物連鎖なお話でしかないはずなのに……いらん要素を追加された事で周囲に出る被害がシャレにならんことに……


 そして発生源がウルガモットとアニーティカの中間、と考えると確かに最初に被害に遭うのはウルガモットかアニーティカか……となるのも頷ける。

 バーサークベアだった時は人里にあまり近づく事はないらしいけど、マッシュルームベアになってしまうと話は別。そもそも人間って平均的に見るとそんな強くないくせに数だけはいっぱい、って感じだからそういう目線から見るととても良い獲物が固まっているわけだし、絶好の狩場だろう。


 ギルドがあって、自警団があって、騎士団もいるとなればそりゃあ一筋縄でいくはずもないけれど、戦える人間ばかりではない。どっちかっていうとそこで暮らす住人たちは多少自衛ができるかもしれないけれど、魔物退治ができる程か? と聞かれればそうでもない人たちの方が数は圧倒的に多い。

 ましてやキノコに意識を奪われてるのか理性がどこかに飛んでいってしまったマッシュルームベアなら、間違いなく街に襲いにきたっておかしくないわけだ。

 胞子吸い込んだら獲物の動きは確実に鈍るし、狙わない理由がある? って感じなのかもしれない。



 本来ゲヘノムさんは別にウルガモットにマッシュルームベアが大量発生してるから気を付けろよっていう連絡をしに来たわけじゃないらしい。

 増殖したマッシュルームベアを放置するわけにはいかない。

 それはゲヘノムさんもわかっている。

 だって増えるにいいだけ増えたら、しかも街の近くで風吹いた結果舞い上がった胞子とかが街の中に降り注ぐ、みたいな事になってしまったら、それだけで街が壊滅するかもしれないわけだ。


 今まで人里にやってくるようなマッシュルームベアは大体が単独、それだって街の中に入るような事にはなってないし、その手前で戦える人材が退治している。

 けれど、数が少ないからこそどうにかなっているだけで、もしその場にいる戦闘要員だけで対処できそうにないくらいの数で押し寄せられたら。


 ……完全にあかんやつじゃないですかー。


 遠くにいるマッシュルームベアの頭のキノコから出る胞子が、ふとした拍子に風に乗って人里にやってきたとして、その頃には多分吸い込んでもあまりにも少量すぎて多分誰かに影響が出るなんて事もないとは思う。でも、近距離で吸い込むような事になれば勿論効果は発揮されるわけで……



「マズイなんてもんじゃないな……」


 困ったようにギルド長が頭をがしがしと掻きむしった。

 確かにそんな物騒な魔物がこの周辺をうろうろしている、しかもマトハルさんが倒した二体以外にもまだいます、ってなったらそりゃあね……そうなるってものだよ。

 マトハルさんが倒したのは一体だけ? 何の事かな。

 正直私も結界でギュッ! とする方法で倒したとはいえ、あれ気軽にサクッとできる感じじゃないから次からは別の手段を考えたいし、そもそも私を戦力に数えられましても……ってなるわけだ。あくまで私は回復要員の非戦闘員です!

 結界があるからまだかろうじて身を守れる程度にはなってるけど、生身で直接荒事に挑めってなったらまず無理。



 ゲヘノムさんの説明アレコレを聞いてるうちに、他にもちらほらとギルダーの人たちがギルドに足を運んできてたせいで、今現在ギルドの建物内は結構な人口密度である。

 どうでもいいような話であればそれこそ気にせず依頼を確認して、さっさと仕事に行ってる人たちだっていただろう。

 けれどそういった人が誰もいない。

 つまりこれはとても由々しき事態である……ッ!!


 まぁそうよね。危険生物がこの近辺に出没してます、っていう話が出てるのに近隣住人が我関せずとかだったらそいつ命いらねぇのかってなっちゃうわけだし。


 前世でもニュースで住宅街にクマが出没! なんてやってたらまず「えっ、どこの話!?」ってなるし、ましてやそれが自分の住んでる近くとなれば、まだクマは捕まってもないみたいな感じだった場合外に出る時は警戒する。その警戒が役に立つかはさておくとしても。


 正直な話出会い頭にトースト咥えた美少女転校生とぶつかるよりクマと遭遇する可能性の方がよっぽど現実的なんだわ。


 魔物ですらないクマですらそんだけの脅威だというのに、更には魔物。しかもキノコで理性がどこかへ逝っちゃった系クマとなればどれほどの脅威だこれ……

 しかもマッシュルームベアの死骸を食べた魔物はしばらく体内の魔力が増加して一時的に強化状態。いつもの魔物退治のつもりで行ったら実はそういうやつでした、となれば倒すのも苦労するかもしれない。

 マッシュルームベア以外の魔物もこうなってしまった以上決して油断できない存在になってしまっているわけだ。


 そんな状況なので、我関せず、みたいな感じでさっさとギルドを出ていくギルダーさんなんていない。

 他に何か情報がないかとゲヘノムさんの言葉を待ってるようなものだ。

 とはいえ、多分ゲヘノムさんもそこまでの情報は持っていないんじゃないかな。

 彼はどうやらマッシュルームベアのキノコをどうにか採取して、それで中和剤のようなものを作った上でマッシュルームベア討伐に挑むつもりだったようだし。


 ……確かに聞けば聞く程、キノコの胞子を吸い込まなければ問題ない魔物ではあるのよ。ただ、胞子吸い込んだ時点で完全アウト状態だから強敵なだけで。胞子がなければただ頭からキノコが生えただけのクマだもんね。



「このままだと収穫祭に影響が出るかもしれねぇなぁ……」


 ギルド長の呟きに、周囲がざわつく。


 春に花祭り。

 夏に星祭り。


 とくれば秋にも何らかのお祭りがあるのでは? と思ってたけどやっぱりか。やっぱりあるのか。

 というか名前からしてどういうものか想像できるけど……


「そうなれば死活問題だな……」


 他のギルダーがそう言った事で、私が考えた以上に事態は深刻らしい。


「ゲヘノム、アニーティカのギルドと連絡を取りたい。伝言を頼めるか?」

「…………ま、仕方ないでしょう」


 ギルド長のその言葉に。

 流石にゲヘノムさんも反対はしなかった。

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