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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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海辺のお誘い



 星祭りが終わって数日後。

 季節はすっかり夏に入ったらしく、外に出れば大半が夏の装いだった。

 私も首に巻いてるマフラーをストールに変更。

 マフラーとか巻いたままだと確実に暑くて死ねる。

 いやストールもどうなん? って感じなんだけど。


 しかし最近はすっかりこのスタイルが定着してしまったので、何かこう、巻いてないと落ち着かない。攻撃魔法は使えないけど気持ちひんやりさせる程度の風とか氷の魔法は使えるので、とりあえずそれを発動させている。じゃないと夏に全身真っ黒スタイルとか普通に暑さで死ねるわ。

 いや涼しいからっていっても周囲から見れば真っ黒スタイルなのは変わらないのである意味浮いてるんだけど。知ってる。でも今更白衣とか用意していかにもなお薬屋さんですよ、みたいな感じにもなれない。


 白い服はホント油断してるとすぐ汚れるので。

 あまり動かない時はいいけど、薬の調合とかしてる時は気付くと袖とか汚れてるんだもんよ。いっそ薬草で染めました、とか言い張れればいいけど、そこまで言い張るには染め方が中途半端すぎて言い訳にしか聞こえないっていうね。


 周囲からは私男だと思われてるからいいけど、女だって知られてたらきっとそこら辺色々言われていたに違いない。ご近所のおばさま方とかは絶対言うわ。今は男の子だと思ってるからご飯ちゃんと食べてるかとかそういう感じでしか言われてないけど、女の子って知られてたら間違いなく身だしなみに関して言われている。いや今でもあまりにも酷かったら言われるとは思うけども。



 まぁ、季節が春から夏に移り変わったからってやる事はそう変わらない。

 変わるのは精々売れる薬が違ってくるとかそこら辺だ。


 夏になると暑さのせいか夏バテ起こす人も出るらしく、栄養剤とか滋養強壮にいい感じのやつが売れるようになる。暑気あたりに効くやつとかね。

 食欲があるうちはどうとでもなるけど、それがないとなるとご飯食べたくない、ってなって栄養摂取する事もしないままじわじわと体力を落として、余計にダルくてやる気が出ない、っていう負のスパイラルに陥るし、気づいたら暑さに耐えられる体力もなくなって、なんて事もよくあるらしい。

 ウルガモットに来てからそれなりに経過したとはいえ、去年リタさんに引き取られていた間はほとんど外に出る事なかったから、これに関してはリタさんから聞いた話でしかないけれど。


 でもまぁ、夏の暑さに関してはわからんでもない。

 前世だと毎年異常気象がどうだとか言って年々気温上昇してたもんなー。

 熱中症で搬送されたとかってニュースは毎年あったし。

 昔は最高気温30度超えたら夏日とか言われてたらしいけど、私が前世で普通に生きてた時は30度超えてるのなんてしょっちゅうだったし。

 こっちの世界は暑いっちゃ暑いけど、湿度がそこまで高くないからかまだカラッとした暑さなので自分は耐えられる。もっとじめっとした暑さだったら耐えられなかった。

 あと魔法で多少涼しくできるってのも大きい。


 そんな感じで前世に比べればイージーモードな夏なんだよね。

 ウルガモットじゃなくても以前おばあさんと暮らしてた村なんかも結構涼しい場所だったし。

 自然に囲まれてたから虫とかがね、多かったけどそれ以外は過ごしやすかったと思うよ。虫が駄目な人からすれば地獄だろうけど。


 一応虫よけのお薬とかもあるけど……効果のほどはどうなんだろう。思い返せば蚊とかに刺された覚えはないから無意味ってわけじゃないだろうけど、虫全般を寄せ付けないってわけじゃないもんなぁ……というか前世で売ってた虫除けスプレーだって大体蚊とかの吸血昆虫に対してであって、蜂とかの刺してくるタイプは効果なかったはずだし。万能の虫除けとかあったら売れると思うんだけど、まぁそう都合よく開発できるはずもないよね。



 そんな感じで夏になったからとて大きく何かが変わったわけでもない。

 そう、ただ、ちょっとイベントのお誘いがあっただけで。


 そのイベントはギルド長からのお誘いだった。


「ようエルテ! 海に興味はないか?」


 海かー、いいよね海。

 転生してから海とは縁もない生活だったけど、嫌いじゃない。前世、子供の頃は夏休みに海水浴とか行ったし。大人になってからは泳がなくなったけどキャンプには行ってたんだよね。砂浜でバーベキューしたり夜に花火したり。


 毎日がサバイバル、とかだと逆にうんざりだろうけど、たまの休日に遊びに行く程度であれば海も山も川もいいと思うよ。

 とはいえ、ウルガモットから海って、どれくらいの距離の所の話なんだろう?

 そう思って問いかければ、ギルド長はなぁに、と大したことじゃないさみたいな反応をした。


「ここから馬車で一日程度だ。かっ飛ばすからあっという間だぞ」


 その発言に、私の目が死んだのは言うまでもない。


 いや、海ね、いいと思うよ? ただ、移動手段の馬車がさ……しかもかっ飛ばすって……

 それ絶対尻に大ダメージくるやつじゃないですか。

 私馬車に乗ったのなんて数える程度だけど、その数える程度でえらい目に遭ったからね。なるべくゆっくり進んでくれるならまだしも、全速力で進むやつとか間違いなく尻が酷い事になるやつだもんよ。


 それに、こっちの世界の海って、安全かどうかもわからないよな。

 前世の海も絶対安全ってわけじゃなかったけど、海水浴場に鮫が迷い込んだりだとかイルカが迷い込んだりだとかなんて滅多にないし、ましてや南の方ならヒョウモンダコとかの毒持ち生物の危険もあったけども。

 でも時期間違えなきゃクラゲに刺される事もないし、比較的安全だったと言える。


 でもこっちの世界はどうだろう。

 そもそも普通に街の外でたら魔物とかいるしな。

 陸にしか魔物は出ません、なんて事もないだろうし、そうなると海にも普通にいると思うんだよね。


 ってことは海水浴とかは無理だと思うんだよね。

 そうなると海に行く理由って、何……?


