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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
序章 難易度選択にイージーがない時点で人生はクソ
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日常常に是疑心暗鬼



 さて、私がゲーム知識として知っている事は正直どこまで通用するのかわかっていないが、それはそれとしてこちらの世界で得た情報からわかった事がいくつか。


 まずこちらの世界、成人は十八歳かららしいよ。

 この手のファンタジー系とか異世界が舞台になってるゲームって成人案外早かったりするのが多いけど、ここはそこまででもないっぽい。

 ちょっと魔王倒してきてって言われる勇者だって十六歳から旅に出たけど、それに比べるとまだ猶予がある感じだ。


 ところで今の私は十六歳。

 未成年扱いなので店を継ぐにしても、いくつかの手続きが必要になるっぽい。うぅむ、お役所関係は面倒だからとても気が重たいな。前世でも様々なお役所関係の書類とか手続きとかこなしてきたけど、あれ延々やってると発狂しそうになるよね。あまり簡単にしすぎると偽造書類とか悪用する手段がいっぱい出てきちゃうし、かといって面倒な手順すぎると普通の人がストレスマッハ。

 いつの時代も悪事を働く奴のせいでマトモなやつが割食ってる。



 私が元々知ってるゲーム内容の、主人公がいた学校はちゃんと存在していた。

 魔法科と剣術科で私が知ってる感じのままだ。

 通うのは十歳からで六年間。つまりは十六歳で卒業の流れになるらしい。


 その後魔法科だと更に研究職へ進むとかでそのまま学校に残る者もいるらしいけれど、剣術科の場合は大体ギルドに就職する流れだとか。

 冒険者とかそういうのあるんだろうか? ギルドの人たちがそう、って思ってたけど何かちょっと違うみたいなのよね。いや、大まかに大体同じに思える部分もあるんだけど、ギルドの人たちが冒険者って言われるとそれは何か違うなっていうイメージの問題かもしれない。あくまで私の中だけの。


 一応この街、っていうか国の防衛機構みたいなのを大まかに分けると、騎士団と自警団、それからギルドだ。


 騎士団は言うまでもない。国を守るための存在。一応街の見回りもしてたりするけど、基本的に動くのは大規模な討伐戦とかそういう感じだ。

 前世でいうなら軍隊とかそういう感じだろうか。


 自警団もまた国に所属する組織らしい。

 こちらも街の治安を守る感じではある。騎士団が軍隊だというのなら、こっちは警察とかそんな感じかも。


 ギルドは国営とかそういう感じではなく、民間らしい。

 とはいえギルドの場合、街の平和を守る、とかそれだけが仕事というわけでもない。他にも色々と依頼次第ではやる事があるので、どちらかといえば何でも屋だ。


 確かにちょっと街の外に出るのに護衛雇おう、ってなった時、常識で考えて騎士団とか自警団に依頼は難しいだろう。

 だって頼める? 前世で言うならちょっと治安の悪い土地に行く時にボディガード雇おうとして、国の軍隊に依頼出す? 自分の仕事が国のそういう関係なら依頼出さなくても上からの指示でそういう護衛つけますってのもあるかもだけど、そうじゃなかったら自分で依頼するにしても軍隊に連絡入れるとかある!? むしろ連絡先って公表されてるものなの!?


 自警団だって警察みたいなものだし、普通に考えて依頼出せるはずもない。

 例えば街の中で人が暴れてて、とかそういう案件なら呼びに行くのも問題ないけど、家の中でゴキブリが出たの! とかいう理由で呼び出せるか?

 いや前世だったら何かそういうので警察に電話したっていう話聞いた気がするけれども。


 依頼内容次第では金銭絡むけど大体護衛だとか害虫駆除だとかやってくれるのはギルドだ。

 金銭絡むって言っても、依頼内容によってはちょっとした手間賃程度しかかからない事もあるから凄い出費が、ってわけでもない。


 あと、街の外で魔物が大量に発生した場合、基本的に出るのは騎士団とかだけど、数が多すぎる場合はギルドにも依頼要請が出るらしい。

 自警団出ないのかよって思われるけど、街の守りも重要なわけで。


 街の外で暴れてた魔物が何かの拍子に街の方にやって来て、中に入りこまないとも言えないからね。


 あと夜とか結構見回りしてるからね、自警団。夜は魔物が活発になるからその分人里に勢い余ってやってくる魔物とかもいるらしくて、そういうのが入り込まないようにしてるとかリタさん言ってた。


 私が夜ぐっすり眠れるのも自警団の人がお仕事してるからって事ね。


 考えてみると魔物がいる時点でこっちの世界常に身体張ったお仕事してるなって思うわ。

 魔物以外にも盗賊とかの犯罪者とも戦うわけだし。


 前世は国が違うだけで相手は基本人間だけだったからな……いや前世でも魔物いたらそれはそれでどうなってたんだろうって思うけども。



 あと、これ一番重要な話かもしれないけど。

 基本的に異世界転生してるって感じじゃないですか。前世の知り合いが作ったゲームの世界にとても似てるけど。


 異世界ってなるとさ、文字とか言葉とかどうなってんの? って思うじゃん?


