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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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新たな可能性



 バッと勢いよく横切っていったと思われた影は、こちらに気付いたのか急速に向きを変えて近づいてきた。なんとそれは、頭からキノコが生えたクマではありませんか!

 まさかの二匹目ぇ……


 うんざりした様子のマトハルさんではあったが、それでも武器を構える。

 相手がこっちに気付いて襲い掛かる気満々だからね。仕方ないね。


 あと結界で殴ったりしないように、ってさっき言ってたのは下手にマトハルさんが接近した時にそれやってうっかりキノコから胞子がばっさばっさ出たら危ないからだよね。頭を狙わないで身体を狙ったとしても、衝撃で出てこないとも限らないし。


 っていうかさ……あの、


「これ、マズくないですか……?」



 さっきのクマは茶色い毛並みだった。

 けれどこっちの毛並みは赤いのだ。


 魔物の赤化とか黒化とかって確かパワーアップしてるんだよね。クマの種類が別ですとかではなくこれさっきのクマと同種だよね。でも色違うって事は……


 これ、さっきのクマより強いやつでは?


「あぁそうだな……!」


 あ、やっぱ赤化なのかこれ。

 さっきの通常個体でも結構倒すのに苦労してたのに、それより強いのが出てくるとかしかもマトモに戦えるのマトハルさんだけだとか、どう足掻いてもピンチでしかない。


「これ、どっちか残ってもう片方がウルガモットに助けを呼びに行くとかした方がいいやつですか?」

「いや、逃げる方を追いかける習性があったはずだから、そうなると街が危険な事になる。そしてそうなった場合、こちら側にも何らかのペナルティが生じる恐れがある」


 あー、そりゃそうか。

 逃げる側は必死でそこまで頭回らないかもしれないけど、下手に魔物連れたまま街までやってこられたら街が今度は危険な事になるもんね。

 街の中にまで入ってこられたらいくらギルドとか自警団とか騎士団がいようとも、一般市民の方々が被害に遭わないとも限らないし、そんな事をしでかした元凶はいくら必死で、とかって言われてもやらかしもまた事実。

 ウルガモットならまだ大丈夫かもしれないけど、下手にどっか小さな町や村とかだとそれが原因で滅ぶ可能性もあるもんな……


 となるとどっちかが先に街に行って助けを呼ぶとかは無理か……二人同時に逃げるみたいに別方向に行ったらどっち追いかけるんだろ……気にはなるけど試しにやるか、とはならない。


 私とマトハルさんがちょっとしか会話してないうちに、赤クマはグルグルと地獄の底から響いてきそうな唸り声を上げて襲い掛かってきた。狙いは少し身を引いて逃げる素振りを見せたマトハルさんだ。


 そういやさっきのクマとの戦いも、マトハルさん胞子吸い込まないように一撃叩き込んだら距離とってたけど、アレ見ようによっては逃げる前兆みたいに思われてたのかもしれない。だからさっきからマトハルさんだけが狙われていたのか……私はその場で結界張って一切動いてなかったもんなぁ。


 しかしさっきのクマでマトハルさんも大分消耗してるっぽいんだよね。そりゃ怪我はしてないけど間違いなく体力ゲージとかあったら減ってる。緑が通常なら今多分黄色とかになってる。

 元々マトハルさんの戦闘スタイルは短期決戦型っぽいからなぁ。長期戦には向いてない。

 盗賊とか仕留める時もほとんど一瞬だもんなぁ……


 大体防御力が紙装甲。一撃でもかすったら死ぬとかそういう感じだもの、神経研ぎ澄ますしその一戦が長引けば精神的な疲労とか消耗はとんでもない事になるのは言うまでもない。


 なんて私がハラハラしながらも見ていれば、さっきと同じ戦法でマトハルさんは応戦してるけど、明らかに攻撃が通じていない。

 さっきのやつはとりあえず一撃斬ればそこそこダメージ受けてたけど、今回のやつはマトハルさんの攻撃あまり効いてないっぽい。赤化が強化個体だってのはギルド長からも聞いたけど、防御力が通常個体と比べて一目で段違いってわかるの絶望的では?


 素人目に見てたいして変わらんのでは? とか思って油断するのも危険だけど、その素人から見て明らかな違いがあります、ってのはなんというかヤバさが際立ってる。

 うーんマズったなぁ、今回普通に薬草調達に来るだけのつもりだったから、攻撃アイテムは持ってきてないんだよね。


 私だって毎回、火精霊イフリートの息吹を結界に包んで持ち歩いて外出とかするわけがない。

 そんな物騒な外出が頻繁にあってたまるか。

 確かにリタさんは私に攻撃手段を持っておけとは言ったけど、あれは例えば予め危険な場所に行く時だとかに持て、の意であっていつもいつでもいかなる時でも危険物と共に行動しろって意味じゃないんだわ。


 何かの拍子にうっかり結界解除したらその時点でそもそも火精霊イフリートの息吹が爆発する。

 万一街中でそんなんなったら大惨事ですわ。

 下手したら私がお尋ね者になってしまう。


 これが毎回小規模爆発とか引き起こしてて、エルテといったら爆発だよねー、みたいな風物詩みたいな扱いになってればワンチャンあるかもしれないけど、まぁそんなワンチャンあるはずもないんだわ。あってたまるかって話なんだけども。


