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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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意味深な場所



 というわけで翌日。

 昨日は疲れて皆さっさと寝てたから朝から元気いっぱいです。


 メルドーラの自警団の人から詳しい説明を聞いて、とりあえずどういう感じで見回るか、とか魔物がよく出る付近の調査とかをするべくそれぞれ数名ごとにグループに分かれる事になった。

 魔物が出るのは夜の方が多いとの事なんだけど、昼でも出る時は出るらしい。


 ほーん、成程ね……昨日の時点で、え、これから夜になるのに私たち寝ちゃってていいのか? とか思ってたけど夜限定じゃなく昼も出るならそりゃまぁ人手は欲しくもなるって事ね。

 メルドーラの自警団、とはいえ、ウルガモットと違ってこっちは町の有志の皆さんでやってる本当に言葉通りの自警団。見回りパトロールが精一杯、みたいな部分がある。


 全く戦えないわけではないみたいだけど、人数も少ないので下手に深追いして怪我したりして人員が減ったらそのままどんどん崩壊の一途を辿る感じ。人が足りなくなったらいざという時に困るから無理はできない、といったところだろうか。


 で、私は回復要員だから誰と組むとかもなく拠点っぽいところで待機かなとか思ってたんだけど。


 カイルさんとルーウェンさんと組む事になった。


 ってか、ルーウェンさんいたの……!? ってなったよね。

 いや私が乗ってた馬車にはいなかったからさ。

 一応馬車は二台借りて出発したとはいえ、そっちにいたのね……ディットさんも来てるんだろうかと思って確認してみたけどディットさんはいないらしい。


 うん、まぁ、いたらいたでメルドーラの女性の視線釘付けになってただろうし、そうなるとこの町の男女関係に罅とかザクザク入ってたかもしれないし、いないのは良かったのかもしれない。


 砂浜とか近くにある海と繋がってる洞窟とかを重点に見回るらしい。

 ついでに素材があれば採取していいって言われた。

 いや、有難いけど、でも、保存できるやつじゃないと無理では……?


 海藻とか一部薬の材料になるやつは確かにあるんだけど、でもそれ採ったとして濡れたままの状態だとぬるぬるするし、そのまま放置したらにおいも酷くなったりするんだよね。だから基本的に乾燥させないといけないわけなんだけど……乾燥に関しては魔法があるからどうにかなる。けど、その乾燥をなるべく早めに終わらせないといけないんだよね。見回りしつつ魔法で乾燥させつつ、となると中々に慌ただしく感じてしまう。


 魔法を使わない場合はそれこそ昆布みたいに天日干しするんだけど、正直こっちの方が薬効高いんだよね。やはりお日様の力は偉大という事なんだろうか。まぁそこら辺は薬作る時に魔力込めれば全然問題なく薬効高いお薬できるからあまり気にしなくてもいいんだけどさ、私の場合は。


 とはいえ、お薬の材料にもなる海藻は、結構な大きさだったりするので魔法で乾燥させた後はある程度の大きさに切り分けたりしないといけないしで、ちょっと手間がかかるんだよね。


 時間に余裕がある見回りならまだいいけど、これ例えば途中で魔物を発見しましたってなったらそっち優先しないとだしな……うーん、中途半端なところで海藻放り出すと場合によっては傷んでしまって使い物にならない、なんて事もあり得るし……


 海藻以外の材料になりそうなのを採るにしても……うまく見つかるかな。

 そもそもが私にとってあまり縁のない素材だったから、パッと見てすぐにわかるかどうか自信がない。

 一応お婆さんが持ってた素材関連の図鑑とか見たりはしたけど、精巧な写真が載ってるでもなかったから物によっては似てるけど別物、なんてものを採っちゃう可能性もあるわけだ。


