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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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力業解呪



「――おい、大丈夫か……?」


 海から出てきた私たちにそう声をかけたのは、カイルさんだった。


 大変だった。


 マジで今回はヤバかった。



 船の中で魅魔の宝石とかいうのがくっついた首飾りを回収しようとしたじゃないですか。割とついさっきの話なんだけど。

 直接近づくのは何か気が引けたし、結界使って遠隔操作で首飾りを外そうと試みたわけなんだけど。


 直後聞こえてきた声。


「……イ……ワタサナイ……コレハワタシノヨオオオオオオ!!」


 って叫びが聞こえたかと思いきやドレスを着た白骨死体がいきなり動き出したよね。


「うわあああああ!?」


 いや、想像してなかったわけじゃないんだ。あるよねそういう、ほら、ゲームとかでもそんな展開。だからね、全く想像していなかったわけじゃないんだけど、まさかホントにそうなるとは思ってなくて。


 なんか目があっただろう部分にいきなり赤い光が灯って見えないはずの結界を手で防ごうとしてるのを見てちょっとビックリした結果。


「あ」


 ボキン、と貴婦人らしきご遺体の首をですね、へし折ってしまいまして。


 そっと、そーっと外そうとしてたのにいきなりそのご遺体が動かれたらそりゃあ手元も狂うってものです。そして折れてしまった首はそのままコロンと床に転がった。


 生きてる時なら精々外そうとして急に動かれた場合髪にチェーンが引っかかるとかいう事になったかもしれないけど、相手は白骨死体。肉通り越して骨オンリー。そしてこっちは手で直接ではなく結界でやろうとしてたので、急な展開に思わず制御をミスりかけて勢い余った結果、完全にポッキリさせちゃったよね……


 いや、手間が省けたとか流石に思えないよ。

 首から上が取れた事でそのまま首飾り上に引き抜けばするんと取れる状態になったとはいえ、これで良しとか言えないよ流石に……


 船室の床に転がった首はというと、

「ウラメシイ……ウラメシイ……ワタスモノデスカ……」

 なんてぶつぶつ言ってるし。

 更に首飾りを回収したらそれを取り返そうと身体の方が腕を伸ばしてきたではありませんか。


 海の中だからカタカタと骨が震えるような音は聞こえなかったけれど、多分普通に陸地だったらしてたんだろうなぁ。


 魔物化か怨霊と化したかどっちかはわからないけれど、ともあれこのまま放置はよくないという事でルーウェンさんに言われて結界でバンッ! と押しつぶして仕留めたけれども。


 いやうん、水の中だから、炎で焼き払うってのできないからね。


 首飾りは結界で包んでそのままルーウェンさんにそっちの移動もお任せした。


 あの人の首飾りへの未練がああさせたのか、それともこの石による力なのかはわからないけど、まぁ放置は危険だとハッキリしたのでさっさと回収して陸に持ってって然るべき処置をしないといけない。

 私は結界と治癒魔法くらいしか使えないから浄化とかそういうのはあんまり……って感じだけど、もしメルドーラの町にそういうのができる人がいないようならあの首飾りはウルガモットまで回収しないといけないようだ。


 えっ、道中魔物とかおびき寄せられたりしない?


 ゲームにもたまにあるよね、何か呪われてる装備品。持ってるだけならともかくいざ装備したら途端にエンカウント率上昇とかそういう感じのやつ。この首飾りそういうやつでしょ?


 ともあれさっさとこの船から出て戻る事にした。


 サハギンたちが集まってた原因と思しきアイテムがあるし、船が沈んでる事も発覚したし、さっさと戻って知らせないといけないわけだ。



 ところがいざ首飾りと一緒に船の外に出てみれば、さっきは影も形もいなかったでしょ、って言いたくなるような大きな影が。


 人なんてあっさり一飲みできてしまいそうな巨大なそれは、たった一匹とはいえ海竜だった。これも魅魔の首飾りのせいなんです?


