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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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比較的穏便な方



 その後も順調に怪しい人物を捕獲していったわけだが。


 いや、多い……多いよ……ウルガモットの街が結構大きなとこってのもあるけど、それにしたってここの人口の何割が犯罪者なのってくらい多いよ……

 探偵が主役の漫画とかでも住んでる所でしょっちゅう事件が起きたりするのとかはさ、あれは舞台が都市じゃん。場合によっては地方にも出かけるけど大体大都会じゃん。でもここ大都会って規模まではいかない街なのよね。いやまぁそれでも結構な規模ではあるんだけど。


 人の集まる所は意外と物騒とか言われるけど、まぁそうよね。善人ばっかじゃないものね。

 でも多いだろこれは……実はここ犯罪都市ですとか言われても納得するくらい今日だけで一体どんだけ捕獲したというのか。やったー大漁だーって喜んでいいのは海の幸と山の幸とあとお店でやってる詰め放題系のイベントくらいなものでは……こんな嬉しくない大量捕獲ってある?

 いやまぁ、最終的に治安が良くなれば結果オーライ……か?


 でも流石に未遂で済んだりしてる連中もいるから、多分お説教とかされて釈放ってパターンもある。そうなると再犯とかありそうよね。ってか今日の大半の連中その再犯しちゃいましたパターンなんじゃないかなって気がしてきた。じゃなきゃこんなに発生するとかないでしょ……ないって言って。

 幸いにして、って言っていいのかはわからないけど、自分の知ってる顔がいなかったのはまぁ、救いと言えるかも。これで捕まえた中にご近所さんとかそれなりに親しくしてる人とかいたら流石に精神的にキッツイものがあるよね。えっ、あの人こんな事しちゃう人だったの!? みたいな。

 仮に釈放されても次にどんな顔して会えばいいのか、ってなっちゃうよね。

 だからそういうの無くて良かった。


 いやそれでも今日だけで捕獲した連中多すぎるのは変わらないんだけどね!


 時々星空を見上げて精神の安定を図ったりもしたけど、癒されるよりも先に荒んでいくこの感じよ……

 確かにお空綺麗なんだけどさぁ……それを見るためにお外に出てる恋人たちが原因で犯罪者も出てきてるようなものだし。

 とはいえ、私とディットさんが見回った時に捕まえたのは大体穏便な感じの不審者だったからまだ良かったのかもしれない。


 ある程度自警団の人たちの所に連行して、ある程度の時間も経過したしそろそろ見回りも終わらせて大丈夫そう……ってなったんだけど、他の場所を見回ってたルーウェンさんがこの時点で合流。なんだかすごいげっそりしてた。

「おや? 一人ですか?」

 一応二人か三人一組とかで見回ったりしてるんだけど、ここで遭遇したルーウェンさんは一人だけで他に誰かがいる様子もない。だからこそディットさんもそう口に出して問いかけたんだろう。


「あぁ……さっきまではいたんだけどな。帰した」

「帰した……って」

「じゃないとあいつも牢にぶち込む事になりかねなかった」

「何があったんですか……」

「以前あいつと付き合ってた女が新しい恋人といちゃついてるの見てショック受けてた」


 あぁ……それは……


 って感じの反応しかできなかった。穏便に別れたならともかく、ルーウェンさんの口振りからそうじゃなかったんだろう。で、自分は独り身になってこうして見回りとかしてる現状なのにかつての恋人は今新しい恋人といちゃいちゃしてるとなれば……まぁ、気持ちはわからんでもない。

「あのままだとあいつらに襲い掛かる可能性が高くてな。速やかに締め落として帰した」

「帰すってそっちの意味での帰すだったんですか……」


 まさかの強制帰宅。

 てっきり「これ以上はつらいだろうから今日はもう先帰っていいぞ」とかそういう感じで家に帰したのかと思ったのに、物理的に沈めた上で家に送り届けるとか……

 その辺の路地裏に放置じゃないだけルーウェンさんの親切さがおかしな方向に発揮されてる。


「では、そちらも見回りはそろそろ終わらせる予定ですか?」

「そうだな。そこそこ捕まえたし、他でも結構捕まってたみたいだからこれ以上はもう出ないと思いたい……」

 どのみち一人になったので見回りに出てもできる事が限られてくる。

「あとは時間差で後から見回りに出た連中に任せて大丈夫だろう。戦場で例えるならあとはもう敗残兵を処理するようなものだし」


 あ、そっか。私は夜になって星祭りが始まったあたりで見回りに参加したけど、皆が皆一斉にせーの、で見回りに出たわけでもない。後から見回りに参加する人たちもいるっていうのはギルド長にも言われてたけど、すっかり忘れてたわ。

 というか他でも結構沢山捕まえたって言葉聞いて、ホント今日だけでどんだけやらかした人が出たんだろうかってなるよね。


「しかし……自分に恋人がいないからといる相手を襲おうとするのはどうかと思うがな」

「えっ、ルーウェンさんが捕まえたのそういう感じの人たちだったんですか!?」

「そうだが」

「わーおアグレッシブゥ……」


 私たちの方は金品狙いの空き巣とか下着泥棒とかだったけど、そっかー、恋人たちに恨み拗らせて襲い掛かるタイプの犯罪者もいたのか……こっちは走って追いかけたりする方が多かったけど、ルーウェンさんのところは普通に戦闘になってたっぽい。

 とはいえ、街の外で遭遇するような盗賊だとかを相手にするのと同じノリで殺すわけにもいかないから、手加減しつつ戦わなきゃいけないとか、聞いてるだけで結構しんどそうだなってなったよね。

