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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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とある三人組



 この辺りで盗賊とか山賊とか何かその手の連中とかち合う事は別に珍しい事じゃない。

 いや、珍しいのか……?

 何か私の場合マトハルさんとアジトに使われてそうなとこ見つけたから調査に行くのについてこいとか、そんな感じで駆り出されたりしたのもあって、あー、また盗賊かー、みたいな認識になってるんだけども。

 実の所そんな頻繁に遭遇するものではない……?


 いやでもイベントのたびにウルガモットの見回りしたら何か一杯不審者出てくるし。

 自分の中ではこの世界知り合い作フリゲワールドだから通常エンカウントで出てくる敵なら別に珍しくもないだろ、って気がするのがなんともかんとも。


 ともあれ、私とマトハルさんの前に現れたのは、三人の男だった。



 一人はやや体格ががっしりしている。

 何か真昼間から酒場に入り浸ってそうな駄目人間みを感じるタイプだ。

 酔って暴れて店主に叩きだされてそう。

 そんな印象が強かった。偏見であるのは否定しない。

 けど第一印象なんて大体偏見でできてるものだと思う。偏見以外の要素が含まれるのは第二印象から。異論は認める。


 その後ろからくっついてきたうちの一人はどこかおどおどとした様子の青年だった。

 見た目の年齢的にはマトハルさんたちとそう変わらんのではないかな? 三人の中では見た目一番マトモに見える。というか、もうちょっと小綺麗な服着てそのおどおどしたのをなくせば街の中で見かけても多分何も気にしないというか、されないというか。

 なんでこんなところに? と言われそうな相手であるのは間違いない。


 そして最後の一人。

 多分この人がこの三人の中ではリーダーとかなのかな? っていう感じがする。

 いやまぁ、するってだけで、それだけなんだけど。


 こう、圧倒的強者のオーラとかそういうのはない。


 マトハルさんが警戒しているのは多分盗賊だからだろうってのと、一応数の上では向こうが多いから念の為って感じだと思う。

 場合によってはまたこの近くにアジトとかできてて、そこから他の仲間がやってこないとも限らないからだ。


 とは思うんだけど……え、でもこの人たちホントに盗賊かな? って気がしなくもないんだよね。


 前に見かけた盗賊はさ、ゲームの敵グラフィックそのままってわけじゃなかったけど、それでも多少なりとも武装してたのよ。完全武装ってわけじゃないけど、例えば胸のあたりを覆う皮の軽鎧だとか、ちょっとボロボロだけど盾持ってたりだとか、勿論武器は持ってるのが前提なんだけども。


 でもこの人たちどっちかっていうと武装っていうか……町の中にいて何か物騒な事になったから咄嗟に手近にあった武器だけ掴んで持ってきました、感が凄い。

 パン屋のおっちゃんが麺棒持って飛び出てきた! とかそういうアレに近い。

 むしろその程度の装備で街の外に出て大丈夫か? とすら思えてくる。



「お前らは……」


 やや困惑しながらも、それでも心当たりがあったらしいマトハルさんの声に、リーダーっぽい人がふふふと不敵に笑ってみせた。いやでも正直そこらの市民感が強すぎて無駄に思わせぶりに振舞ってるようにしか見えないんだけれども。


「どうやら貴方は我々の事をご存じのようですね」

「いやそりゃまあ、手配書回ってきたし……」

「ふふふ、手配書。出回っているとなれば、我らの知名度も中々のもののようですね。ふっふっふ」

「……罪状はしょぼすぎるけどな」


 マトハルさんはどこか遠い目をしながらそんな風に呟いた。


 手配書が回ってきたって事はウルガモット以外の所で何か悪い事して、そこで捕まらず逃げたからこうしてその手配書とやらが近隣の町や村なんかに出回ったんだろうけれども。

 なんだ、罪状がしょぼいとかマトハルさんに言われるレベルってなにをどうしたんだ?

 食い逃げか? ひったくりか? 町の建物のあちこちに落書きでもしたとかなのか?