 少なくとも私が耳で聞いてる限りでは日本語に聞こえるし、時々英単語みたいなものもあるし、他の国の言葉が語源になってるものもあったような気がする。

 会話に関しては特に苦労する事もなかった。


 そして肝心の文字。

 大抵の異世界物ってなんかこう、アルファベットをちょっといじったみたいなのが使われてるとかあるあるじゃないですか。漫画とかだと特に。

 文字の端っこが伸びてそこからくるんくるん巻かれてるような文字だったりで、一応解読可能な範囲だったりとか。


 普通に日本語でしたわ。


 まぁ、ゲームだと基本的にメッセージウインドウに出る文字日本語だったもんね。

 看板とかお店の名前で海外の言葉っぽいのもあるけど、未知の言語って感じはしない。


 そういうわけで転生した私、学校に行く事すらなかったけど読み書きに関しては完璧だったよね。

 おばあさんに一応さらっと教わる形になったけど、でも余裕だったよね。

 エルテはとっても賢いねぇ、って褒められたけど、ちょっと複雑な気分だったわ。いやうん、前世から使ってる文字だもの。何かごめん神童ムーブかましちゃって……って気になったもの。


 とはいえ、おばあさんが持ってた薬草の本とか中にはこれ完全に洋書じゃないですかー! みたいなのもあったから、全ての文字を理解できているとは言い難い。洋書に関してはどういう扱いなんだろう。古代文字?

 それとも単純に他国の文字ですってやつなんだろうか……わからぬ。



 日本語が普通に使えるっていうのはいいんだけど、つまりそれって、異世界文字の中で自分だけがわかるようなメモとして日本語が使えないし、下手な事書いたらそれ見られたら即バレるってこと。

 うーん、いいような、わるいような……

 や、うん。でも、一から新しい文字勉強するよりはマシかな?

 そういう事にしておく。



 そういうわけなのでいつまでもぐだぐだしていても仕方ないしな、と思い立ってお役所に行ってきました。

 お店引継ぎの手続きと、あと税金とかに関して色々と質問してきた。


 お店に関しては大丈夫そうだし、ついでに税金とかも私まだ未成年だからそこら辺もいくつか免除されるらしい。良かった……これで色々差っ引かれて一気に生活ヤバくなるレベルで蓄え消えたらどうしようかと……


 さて、そうなれば後はもうお薬の材料を調達してきて作って売るだけだ。

 そう決まってしまえば、さっきまでぐだぐだ悩んでたのが嘘のようにやるべき事が脳内に浮かんでくる。


 ……うん、まぁ、全部一人でやるわけだからね。張り切って結果潰れたらどうしようもないから、営業に関しては材料調達の都合もあるから不定期になったりしそう。というか、材料採取に行った先で死んだらお店そのまま閉店確定だし。


 気付けばなんとかの錬金術師、みたいな感じでアトリエ……じゃない、お店やる流れになってるけど、大丈夫かなこれ……

 知り合いが知らぬ間にゲームの内容主人公変更してこんな感じにしました、なんて可能性もあるからな……だとしたら私いつの間にか主人公になってるわけだけど。

 いやでも、有り得るぞ……?

 だって自分の生い立ち主人公とかにありがちな何か不幸な生い立ちじゃん。


 モブだと思ってたら主人公でした、とかシャレにならんぞ……もし主人公だったらこの先てんこ盛りで何の試練ですかみたいなイベント目白押しになるじゃないか……!


 今後の私の目標は、細々とお店を経営しつつ、主人公フラグになりそうなものは片っ端からへし折っていく事。


 この世界が知り合いの作ったフリーゲームと同じ、いや、似た世界観であったとして、だとすると何がフラグになるのかもさっぱりだけど、自分が平穏に暮らしていくためには色々なものに警戒するくらいじゃないと軽率に死ぬかもしれないし……!!

 親切な隣人がいつ包丁片手に襲い掛かって来ても慌てず騒がず結界を張るくらいの冷静さを常に持って過ごさねばならないのである……

 考えても見てほしい。


 ゲーム作ったからテストプレイよろ、の一言で始めたゲームが、当初は幼女と動物たちの心温まるほんわかストーリーだったはずなのに、何かバージョンアップと言う名の手直しを繰り返していくうちに動物たちから必死に逃げる幼女ちゃんのホラーゲームになっていた、とかさ、心が折れそうになるよ……?

 彼女に文句言ったら何て返ってきたと思う?


 ムーン●イドが心によぎって、だとよ。

 やめろそんなもの心によぎらせるんじゃない。そのせいで私の心にも色々と食らったじゃないか。


 そして何がアレって、テストプレイ時は彼女の個人サイトの方にもまだゲームとしてあがってない。完成してから一応作品倉庫とかいう所にぶち込む形なわけなんだけど。

 つまり、最初のほのぼのしてる光景を知ってるのは製作者である彼女と、テストプレイでそれを体験してる私だけ。


 他の、広大なネットの海の中から彼女のサイトに辿り着いてしまった奇特な人がそこからゲームをダウンロードして遊んだとして、最初から不穏なゲームだから限られた少数の民たちはそういうものとして受け入れてるんですよ……当初のほのぼのしてるやつとか知らないまま、最初からそういうものとしてるんですよ。

 わかりあえない……誰とも私の気持ち分かり合えない……ッ!


 そんな彼女の思考というか精神面というかを持ち合わせている世界であるなら、いつ唐突に路線変更が起きてもおかしくはないわけで……


 いやもうね、私このウルガモットの街に来てからというものダメ元で教会でお祈りする回数増えたよね。

 せめて、何事もなく平和に過ごせますように……! って何度祈った事か。

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