 私の場合は結界でぶん殴って脳震盪狙いでいけば終わると思うけども。


 屋台のような感じで店が出ているといっても花祭りの時と違ってそこまでたくさんあるわけじゃない。更には恋人たち向けと言っていいのかわかんないけど、星祭りって事もあって星をモチーフにしたアクセサリーとかちょっとした小物とかを売ってる店に比重が偏ってる。

 ソースの香り漂う食べ物とかは売られてなかった。食べ物はほぼない。あってもあんまり香ばしい香りの食べ物とかはなくて、保存もできるちょっとした焼き菓子だとか、あとは温かい飲み物だとか。一応冷たいのもあるけど、昼間は暑いって思う事もあるけど流石に時間帯が時間帯なんで夜はそこそこ冷えるんだよね。この後恋人たちがどっちかの家に行って更にいちゃいちゃするならともかく、明日仕事あるし……みたいな感じで普通に家に帰るならリラックス効果のある温かいハーブティーとかはそれなりに売れるんだろう。


 私たちは何だかんだ走り回ったりしたので正直ちょっと暑い。

 なので冷たい飲み物を買ってそれ飲んでから帰る事にした。


「あ」

 飲み物の残りも少なくなったのでカップを傾けるのもガッツリ傾けないといけなくなって、そのまま上を向く形で中の液体を口の中に流し込んで。

 ふと目にしたそれに思わず声が漏れた。

 あっぶねー、うっかり飲み物飲んでる途中で声出したものだから、危うくおかしな方に流れ込むところだったわ!


 咽てせき込む、なんていう事態を回避しつつも、もう一度上を見た。


「どうかしましたか?」

 私の様子に何かまた不審者でも見つけたのかと思われたのだろう。いや私の視線の先は空なので不審者も何もあったもんじゃないと思いたいんだけど、でもたまに屋根とか上って移動しようとしてる奴とかいたからなぁ……ディットさんの心配も杞憂とは言えない。いや今回は杞憂だけども。

 ルーウェンさんがとても面倒くさそうな眼差しをこっちに向けてきたけど、今回は不審者などではない。

「あれ」

 と思わず空を指し示す。


「おや」

「あぁ……」


 私の指が向いている先――空を見上げて、ディットさんとルーウェンさん、それぞれが反応を示す。


 満天の星空といっても過言じゃないそこを、きらりと光の尾を引いて星が流れていく。

 ひとつ、ふたつ、みっつ、と次々に流れていくそれを私は「え、今日って流星群とか見れる日だった?」なんて思いながら眺めていたし、ディットさんはなんだか珍しいものをみた、みたいな反応。ルーウェンさんの反応はちょっとよくわからない。その「あぁ」は一体どういう感情から出た声なの?


 ともあれ前世でも滅多にお目にかかれないような光景に、私はしばし空を見上げたままだった。


 飲み物を飲み干そうとして上を向かなかったら多分気付かなかった。そう考えると何ていいタイミングで上を向いたんだと思うわ。

 見回り自体はとても面倒だったけど、最後にこういうのが見れたならまぁ、うん。いや絆されるな。それとこれとは話が別だったわ。



 しばらくは上を見上げたままだったけど、やがて流れる星も見えなくなったので首を元に戻す。ずっと上向いてるのも地味に首に負担かかるよね。


「……帰るか」

「そうですね」


 ルーウェンさんも最後に何かいいもん見たからこれ以上面倒に巻き込まれる前に帰ろうぜ、みたいなニュアンスでもって言ってくれたので、私もそれに便乗した。何か今ならさくっと帰ってすぐさま寝れそう。ついでにいい夢見れそう。よし帰ろうそうしよう。


 そう思って歩き出せば、ディットさんとルーウェンさんも歩き出した。


「あれ?」

「念の為送っていく」

「え、いやでも」

「いいから」


 見回り終わらせたらギルドに連絡を入れる、とかそういうのもないからサクッと帰っていいって言われてたのでそのまま真っ直ぐ自宅へ向かおうとしたものの、何故か同じ方向へ歩き出したルーウェンさんとディットさんに私は思わず声を上げていた。

 いやあの、別方向ですよね? という意味を込めて。

 けれどもそんな私にルーウェンさんがなんともぶっきらぼうに言い放つ。


 別にそこまでされる必要ある? って思ったけど有無を言わさぬといった感じで、だからこそ私はそれ以上何も言わないというか言えないまま送られる事となったのだ。


 うーん、確かに私一人だけだと不安に思われ……いやそうか?

 確かに見た目非戦闘員だけど、結界使ってやらかしたあれこれを既にルーウェンさん知ってるんだから、そんな過保護発動させる必要性ないよね?

 いやでもあれかな、別れた直後に私だけ何か厄介ごとに巻き込まれそう、とかそういう偏見とかかな。


 おかしなフラグを立てたりしないよう、何かあっても自分から首を突っ込みに行く真似はしないつもりなんだけど。


 まぁここでそれを言い合っても埒が明かないので、大人しく送られる事にした。


 ディットさんと二人だけで、ディットさんが送っていきますよ、とか言い出したら断ってたんだけど。その場合ディットさんが家路につくまでの時間が長くなるし、ましてやこの人のモテっぷりを思えばモテない男性からすればここで闇討ちとかしてしまえるのでは? みたいに思う奴もいる可能性あるわけだし。

 でもルーウェンさんもいるなら、ディットさん一人で帰るわけじゃないのでまぁ安心、か……?


 あの場で別れてそれじゃーねー、で済ませると私一人だもんな。向こうは二人いるから何ともなさそうだけど、そうなるとこっちが何かありそう、って思うルーウェンさんの考えもそこまで大袈裟ではないような気がしてきた。


 そういうわけで私は二人に送られて、無事何事もなく家に帰ってきたのである。

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