 しょぼい罪状ってどこら辺からがしょぼいのかわからないから、自分の中ではあまり思いつかないんだけど。

 え、何、公園で遊んでるお子様たちが作ってる砂のお山踏みつぶしたとか? 流石にそれで罪にはならないとは思うけど……


「まぁいいでしょう。このまま更に悪名轟かせ世界中を震撼させてやるのです。えぇ、我らがプリーザ盗賊団の名を世界中にね!」


 いや待って。


「さぁまずは手始めにこの者たちから身ぐるみ剥いで街の中に捨ててやるのです。お行きなさい!

 ザーコンさん! ショボリアさん!!」

「色々アウトだ大馬鹿者おおおおおおお!」


「ぐげっ!?」

「ぅおっ!?」

「がはっ……!?」


「どうしたエルテ」

「どーしたもこーしたもないですよ。なんっつー……あ、いえ、ちょっと取り乱しました」



 いやうん、この三人の名前聞いて即座に反応できるのなんて、前世がある私くらいか。そりゃそうだよね。

 いくらなんでも前世でめっちゃ人気漫画、アニメ化もしてるし劇場版もいっぱいある、その他関連グッズもたっぷり、なんて超大作の、その中でも人気上位に入ってそうな悪役、とその部下にこいつらの名前はとても良く似ていた。

 いや、あっちを本家とすればこっちマジでパチモン感凄いんだけど。


 だってあっちは宇宙の地上げ屋みたいな感じだったわけだし。

 こいつら盗賊団って言ってたけど、まぁ規模考えてもあっちのが圧倒的なんだけども。


 咄嗟に結界で殴った結果、ぴくぴくと痙攣して泡吹いたり白目むいて倒れてるあたり、強さもお察し案件。


 というかだ、名前がとてもパチモンくさい。

 海外で偽物作ってそれで金稼ごうとしました、とかにありがちなパチモンにしたってもうちょいマシな名前つけるとか見た目にするとかあるだろうけど、これは無い。

 仮にこいつらがキャラグッズ化されてもまず売れないってわかりきっている。


 いや彼らからすれば知らんがなってなるのもわかるんだけども。

 実際その作品知らない世界のマトハルさんからすれば私が慌てた理由も知るわけがないからこうなってるんだけども。


 とりあえず本家みたいに変身して戦闘力上がったりとかする感じではない本当にごくごく普通の人間である事だけが救いかもしれない。じゃなきゃ戦闘力以前の話の私がどうにかできるわけがないからね。

 まかり間違ってこれで野菜っぽい名前の戦闘民族とか従えてたら危うく私も発狂するところだったぞ。


「手配書が出てるって事はもしかして捕まえたら賞金でるとかそういうアレですかこれ」


 結界で拘束して転がしつつ聞いてみればマトハルさんは「まぁ、そう、だな……」とやけに歯切れの悪い返事だった。

 その反応で大体察する。


 あっ、これ、賞金でてもとんでもなくしょぼい金額だな、と。



 とりあえず薬草まだちょっと足りない感じなのでこの名前を口に出すのは憚られる三名は結界で拘束して転がしたまま、というのは変わらないんだけど、帰りつつ途中途中で薬草も採取して、って感じでのんびりと戻る事にした。


 何か、魔物が遠巻きにこっち眺めてたりするんだけど……もしかしてこの人を拘束して転がして移動させる結界、魔除けの効果が……? とか思っちゃったよね。

 いやまぁ、冷静に考えたら私だってわからないとは言わないけど。


 どう考えてもこんなんで人運搬してたらそりゃ遠巻きにもならぁな。

 わけわかんなくて巻き込まれたくないな、って思う程度の知能があったらそりゃ近寄らない。

 成程、このあたりに出る魔物ってそこそこ賢かったんだな。


 正直とんでもなくどうでもいい気付きを感じつつウルガモットへと戻ったけれど、行きと比べて倍以上の時間が経過していたのだった。



 そんでもっていざ自警団にこの三名を引き渡すと、確かに賞金がもらえはしたんだけど……


「しょっぼ」

「まぁ仕方がない。あいつらは犯罪者としても正直微妙な代物だからな……」

「いやそれにしたってこれ、どう考えてもこどものお小遣いレベルの金額じゃないですか。下手したらお使い行って帰ってきた時におつりをお駄賃としてもらうレベル」

「ちょいちょいやらかしてるが危険度は低い連中だからな」

「なんであの人たち盗賊団名乗っちゃったんです?」

「知るか」

「ですよねぇ」


 マトハルさんに聞けば何かわかるかなって思ったけど、まぁわかるわけないよね。


 例えばフリゲで私の知るシナリオ通りのマトハルさんなら、ここいら一帯の悪党まとめ上げてたようなものだし、そしたらもしかしたらもうちょい詳しい情報を持ってた可能性はあるけど。こう、仲間がなんで悪党になっちゃったのか、とかいう動機くらいは把握してる可能性あるよね。

