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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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呪われた石



 沈没船の中に入ってみれば、ルーウェンさんが魔法で出した光の玉が照らす事で思ってたよりは明るかった。暗い海の中だと光の玉周辺がぼんやり輝いてるなー、程度だったんだけど、船の中という逆に狭い場所なので光の玉の放つ輝きは壁だの床だの天井だのといった部分に反射してどこまでも続いてそうな海の中よりかはマシ、という程度ではあったけれども。


 小さな小魚の群れが凄い勢いで泳ぎ去っていくのが見えた。


 よくよく見れば船に小さな穴とかも開いてるけど、それでも隠れ住むというのには打ってつけだ。さっきの小魚も恐らくそういうやつだったんだろう。


「それでその……シュミット家、でしたっけ? その船がどうして?」


 正直名前が出ても自分にはピンとこない。そもそも貴族のあれこれを知ってるはずがないし、私の情報網はご近所さんからが大半だ。庶民が話題に出さないようなものなら知るはずがない。

 そしてウルガモットのご近所さんから聞く話は大体ウルガモットとその近くで起きた話くらいだ。メルドーラ近辺の話なんてのは今まで一度も出た記憶がない。

 今回だってギルド長から話を持ち掛けられたけど、そうじゃなかったら多分私は一生――とまではいかなくても――メルドーラの事など知らないままだったと思う。


 ルーウェンさんはしばし船の中を見回してゆっくりと移動させるべく魔法を使っていたが、周囲にいるのが魚くらいだと判断するとようやく私の質問に答えてくれるつもりになったようだ。


「シュミット家はカモミルドの街で一番大きな力を持つ貴族だった」

「カモミルド?」

「ウルガモットからは大分離れている。そうだな……馬を使えば一月以内には辿り着けるはずだ。徒歩で行くなら何事もなければ一月半、そうでなくても二月で行けるはず」

「遠いんですね」


 馬使って一か月、徒歩で道中何にもなければそれでも一か月半、道中魔物だとか盗賊だとかに襲われたりして途中で補給と休憩をしながらとなるともっとかかるのか……そんだけかかるなら気軽にちょっと行ってみよ、とはならないなぁ。

 メルドーラはまぁどうにか帰れる距離だなって思うからまだしもだけど、そんな話聞いてちょっと行ってみたい! とは流石に。

 どんなとこなのかなー? くらいには気になるけれども。


「ウルガモットと違って色々な施設があるという話だな。カジノが有名なところだ」

「へぇ」


 ちょっと気になってたけどカジノと聞いて割とどうでもよくなってしまった。

 いやだって、カジノでしょ?

 ポーカーとかスロットとかがあるカジノでしょ?


 正直勝てる気しないもの。

 カジノで一攫千金とかそういう夢も別に見ないし。


 ゲームだと大体事前にセーブしてコイン全賭けして負けたらロードしなおせばいいとかいうやつ。景品とかが思ったよりいいアイテムあるけど、絶対必要ってわけでもない、みたいな感じのアレか……って思うとそこまで食いつけないよね。


「とはいえ、力を持つといっても最終的に家は没落、シュミット家の人間は皆あの街から忽然と行方をくらましたという話だったが……」

「もしかして夜逃げ同然で船に乗って逃げて新天地へ、とかの途中で嵐に見舞われて船が転覆、とかそういうオチなんですかね……」

「やけに具体的だな……いやまぁ、恐らくはそうなのではないか、と思うのだが」


 船の中にある物を見る限り、大量の客が乗っていた、という感じはしない。

 いや、途中で流れていった可能性もあるけど、それでもだ。


 客室と思しき場所を確認して見れば、あまり使われていなかったのではないか……? という思いしかしない。

 元々部屋に備え付けてあった物以外の物で目を惹くようなものは特になかった。


 そうしてルーウェンさんが進路を決めるまま見て行った先で。


「これは……」


 何とも言えない様子で呟いたルーウェンさんと私の目の前にあったものは。

 多分ここが船長室ね、と思える室内で、死んで白骨化した女の死体だった。


 他にも途中で船の中で死んでしまっただろう人たちはいるにはいた。肉に関しては多分魚にでも突かれたのだろう。残っていたのは骨と、あとは当時着ていただろう服。船の中とはいえ開いた穴から流れてくる海水で大体端の方に追いやられるようになっていた。

 乗ってた人数よりも見つけた人数は多分少ないんじゃないかな、と思うけど多分船が沈む時に外に投げ出されたとかそういうやつだと思うのでそこは別にいい。


「えぇと……なんですアレ」


 船長室っぽいのに船長らしき人物の死体があった事ではなく、むしろ気になったのは。


 ボロボロになりつつあったがそれでもドレスを着ているのだとわかる女性の首から下げられていたネックレスだ。目で見てわかるレベルで何か禍々しい雰囲気漂ってるんだよね。


 ゲームだけじゃない。アニメだとかでも多分黒とか紫系統の何か禍々しいオーラみたいなのがブワッと出てるような表現されてそう、ってくらい黒い何かが漂ってるんですけど。

 あれだ。呪いの品とか言われたら一発で理解できるやつ。むしろこれで呪われてないって言われたら嘘でしょ!? って言う自信しかない。


「まさか……アレは」

「ご存じなんですかルーウェンさん」

「確か、シュミット家の家宝となっていた魅魔の首飾りだったかと。いやだがしかし……」


 魅魔、とは?