 普通に持ち歩いてる程度じゃ爆発しない火蜥蜴サラマンダーの息吹はそれでもせめてこれから最低一個くらいは持ち歩いた方がいいだろうか、って気がしてきた。

 いやだって、今回出かける先いつもとそう変わらなかったし、そこからちょっと逸れた場所でこんなのと遭遇するとか誰が思うよ……


 マトハルさんだってまさかこんなのと出くわすとか思ってたらもっと事前準備してたはずだよ。少なくとも出るって知ってたらカイルさんあたりに声かけてたと思うし、ルーウェンさんとかディットさんにも声かけてたと思うんだ。


 だがしかし現実は今私とマトハルさんだけ。

 明らかに戦力不足。負けイベか? とか疑う始末。


 ……ところで今ふと思ったけど、たとえ私が火精霊イフリートの息吹を持ち歩いていたとしてもだ。

 周辺が森という立地で使うのってヤバくね? メルドーラにあった岩壁というか洞窟をガッツリ崩壊させるレベルの威力を誇った代物を、可燃性物質たっぷりと言ってもいい森の中とかで使うとか、間違いなく火事になるよね。

 たとえ持っていたとしても使えないとかどういう事なの。


 いや待て、あのクマに結界で包んだ攻撃アイテム近くに投げてそれと同時にクマを結界で包むと同時に攻撃アイテムの結界を解除すれば森に被害は出ないのでは……? とか今閃いたけど、アイテムが手元にないのでそんな方法を思いついても全くの無意味!


 おーっと、そんな事を考えてる間にマトハルさんの疲労感もピークに突入したっぽい。足がふらついてる……!

 このままでは次に攻撃仕掛けても即座に反撃とかされたら確実に食らってしまう!!


「ん? いやまって……?」


 どうしようどうしたら、とか思ってたけどさ。

 私、ちょっと前に何か閃いてなかった……?


「…………それだ!」


 なんっで気付かなかったんだ。あるじゃないあの胞子を気にしないで使える攻撃手段が。


「エルテ!? お前何を……!?」


 まさかいきなり私が声を上げるとは思ってなかったのかマトハルさんが怪訝そうな顔をしていたけれど、それでも注意はクマに向いている。そうだよね、ちょっとの油断が命取りだものね。

 そして私の声は興奮状態にあるクマの注意を引くまでには至らなかったらしい。マトハルさんが咄嗟に身を引いて逃げようという素振りを見せたからってのもあるかもだけど。


「すいませんマトハルさん。ここからはボクがどうにかします。

 いやー、何で気付かなかったんだろこんな方法を。ホンット応用がきかなくて困っちゃいますね。そう……結界は殴るだけのものじゃない……ッ!!」


「いや元々結界で殴るとかいうのがおかしいんだが」


 こんな状況だというのにマトハルさんは割としっかり突っ込んできた。いやでも今そういうのいいんで。


 クマがごぁあ! とか唸りながら前足で薙ぎ払おうとしてくる。鋭い爪はちょっと掠っただけでもヤバいだろうなというのが目に見えてわかる代物で。けれど私はその前足が繰り出す攻撃を結界でひとまず受け止めた。


 ぐるるぅ……? と目に見えない何かに爪が当たった事に不審にでも思ったのだろう。クマって賢いもんね! だから敵に回したくないんだけど。ただの人間だったらまず勝ち目ないし。猟銃あっても安心できない。

 けど、咄嗟に作った結界だったけどあの攻撃を防ぐ事はできた。つまり、結界は通用する……!


 そう判断した私は瞬時に次の結界を作り上げた。

 それはクマ全体を覆う結界。

 結界は目に見えないけれど、それでもクマは何らかの異変を感じたのだろう。野生の勘かな……?

 警戒するようにしていたけれど、前足をぶぉんっ! と振り払うように動かして、そこで結界にぶち当たる。


「エルテ……一体何を」

「結界で閉じ込めました」

「一時しのぎにしかならないだろう……いや、正直これ以上の戦闘は厳しいものがあったから、ある意味助かっているのだが」


「マトハルさん、何か勘違いしていませんか? ボクの魔力が尽きるまでこの結界を維持し続けてこいつが先に餓死するように、とかって長期戦に持ち込むとか、はたまたウルガモットに戻って助けを呼ぶとかそういう日和った事考えてませんよねぇ……?」

「実際その二択じゃないのか? 結界を長期張り続けるのも無理があるから、ギルドに連絡入れるのが一番現実的だと思うが。

 危険度的に騎士団案件になりそうだが、あまり集団で行って万一誰かが胞子を吸い込む事になれば場合によっては同士討ちになりかねない。となれば、集団で敵を鎮圧するよりは最初から個人プレーの得意なギルダーに任せる方がいい」


「ギルダーの皆さんを信用してないわけじゃないんですけど。でもそれも危険じゃないですか。そりゃ皆さんお強いのはわかってますけれども。

 けど、今ここで、こいつを仕留めます」


 私がそう宣言すれば、マトハルさんは何言ってんだお前、みたいな顔をした。いや、そりゃ私非戦闘員だからそういう反応されるのも想像できてたけどさぁ……


 ちなみに赤クマは見えない壁があるという事に気付いて現在興奮状態にあるのかそりゃもうドスのきいた鳴き声あげながら結界に体当たりしてるところです。

 うーん、私の結界壊れる感じは今のところないけど、これ余裕でウルガモットの建物とかだったら壊されそうだなっていうくらい迫力あるんだけど。


 何はともあれ、この赤クマの攻撃はもう封じた。

 ここからは一方的な制圧ターンです!

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