 でもこのマトハルさん悪党まとめ上げたりしてないし、何よりその悪党捕まえたり退治したりする側なんだよね。それじゃ流石に相手の事情とか知ってるはずもない。知ってたらむしろビックリする。どこ情報? どこ情報それー、ってなる。


 というか、手配書まで出してこいつらお尋ね者です見つけたら捕まえるなり退治しちゃっていいからね、っていう感じで知らせてる割に、この三人マジで褒賞金しょぼすぎるんだけど。

 えっ、これむしろ手配書出す方が損してない? って思えるレベル。


 いやだってさ、紙に人相書きとか、その他の特徴とか書くわけじゃん?

 その労力だけでもそこそこかかるような気がするんだよね。

 特徴だけならすらすらーっと書けるかもしれないけど、似顔絵は描く人きちんとしてないと、似ても似つかぬ代物を描くわけにもいかないわけで。万一その似てない似顔絵が別の人にそっくりです、ってなった場合、冤罪で捕まえられる人が出ないとも限らない。

 というか下手したら冤罪でその場で仕留められる可能性があるからね。怖ッ!


 何かよっぽど似顔絵で似てるだけです、で誤魔化されるわけにいかないタイプの凶悪犯とかは魔法使って写真みたいな感じで手配書に記されたりするらしいんだけど、その魔法を使える相手も限られてるっぽいから全部が全部その方法でやるわけにもいかないらしい。

 で、この三人組はその魔法を使ってまで手配書を、ってとこまではいかない連中だったようだ。


 いやホント、ホント賞金しょぼすぎて私びっくりしちゃったからね!?

 例えば一仕事終えて酒場で一杯やって帰るか、みたいな賞金稼ぎのおっちゃんがいたとして、これしかもらえなかったら酒場で一番安い酒しか頼めないよ!? そのほかに何か一品酒と一緒に、とか思ってもそこからは自腹だよ!? って言えばどれくらいしょぼい金額かお分かりいただけることでしょう。


 どこかのお店で夕飯のおかず一品自分で作るの面倒だし買って帰るか……ってなってもこれじゃぁなぁ……お子様のおやつ買うとかならまだしも……それくらいしか出ないって、むしろなんでそんなのが賞金首扱いになってるんだろう。


 そんな疑問を口にすれば、マトハルさんは「あぁ」と何だかとても疲れた声を出した。


「あいつらな、やる事は確かにしょぼいし犯罪としてはまぁ、正直放置でもいいんじゃないかっていうくらいしょぼい事しかしでかさないんだが」

「そういや遭遇した時身ぐるみ剥いで街に捨てるとか言ってましたね。普通そこは身ぐるみ剥いで殺すかそのままどっかの人身売買組織に売るとかでは?」

「……お前の方があいつらよりは悪党向いてるかもな」

「それは全然嬉しくないですけども」


「ともかく、あいつらのやらかす犯罪は大体がしょぼい。今のところあいつらに殺された奴はいない。なので罪状を重くするわけにもいかないようだぞ。

 あまり重くすると、あいつらよりもやらかした連中が軒並み死罪確定するからな」

「あー、なんでもかんでもバッサバッサ裁きすぎてもそれはそれで……」


 犯罪者は罪状関わらずみーんな死刑、ってなったらどうせ死ぬならと悪逆の限りを尽くしかねない。それこそ、やむを得ず犯罪行為に手を染めてしまった、なんて人もどうせ捕まったら殺されるならとことんまでやらかそうとか考えてもおかしくはない。