 なんて思ったけれど、まぁ適当に想像する事にする。

 言うて言葉から何か悪魔の力が宿ってるとか、逆に魔を魅了するとかのどっちかでしょ。知らんけど。


「でもあれどう見ても呪われてませんか? あんなん家宝とか大丈夫です?」

「大丈夫じゃなかったからこうなったんだろう」

「あ、あぁー、そういう」


 でしょうね、って納得がいったわ。

 多分あの首飾り、別に先祖代々伝わってるとかそういうやつではなくて、比較的新しい時期に家宝にしようとかそういう感じのやつだったんだろう。多分。


 ルーウェンさんが魔法で出した光の玉に照らされてハッキリ見えるけど、深い青い色をした石、けど見る角度を少し変えると別の色が混じっているようにも見える。

 水の中だから見える色も限られてる感じするけど、これ日の光の下で見たらもっと色んな色がキラキラしているんじゃないだろうか。

 それでいてあの大きさ、って考えるとまぁ、確実にお高いやつでしょうね。あの禍々しいオーラみたいなのがなければ、って注釈がつきそうだけど。


 けどルーウェンさんの言い方からして、普通に考えて呪われた石を家宝にしようなんて考える酔狂な奴はいないはずだ。多分、あの石を手に入れた当初はあそこまで禍々しいのは見えなかったんじゃないだろうか。

 でも時間経過とともに徐々に呪いの力が強く……とかそんな感じなんじゃないかな。


 多分、呪われた石だと思わないままシュミット家はそれを家宝にしちゃって、徐々に落ちぶれてった可能性はある。で、いよいよ家財を売り払ったりして夜逃げ同然で別の土地に行くような事になったんだろう。でも家宝にしているあの首飾りだけは売るつもりがなかったか、はたまた売るにしても売るタイミング・場所を見計らってたんだと思う。

 けれど呪いの力はとうとうその所有者たちに牙をむいて……ってところかなぁ……完全に想像だけど。


「もしかして」

「あぁ、恐らくそうだろうな。あの呪いの力によって魔物がおびき寄せられていた可能性は高い」

「やっぱりですか」


 とりあえずこの船のサルベージをするべきなのか、それともあの首飾りだけ先に回収してあの呪いの力をどうにかするべきなのか……ルーウェンさんに問いかければ、サルベージは難しいだろうとのお返事。


 まぁ、船一つ引き上げるにしても、魔物に警戒して更には危険な魚類とかにも注意して、ってなりつつやるとなるとそう簡単にいかないよね。最初から危険な海域だってわかってるところならまだしも……


「サハギンたちも恐らくあの宝石の力に引き寄せられた可能性が高い。船の至る所……とまではいかなかったが、それっぽい形跡はあった」

「そうなんですか?」

 私全然気づかなかった。そう言えばルーウェンさんは船の所々に武器で傷つけられたような跡があったと言う。例えば大きな魚が通った時だとかについた傷ではなく、明らかに武器だとわかるものなのだが、しかし船内で争ったような形跡ではないらしい。

 サハギンたちが船の中を移動した時に進路を変える時に杖のように武器をそこらに突き刺したのか、たまたまぶつけたかまではわからないが、サハギンたちがここにいたのは間違いないのだとか。


 とはいえ、昨日いたサハギン全部がこの船の中にいたわけでもないだろう。流石にあの数がこの船に入りきるとは思えない。


「あの宝石をこのままずっとここに置いておけば、サハギン以外の魔物も近々おびき寄せられかねないし、そうなればメルドーラの町近辺の海は危険度が上がりすぎて漁にも出られなくなりそうだな……」

「えっ、つまりウルガモットに届けられるお魚も減る……って事ですか? それは困る」

「……いや、そういう認識なのか。いやいい。そうだな、お前は平民だったな。うん」


 えっ、何か今めっちゃ呆れられた? いや確かに町の危機とか安全性がどうこうとかありますけれども、個人的には食の心配のが強いだけです。メルドーラの町に自分が住んでたら話は変わってたと思うけども。


 貴族的な目線で見ると多分ここで暮らす人たちの安全とかそっち方面に注意がいくんだろうなとは思うけれども。しかし考えてもみてほしい。私は庶民なので、そういう目線で下手な発言をしてみろ。

 ルーウェンさんはディットさん程こっちに魔法の話とか振ってこないけど、下手に貴族の養子に入れても問題なさそう、とか思われたらどうなるかわからない。今はルーウェンさんがそういうの考えてないからまだしも、下手に乗り気になってみろ。その場合ディットさんと合わさって面倒な事にしかなりそうにない。


「えーっと、直接回収しちゃって大丈夫ですかね、アレ」

「下手に触れない方がいいとは思う。あの手のアイテムは下手に所有者だと認めるような事になれば厄介極まりない」

「となると……」

「そうだな、結界で回収してほしい」


 私の結界便利すぎんか?


 いや、直接回収するのでも大丈夫とか言われても正直やりたくないけど。だってそうなると、あの白骨死体に近づいて直接首飾りを回収しないといけないわけでしょ?

 なんていうか……故人の品なわけだ。知ってる人物ならいざ知らず、見知らぬ人。すごく……墓荒らししてる感がある……


 墓、まぁそういう意味で考えるとこの船、シュミット家のお墓みたいなものなのかも……


 とりあえずあの首飾りを回収しない事にはその後で改めて船を引き上げるにしても無理だと言われてしまえばやるしかない。


 うぅん……ちょっと緊張するなぁ。普段みたいに遠慮なく結界でぶん殴るノリでやるわけにもいかない。流石に自分に何かをしたわけでもない故人を乱雑に扱うのはちょっと……


 既に死んでるとはいえ、だからって雑に扱うのは気がとても引けるので私は普段あまり発揮しない慎重さでもって結界を作る。首飾りをまずはあの人から外さないといけない。思った以上に集中力が必須だった。

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