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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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思わせぶりな白昼夢



 それはとある、ギルドから帰る日の出来事でした。


 徐々に秋が近づいてきているなと思えるようになってきた、そんな時期。

 街の外では魔物たちが活発に活動しているとの報告があり、チラホラと今までよりも討伐依頼が増えていたためか、怪我をして戻ってくるギルダーの人が増えつつある、そんな時でした。

 手伝いでギルドに足を運んでいる身としては、怪我をして戻ってきたギルダーに治癒魔法をかけて怪我を治すという行為に関してはすっかり慣れたものだと思っております。


 そして、その日は戻るのが遅くなったギルダーもいたためか、私の帰宅時間もその分ずれ込みました。



 と、まぁ、何かこれから怖い話が始まりますよ系語り口調でお送りしたわけですけれども。


 そんなある日、私は遭遇してしまったのです。



「お前」


 やや低い女性の声。


「そこのお前」


 大きな声ではないけれど、それでもとてもよく聞こえる声でした。


「相変わらず季節感皆無なお前」


 そして声のした方を見れば、そこにいたのは白ずくめの女性。

 金色の目だけがこちらをじっと見据えている。

 そしているのは建物の陰になってるような、暗い場所。

 昼の間でも薄暗いだろうそこは、日が沈んだ時刻だともっと暗い。

 ましてやそこは街灯の灯りがないときた。

 そこに薄っすら白い人影。


 一体どんなホラーなんです? と言いたくなるような状況だった。


 周囲には他に誰もいなくて、私とその人だけ、というのもなんというか……ホラー成分増量されてる気しかしない。


「季節感、で言われるとそれはそちらにも当てはまるのでは……?」


 前回、メルドーラで遭遇した時はまだ夏真っ盛り、と言える時だったからまだしも、そろそろ秋が近づいてきたなと言える今となれば真っ白衣装はちょっと浮く。

 夏とかだと全身真っ白でもあんまりおかしくは思わないけど、ほぼ秋となると季節感から外れていると思ってもまぁ、仕方ないんじゃなかろうか。


「お黙り」

「あっ、はい」


 とはいえ、ブーメランになりそうなツッコミは彼女に一蹴されてしまった。

 なんというか思った以上の迫力があったので、そこで更にいやでも間違った事は言ってないでしょ~なんて軽い口調で言おうものなら多分大変な目に遭っていたのではなかろうか。そんな気がする。


 というかだ。

 この人前はメルドーラにいたわけだけど、ここウルガモットなんだよね。


 私たちは応援要請受けて馬車で行って帰ってきたわけだけど、この人はどうなんだろう……?

 一応、メルドーラとここを行き来する馬車がないわけじゃないっぽいんだけど、それなりの日数がかかるはず。私たちの場合はそりゃもう全力で馬車かっ飛ばして一日で、みたいな感じだったけど、それやると馬も相当疲れるからね。普通に行商だとか旅行だとかで行くとして、そんな強行軍での移動はするはずもない。


 一応乗合馬車使ってここまで来たとすれば今ここにいてもおかしくはないんだけど……

 なんだろう、この人が馬車を使って移動するっていうのが想像できない。

 それは私の単なる偏見なのかもしれないけど、正直この人旅行者にも見えないし、かといってギルダーみたいに各地を移動していてもおかしくないタイプの人にも見えないんだよね。


 もしかしてメルドーラにいたのが旅行で、ウルガモットで生活してる人、という可能性も考えたけど……何か違う気がする。馴染んでいる感じがしないんだよね。


 そうやって私があれこれ考えていると、白い人はじっと私の目を見つめてきた。


「お前の呪いは相変わらず。それはきっと解ける事はないのだろう」

「……はぁ」


 また呪いの話か。


 本来であれば不安に思うべきなのかもしれない。もっと不安になって、どうしようと悩んで解決策を模索するべきなのかもしれない。

 けど、呪いって一言で言われてもどんな呪いなのかさっぱりだし。

 正直今の所その呪いとやらを実感した覚えもないので、困ってるとは言えない。

 それなのにどうにかして呪いを解こう! とか考えるだろうか?