 明らかにこっちに狙いを定めてるっぽいし、穏便に海上に行けそうになかったのでここで一戦始める事になったわけです。

 って言っても、私とルーウェンさんだけで海竜に挑めとか一体どんなイベントだよ。これゲームだったら多分まだ序盤でしょ? 負けイベントだと思う感じのやつじゃん!? えっ、でもこれホントに負けイベント? 負けイベントだと思って負けたらゲームオーバーってパターンもあるから油断できない。あと、いくら知り合いの作ったフリゲと世界観が同じっぽいとはいえ、ここは現実。リセットもロードもできないので負けイベだろ、で負けてみるわけにもいかない。


 不意打ちとばかりに結界で鼻っ柱ぶん殴ってその隙にルーウェンさんは来た時はもうちょい慎重に操作してたけど、今はそれどころじゃないって事で一気に風の魔法で下から私たちの結界を巻き上げた。


 まだそこまで深い場所じゃなかったからいいけど、これ下手に深海とかだったら水圧で酷い事になってたんじゃないかな。


 首飾りと一緒に一気に海上まで上昇して、勢い余って海の上、ちょっと空中、って感じでそれはもう凄い勢いで地上に帰ってきたわけだ。

 空中に結界ごととはいえ放り出された直後に更に風の魔法で砂浜の方に飛ばされて、安全バーも何もないジェットコースターみたいな体験だったよ……

 そうして砂浜に投げ出された私たちに最初に声をかけたのが、カイルさんというわけだ。


 ね? マジでヤバかったでしょう?


 いやそこまで危険な目に遭ってないやん、って突っ込みそうな人は多分いないと信じたい。

 考えてもみてくれ。そもそも結界で海水防いでるとはいえ自由自在に動けるわけじゃない場所で、そこがホームグラウンドです、みたいな魔物と遭遇したんだから充分危険だったわけだ。ぱくんと丸呑みされるのもマズいけどうっかり結界に体当たりでもされたらきっと勢いよく流されてったに違いない。

 しかも地上ならぽーんと跳ね飛ばされてもそのうち地面に落下して終わると思うけど、海の中は下手したらどこまでも流れていって最終的に海底が終着点かといえばそうでもない。


 戻れそうな見込みのある海底ならいいけど、世界一の深さを誇る海溝とかうっかり存在してそこに落っこちてったらとか考えたら。


 恐怖以外のなにものでもないのでは?


 地上なら重力に引かれて最終的に地面に辿り着けば終わるけど、海の底だと下手したらマジで底が見えない、とかいうところもあるからね??


 もしうっかりそんな想像通りの展開になってたら途中でその恐怖に耐えきれなくなっててもおかしくなかった。ルーウェンさんがいたから移動に関してはどうにかなると思ってたしだからこそまだ諦めたりしてなかったけど、たった一人だったなら。

 まぁどっかで諦めて結界解除して一気に水圧でセルフでトドメを刺すか、その場で溺死の二択だよね。

 海上へ向けて結界積み重ねていくにしても、途中で流されてったらまたゆっくり落下コースになりそうだし。


 ……今なんかアクションゲームで画面の下に落っこちたらゲームオーバー、みたいなやつ思い出したんだけど。かろうじて少し浮くくらいはできるキャラだけど、ゆっくり下降してくだけで飛べるわけじゃないキャラでうっかり落下してどうにか死ぬのを回避しようと延々ボタン連打するけど徐々に落ちてくとかいうあの状況……

 もうどう足掻いてもアウトなのはわかってるけどそれでも無駄に足掻くあの無駄な努力感……


 うーん、もしそんな展開になってたらゲームですら無駄に足掻くんだもの。現実ならもっと足掻いて結局無駄に終わって絶望してからの人生終了コースか……

 ホントそうならなくて良かった。


 結界で海水防げるとは思ってたわけだけど、それもあるから一応海の中確認してくるとか言ったけど、正直舐めてた。もう同じことやれって言われても次は絶対やりたくない。もっと安全ってわかってるところでインストラクターが見守る中スキューバダイビングとかならまだギリできるかもだけど、この世界の海に魔物がいる限り正直無理だろうな。