 例えば店の商品をこっそり盗んだ、とかいう犯罪者がどうせ捕まるなら、と開き直って店の人間を皆殺しにしかねない。ただ盗むだけなら罰金刑だとか、自警団のところでしっかり説教のち、奉仕活動などで罪を償うだとかで盗んだ商品分の補填をするだとからしいんだけど、どうせ捕まったらその時点で死ぬの確定ってなったらそりゃあ最初から店の人間殺した方が手っ取り早いもんな。

 目撃者になりそうなの片っ端から殺していけば、犯罪が露呈するまでの時間稼ぎになるかもしれないし。


 もちろん派手にやりすぎてすぐさま、って可能性もあるけれども。

 でも、目撃者も追手も全部ぶち殺す事が可能なら。

 逃げ切れるかもしれない可能性が出てくるわけだ。


 どんだけ修羅の国になっちゃうんだろうね、そんなんなったら。

 むしろ犯罪やったもん勝ちになってしまう。


 法治国家がそれでいいわけないし、まだそこまで法整備が整ってないような国だとかがあったとしても、流石にそこまで物騒すぎるとかはないよね……?

 いっそ善悪の価値観が逆転でもしていないと無理では……? という気がしてくる。


 こう、そこに住んでる奴全員犯罪者、とかそういうとこなら有りなのか……? とか思わなくもないんだけど。


 ともあれ、あの三人がやらかした犯罪は些細な事と言っていいレベルで、だからこそ賞金もしょぼいってのは理解した。

 しょぼいから野放しにしても良さそうなものだけど、でも野放しにした事で無罪放免だとあいつらが勘違いするのも困る、といったところかな?


 ゲームで言うところのめっちゃエンカウントする敵なんだけど、経験値も得られるお金もほとんどないし、ましてやドロップアイテムもロクなのない、とかいうタイプの敵みたいな奴かもしれない。

 もしくは終盤に突入した時点での故郷周辺の雑魚敵。

 言ってしまえば旨味がない。


 賞金首だからうっかり殺したところで文句は出ないんだろうけど、でもほとんどちょい悪一般市民レベルだから、殺すのも逆に……ってところかな。ほぼ一般市民みたいな認識の相手殺すとなると流石に寝覚めが悪くなりそう。寝覚めが悪いだけで済めばいいけど、人によってはそこで悪党以外の人間を殺す事を躊躇わなくなって歯止めがきかなくなるとかいう超絶物騒な何かに進化する可能性もあるわけで。


 うーん、考えれば考えるだけ扱いが、面倒くさい……!


「あと、あいつらの賞金がとんでもなく低くて最低限なのは……あいつら、逃げるのだけは得意らしいんだ」

「逃げるのだけ、って……?」

「他の所でも散々倒されて牢屋にぶち込まれたりしたらしいんだが、何でかするっと逃げ出してる」

「…………つまり、何度捕まえても最終的に逃げられるから、賞金をそこそこの金額にしちゃうと延々おかわりが可能になる、と」

「そうだな。否定できない」

 賞金払った直後に逃げられてまた別の奴に捕まって、をエンドレスで繰り返そうものなら賞金出すのだって限度があるだろうし、そりゃしょぼい金額にされますわ。


 うん……何か、納得したくはないけど納得した、っていうとても微妙な気持ちに……


 いやでも牢屋でしょ? そんなすぐ脱出とかある?


 なんて思っていたら。



 まさにマトハルさんの言葉通り、あの名前を口に出して大丈夫か? 本当に? と疑心暗鬼に陥りそうな三人組は、数日後にしれっと脱出したらしい。

 ウルガモットの街中では見かけなかったみたいで、一応周辺を捜索したけど……見つからなかったらしい。

 でも生きてるなら、またどこかでひょっこりやらかす可能性もある、と。



 ……いや、あの牢屋何事もなく脱出できる腕前をお持ちなら鍵のかかった巨大金庫とかそういう所狙って怪盗まがいの事とかできるんじゃないかなって思ったけれども。

 まぁこれは本人たちに遭遇しても言わない方がいいだろう。


 あえてやらないならともかく、もし彼らが気付いていないだけだとしたら。

 いらん知恵を与えてしまうからね。流石にそれは私もマズいと理解している。

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