 人によっては何の呪いかわからないけど呪われてるだけでイヤ、ってなって必死にどうにかする方法を探すとかあるかもしれない。

 でも私別に生活に困ってないし、今の所支障がないからなぁ。


 これが例えば毎日足の小指を箪笥の角もしくはそれに該当するような場所にぶつける呪い、とかだったら解呪しようとしたと思う。毎日地味~に痛い目みるのは流石にイヤだし。

 でも今の所そういう日常生活に支障を感じるような事もないから、呪われてるって言われてもな。

 これは前、メルドーラで言われた時から変わっていない。

 危機感がないと言ってしまえばそれまでの話だ。


 これが例えば呪いのビデオを見てしまって一週間以内に死にます、とかだとそりゃあ解決策を探さねば、みたいな気にはなるだろう。まぁ前世でそんな映画を観た事はあるけど、実際問題我が家にビデオデッキなる物はなかったのでそんな事になるとかなさそうだけど。

 けど、まぁ、とにかくそういった期間内にどうにかしないとマジでヤバい事になる、ってわかってるならまだしも。


 現状そういう感じじゃなさそうだし。

 となれば、別に放置でも構わんのではないか? となってしまっても仕方がないと思うわけだ。


 気持ち的にはあ~そろそろ部屋の掃除しないとな~、だとか、あー、ダイエットしなきゃなー、とか口に出すけど別段すぐさま実行する様子も気配もないやつと同じような感じ。勿論やる時にはやるけれども、必要に駆られない限りは放置、みたいな。


 そんな私の心情に気付いたのかどうなのか、白い人は私に指を突き付けてのたまった。


「近々更なる呪いの力が発現するよ。精々がんばる事さね」

「更なるって言われても……あっ」


 ふふふ、とか含み笑いをしていたかと思いきや、その人はまたもやパッと姿を消したのです。


 今しがたその人がいた場所を軽く調べてみたけれど、何の痕跡も無し。

 軽やかに駆けていったとしても、そんな一瞬で見えなくなるような事、ある? って気がするし、笑ったまま走ると結構力入らないからそんな全速力って出る気がしないし……しかも消えたと同時にその笑い声も聞こえなくなっている。


 一体どういう事なの……?


 あの人が実はとんでもないフィジカルの持ち主だった、と思うにしてもちょっとどうかと思うんだよね……

 あと今回は足下も一応確認したけど幽霊ではなかったし、ついでにヒールのある靴だったからそんな靴で一瞬で私の目の前からいなくなれるだけの速度で走れるとかってのを考えるとちょっと恐ろしいものを感じる。

 だってヒールがある靴で走ると絶対足音するじゃん。カツンカツン鳴るじゃん。場所によってはそりゃもう打楽器ですか? みたいな音出る事もあるわけで。


 でもそんな音もしないままいなくなった、と。



 ……実は私の呪いというのはあの女の人という亡霊が見えている事、とかそういうオチじゃないだろうな。

 なんて考えてしまった。


 正解がわからないうちはそれこそどんな想像だって可能性としては有り、ってなるのが恐ろしいところだ。


 あの人の言葉を素直に信じていいものなのだろうか……?


 だって呪いの力とやらを信じられる要素がない。

 そこに更なる力が、とか言われても……むしろ元凶があの人にある、と言われたら信じてしまいそうだ。


 けれど私はあの人に見覚えはない。

 例えば過去に何かしでかした結果あの人に恨まれるような事をして、だからこそ呪われてるとかであればわからなくもない。

 でも、知らない人だ。


 幼い頃の私の人間関係はとても狭い。今もそこまで広いわけじゃない。

 けれどもあの人に見覚えは全くないのだ。

 メルドーラで出会う以前にどこかで会っている、とか言われても正直記憶にない。


 ウルガモット以外の場所で出会ったと仮定するなら、それこそここに来る前――おばあさんと暮らしてた村か、はたまた両親と住んでいた所か。

 おばあさんと一緒に住んでた村ではあんな人いなかったと断言できる。何せちっぽけな村だった。それこそご近所さんとの距離が近い。あの村の人たちは血は繋がってないけど全員家族みたいなものだ、って言われてもおかしくない程度には距離感が近かった。

 だから私も村の人たちの事は把握していた。

 だから、あの人はあの村にいないと言い切れる。


 じゃあ、両親と暮らしてた故郷?

 いやそっちもどうだろう。前世の記憶を思い出す前でもそこまで人と関わってた覚えがないんだよね。だからこそ、出会った人に関しては何となく覚えてるような気がしなくもない。いやほとんど朧気だけれども。

 けど、だとしたらメルドーラで前にどこかで……? みたいに思ってもおかしくはない。でもそれはなかった。


 という事は私が過去あの人と出会って何かをしでかした説も可能性としては低い。



 一体どんな呪いが発現するというのか……

 下手に思い悩むのも相手の思うつぼではないか、と思うけど、何も考えずに気にしないというのも難しい。

 結果として私は数日、無駄にもやもやと思い悩む事になったのである。

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