 海の近くに生えてる薬草とかってなんかあったかな……海藻とかならまぁ、あるといいなって感じのがいくつかあったと思うんだけど。普段あんま作らないお薬の材料にいくつかはあったはず。でもなー、仮に作っても売れるかわからん薬だもんなー。そのためだけにわざわざ海まで遠征したいかってーとなー。


 私があまり乗り気でない雰囲気を感じ取ったのだろう。ギルド長はちょっと困ったように肩をすくめた。


「もしかして、馬車、苦手か?」

「あれ滅茶苦茶尻にきますよね。しかも飛ばすんでしょう? 尻が死にますよね」

「あー……」


 お年頃の乙女から尻って言うのはどうなのかなーとも思ったけど、今の私は少年と思われているので別に尻って言ったところで問題はなかろう。ケツって言うよりはまだマシなのでは、という微妙解釈。


「実はな……その、海辺の町から要請があって」

「はぁ」


 私が乗り気じゃない事に気付いてじゃあその話は無かったことに、とはならなかったらしい。


「毎年夏ごろになると海からサハギンとかの魔物がちらほら現れるんだが、今年は何か例年より目撃情報が多いらしいし、そうなると討伐するのも大変な事になるかもしれないってんでな……救援というか応援の声がかかってるんだよ」

「はぁ」


 とりあえず大きな街なら確実にギルドはあるけど、小さな町や村だとそうはいかない事もある。

 実際私がおばあさんと過ごしていた村にはギルドなんてもの無かったはずだしな。自警団みたいな感じで村の周辺に出た魔物を倒したり追い払ったりしてた人たちはいたと思うけど。でもウルガモットの自警団とあの村の自警団は言葉こそ同じでも多分仕事内容は微妙に異なるんじゃなかろうか。


 で、その海辺の町とやらにはギルドがないって事なんだろう。じゃなきゃわざわざこっちに声がかかるとかなさそうだし。


「どれくらいの規模かわからんが、届いた報告書によると少し前に討伐したコフよりも多いかもしれないんだよな。向こうの自警団と連携するにしても、それなりに数は用意しないといけないだろうし、けど人だけ用意しても足りないものだってあるわけだ」

「……つまり、回復要員として参加しろって事ですか?」

「できれば頼みたい。その間こっちで店ができなくはなるが、その分含めて報酬上乗せするからお願いできないか?」

 パン、と手を合わせてこの通り! と言うギルド長に、あー……と何とも言えない声が出た。


 海に行くのに乗り気であればもっと気軽に頼んだんだろう。でも実際私は乗り気じゃなかった。


 断ってもいいけど、そうなると多分万が一の事を考えて薬の類なんかもあらかじめ用意していく事になるだろうし、私を連れて行く事を想定した時よりもその量は多くなるだろう。

 荷物が増えるとなると、馬車を下手するともう一つ余分に……なんて感じで用意しないといけなくなるのかもしれない。


 戦える人を連れていくにしても、絶対に怪我をしないとはならないだろうし。町が向こうにあるなら多少物資の補給は可能だろうけれど、それだって無制限になんでもどこまでも、ってわけにはいかないだろう。



 とても悩む。


 だって考えてもみてほしい。

 ここがフリゲの世界であったとして、だ。

 ゲームだとこれ新しい場所に行くためのイベントだよね。


 新しく行き先が増えるって事だよね。


 その場合ゲームだと何があるでしょうか、って話だよ。


 新しく行った先であり得るのって、まず仲間とかが新しく加入するためのイベントだとか、はたまた戦闘イベントとかだと思うのよ。

 そういうのがなかったとしても、何か重要な情報とかサブイベントのフラグとかがあると思っていいと思う。


 本当に何もない所って滅多にないと思うのよね。


 それを考えるとだ。


 新しいイベントを発生させていいものなのだろうか、って事よ。


 次の行先の手前の補給地点、みたいな感じで大したイベントがなかったとしても、それでもそこに暮らす人たちの話から近くにあるダンジョンだとか、何か魔物の巣とか、そういうレベル上げるのにうってつけな場所があるよ、みたいな話とか出たりする事もあるわけで。


 ゲームのジャンルにもよるけど、新しい素材を入手できる場所が増えたぞー! って喜べるようなのもあるとは思う。

 思うけど、それ以前にうち薬は作るけどそれ以外のアイテムは作ってないからね。

 なんとかの錬金術師、みたいなゲームとかだと鍋に素材突っ込んだら薬から武器まで幅広くできたりするけど、生憎私は素材があっても武器とか作れないんだわ。あくまでも教わったのは薬の調合だけです。


 何かのイベントが発生しそうだから、正直行きたいとはならないんだけど、行かなかった場合応援に行った人たちが大半大怪我をして再起不能になりました、みたいな感じになるんじゃないかって気もしなくもない。

 ゲームだとそういうの普通にあるよね。参加しなかった事で負けイベント確定しちゃって仲間がロスト、とか。


 いや、行った事でとんでもねぇイベントに巻き込まれる可能性もあるからどっちがよりマシなんだろうってなっちゃうんだけど。


 ホント、今手元に攻略フローチャートとかないの何でなのって気持ちで一杯なんだわ。

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