 戦闘員がもっと他にいてもうちょい自分の安全が確定してそうならワンチャン……? いや、どうだろ。どうしてもそうするしかない、ってなったら腹くくるけどそうじゃなかったらやっぱヤだわ。


 とか私が正直もうこういうのやりたくないなぁ、とか思ってげっそりしている間にカイルさんたちにはルーウェンさんから説明されてた。優秀すぎんかルーウェンさん。


 流石にあの洞窟があったあたりに船が沈んでいるという話はメルドーラの人たちも知らなかったらしく驚いていた。でもシュミット家って言われてもピンときてなかったな。

 やっぱある程度詳しいのはルーウェンさんが貴族だからだろうか。そもそも自分が住んでるところの地主だとか、領主だとかならまだ名前くらい把握してるだろうけど、遠くの街とかだと知らなくても……という気がする。


 説明ついでに結界に包まれたままの魅魔の首飾りを示せば、いかにも呪われてます、みたいな禍々しいオーラが目に見えるレベルで漂ってるそれを見てその場にいた全員がドン引きしていた。

 あれが恐らく魔物をおびき寄せていた、とか言われたらそりゃあね、そうなるよね。



「それで、あのアイテムの浄化をするしかないわけだが……この町に浄化師はいたか?」

「いや、生憎メルドーラにはいないな。以前は腕のいい魔法使いがいたんだが……」


 ルーウェンさんの問いに自警団のサブリーダーが首を振る。


「という事はこれはこちらが……」

「そうだな。流石にこれをそのままここに置いておくのはちょっと……」


 げんなりした表情のルーウェンさんに、サブリーダーも何だか申し訳なさそうに眉を下げた。


 まぁ、このままここに置いといても、ねぇ……?

 海の底にあったから今までは海の方から魔物がやってきたっぽいけど、陸に置いたら今度はこの辺一帯から魔物が吸い寄せられるようにやってくるんじゃなかろうか。


「……しかしあれをウルガモットに持ち帰って浄化師に頼むにしてもなぁ……」


 難色を示したのはカイルさんだ。

 まぁ、確かにあんないかにも呪われてますよ、みたいな品を持って帰るのはどうかと思うんだろう。私だってどうかと思う。今は結界に包んであるから直接触る事はないけど、あれ絶対普通に触ってたら何かにとり憑かれたみたいになるんじゃないの? それこそあの船にいた首飾りしてた白骨死体みたいに。


 直接触る事は結界があるから無いにしても、道中絶対魔物とのエンカウント率上がりそうだもんなぁ。一応帰りも馬車だけど、それにしたってちょくちょく魔物と遭遇してたら馬にいらん負担かかりそう。


「えぇと……破壊しちゃうのは駄目なんですか?」


 私が聞けばルーウェンさんはどうだろうな、と渋い顔をした。


「魅魔の宝石は普通の宝石と違いどちらかといえば魔石と呼ぶべき代物だ。生半可な力で壊せるかとなれば難しいし、ましてや壊せたとして内側に貯めこまれていた魔力が一気に解放されれば周辺に危険が及ぶ」


 あ、壊すのは別に問題ないんだ。

 てっきり何か文化遺産みたいな感じの凄い宝石かと思ってたけどそうではないのね。

 いやどっちかっていうと呪われてるっぽいし前世でいうならあれか? ホープダイヤみたいなものかな? って思ったけども。


「壊していいならとりあえず……まだ火精霊イフリートの息吹があるのでそれでどうにかなりませんかね?」


 こう、結界に包まれてる状態の火精霊イフリートの息吹と同じく結界に包まれてる魅魔の首飾りを更に別の結界で包んで、それから内側の結界を解除すれば火精霊イフリートの息吹が今までの衝撃を一気に発揮してドカン、至近距離にある魅魔の首飾りもその衝撃でドカン、結界の中でやればとりあえず魅魔の宝石に込められてるらしき魔力が、とかどうにかなるんじゃなかろうか。


 そう提案すればルーウェンさんはぽかんとした表情を浮かべたが、それも一瞬だった。


「採用」


 あっさりとそう言われて、再び火精霊イフリートの息吹を使用する事になったのである。

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