 まぁ、メインはあくまでも魔物退治。素材採取はもののついで、という事でまずは魔物退治に専念しようじゃないか。


 ここに滞在する日数はそう長い間ではないので、なるべく早めに決着をつけなければならない。

 いくら拠点とか宿がわりに建物を提供してくれているとはいっても、こっちだって生活するのに毎日微々たるものとはいえお金はかかるわけだし。

 食事だってある程度振舞われたりはするみたいだけど、それで足りなかったら後は自費で他のお店で食べたり飲んだりしてね、って話だったし。


 個人的にこっちの食堂とかやっぱりお魚メインなのかなーと思わなくもないから一度くらいは食べておきたいとは思う。遠出した時にそこの地元料理とか名物料理とか一度は食べておきたいところ。


 さてそんなわけで私たちはまずメルドーラの町と繋がっている砂浜から出発して東側へ移動する事となった。

 西側は別のギルダーの皆さんが既に向かっているし、それ以外のグループの人たちも海辺周辺から町の周辺を見回るらしい。基本的に海からやってくる魔物を退治する事がメインとはいえ、それ以外の魔物もここ最近ちらほらと見かけるらしくて、そっちの退治もある程度請け負ったっぽい。


 とはいえ危険度はそう高いものでもなさそうなので、恐らくは大丈夫だろう。もし怪我をしたとしても大怪我する前に撤退して私が戻って来てから治癒魔法をかければどうにかなると思われてる感じか?

 まぁ、死んでなきゃ治せるけども。


 ちなみに昨日までめっちゃ頑張ってたこの町の自警団の人は私たちが応援に来た事でようやくある程度休めるとなったので、今のうちに英気を養ってもらう事になっている。


 昼もだけど夜も見回り、一応順番を決めて、って感じでやってたみたいだけど軽く話を聞いたら深夜の飲食店をバイト一人でワンオペさせてる並みのヤバさを感じたよね。

 魔物と遭遇しなければそこまで問題はないけど、いざ魔物と遭遇して戦う事になったら結構きつい状況。そんな中で下手に怪我したらマジで一人一人の負担が半端なくなってく感じのやつ。


 ……まぁ、やらなきゃ町の平和が、ってなっちゃうんでやらないっていう選択肢は元よりないんだろうけど。


 あまりにも酷い状況ならいっそこの町を捨てて……ってなったのかもしれないけど、まだかろうじて解決できそうってなってるから踏みとどまってるってのもあるんだろうね。

 あと、仮に町を捨ててこの町の人たち全員が別の所に移り住みますってなった場合、この町周辺を新たに縄張りにした魔物がさらに勢力拡大させてウルガモット方面に……なんて可能性もあるわけで。

 そうなっちゃうと他人事じゃなくなるから、そりゃ応援要請も無視できないよなぁ。


 なんて事を考えながら移動しているうちに、結構な距離を移動して海と繋がってる洞窟とやらに到着した。

 一応足場はあるみたいだし、そのまま中に入る。

 鍾乳洞とかある洞窟みたいなところと似てるな、ってのが感想だ。前世の記憶で近い感じの、ってつくけど。


 海から普通にやってくる魔物もいるらしいけど、ここに逃げ込むようにしていった魔物もいるって話だったから中で遭遇する可能性は高い。

 陽射しの差し込まない暗い中を、ルーウェンさんが魔法で出した灯りを先導させて進んでいく。ランタンとか用意してなかったから、灯りがなかったら足下結構危険だったな……


 入ってすぐのところはまだ砂地もあったけど、進んでいくうちにゴツゴツとした岩場が混じるようになってきた。こんなところでうっかり転んだら結構なダメージだろうな。


 足場もいいとは言えないし、薄暗いしでメルドーラの自警団の人たちがここを調べるにしても、中々に大変そう。一応この洞窟の入口近くに町の人たちが近づかないように注意書きされた看板はあったけど、それだけだ。

 立ち入り禁止にするべく何かこう、杭とか打ち込んでロープ巻いて物理的に入れないようにするとかそういうのはやらなかったのか、って思うんだけど、多分やっても意味がなかったんだろう。

 洞窟の中から魔物が出てきても、その程度じゃ抑止力にもなりゃしないだろうし私がその魔物ならなんだこれ邪魔、って感じで壊すだろうしね。

 多分最初の何回かはそうやってたんだと思う。で、壊されたりもしたからここからも魔物が来ているってなったんだろう。


 ここからも魔物が来ているってわかってるならなおさらこの中を調べろよって話だろうけど、魔物の実力がどの程度かもわからないまま自警団の人たちが適当な人数で入ったとして。

 下手したら海の中に引きずり込まれて溺死パターンだろうな。

 そういう危険性を感じたからこそこの中を本格的に調査するんじゃなくて出てきた奴を追い払うってなったんじゃなかろうか。



 特に会話もないままに進んでいって、足場が何だか濡れてる部分が多くなってきたなーと思ったあたりでたぷんたぷんとかちゃぷちゃぷといった水の音が聞こえるようになってきた。

 ルーウェンさんの魔法で出した灯りに照らされたそこを見れば、どうやらこれ以上先には進めないようだ。陸といっていい部分はそこで終わって、そこから先は海に繋がっている。


 砂浜みたいになってたら水の音もそこまで聞こえなかったかもしれないけれど、段差になってる岩場状態なのでその部分に波がぶつかってさっきみたいな水音がしてるっぽい。


「今のところはいないようだな」

「あぁ。ここまで一本道だったしこっち側で隠れてるってわけじゃなかったな。となると」

「そうだな」


 なんて会話をしつつ二人の視線がここから繋がってる海へと向く。

 灯りに照らされて多少水の中が見えなくもないけど、今のところは見える範囲に何もいる感じはしない。

 もっと深い場所からこっちを窺ってる可能性はあるけど。


 魔物がいなきゃこの洞窟、町のお子様たちの秘密基地みたいな扱いになってたんだろうなーと思えるものだが、魔物が出るせいで何とも言えない薄気味悪さすら感じられる。


「出没する魔物ってサハギンでしたっけ?」

 私が問いかければカイルさんがそうだなと頷いた。

「他の魔物もたまに出るらしいが、大半はサハギンだ。まぁ海はなあ……陸地と違って明確な境があるわけじゃないから……」

 そう言われてしまえば確かにそうだ。


 陸なら例えば山とか森とか洞窟とかそういった場所を縄張りにする魔物とかある程度割り出せるけど、海は深さとか水温? 温暖な海と寒い地方の海とじゃ同じ海でも水温違い過ぎて生態系も異なるのは言うまでもないし、魔物もそこら辺で違いはあるとは思うけど……明確にここからここまでがこの魔物の生息範囲ですよ、とか断言できるものはあまり多くないんだと思う。


 だから例えばたまに漁に出てる時にこのあたりじゃみかけない海の魔物が出ても、たまたま迷い込んだだけとかの可能性の方が圧倒的に高いわけだ。これが定期的に見かけるとなると縄張りになってる可能性を疑うしかないわけだけど、たまにならそういう考えにはならないっぽい。


 あれだ……普段は見かけるはずもないけど海水浴場にうっかり鮫が迷い込んだみたいな……


「サハギン以外の魔物は沖の方にでも出ない限りあまり遭遇する事はないって話だから、どうあれこっちはそのサハギンをどうにかできればいいわけだ」

「あぁ、自警団がそっちにかかりきりになってるのを察知して陸の魔物がたまにちょっかいかけに来るらしいが、そっちも今他のギルダーがどうにかしてるだろうしな」


 まぁ、明確にどれだけの数がいるってわかってるわけじゃないなら、絶滅させるとかも難しいだろうしね。とういうか絶滅させた結果別の魔物の天下じゃーい、みたいになったりする可能性もあるから気軽に絶滅させるのもどうかなっていうね。


 とりあえずこうしていても魔物が出てくる様子もない、って事で私たちは他の場所に移動する事にしたのであった。

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