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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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成り行きだけどまぁ、友人って言えるはず



 少し前に女子力どうこうのたまいましたが、女子力ってそもそもなんだろうね? って話ですよ。

 女子からみた女らしさと男から見た女らしさって微妙に違うじゃん? それ言っちゃうと男らしさも男女で見ると微妙に違うらしいけど。


 着眼点でどこに比重を置くか、だとは思うけどもまぁ、言いたい事はですね。


 私の女子力が皆無だろうと特に問題はなかったって事だし、仮にちょっと女子力っぽいものを発揮しても特に何も問題なかったって事ですよ。


 事の発端は大した事じゃないんだけど、ディットさんと出かけた時だ。

 他の街からの商人が行商にやって来て今新しく露店だけどお店やってるらしいって言うんでディットさんに誘われて見に行った帰りの事。

 小腹空いたからってこれまた女の子ウケしそうかつ恋人と一緒に来るとかよくありそうなオシャレなカフェで休憩する事にしたわけです。


 自分一人だととても周囲から浮くなこれ……って思える程度にはキラキラしい空間だったわ。

 そしてディットさんはそのキラキラしい空間に何の違和感もなく溶け込んでいた。


 お昼ご飯としてメニューを選ぶならもっとガッツリしたものを選ぶところだったんだけど、その少し前に別の露店でちょっととはいえ食べたりしてたから、そこまでお腹空いてなかったんだよね。私は。

 で、折角だしここのカフェお勧めのケーキでも注文するかと思って頼んだわけです。

 なおディットさんは紅茶とスコーンのセットだったかな。

 私が頼んだケーキは旬の果物をたっぷり使ったフルーツケーキだ。あと同じく紅茶。


 他の席にいる女の人たちが時折ディットさんに視線を向けてはひそひそと話をしているのが聞こえてきたけど、なんていうかこう……なんでここにいるのかしら、さっさと帰ってくれないかな、みたいなものではなく、相変わらずアイドルか何かを見た時のような反応だった。

 ディットさんも別に終始ファンサまがいの事をしてるわけじゃないから、今回はちらっとそちらに視線を向けてにこりと微笑んだ以上の事はしてないけど、それでもそんな微笑みを向けられた側は小声で叫ぶという器用な事をしてたっけ。

 相変わらず凄いなぁ、と思いながらもとりあえず同席してる自分への視線が鋭いとかそういうのもないから、余計な事はしないで普通に食べてさっさと出よう、とか思ってたんだけども。



「甘い物、好きなんですか?」


 フォークを手に取ってさて、と思ったところでディットさんに声をかけられた。

「? えぇ、まぁ。嫌いじゃないですけど」

 甘すぎる物とかは苦手なのもあるけど、別に甘い物全般が駄目ってわけじゃない。美味しかったらオールオッケー派です。どうも。


「男のくせに、とか言われたりしません?」

「言われた事はないですねぇ」


 そもそも女だし。

 あ、でもそういや何か知らんけど、男の人って甘い物好きな人一定数いる割に何故かそれ隠すよね。若いうちだと恥ずかしいとか思う人が多いらしいし、年とってからだと糖尿病がどうこう言われるから……みたいな人もいたとは思うけど、別に甘い物が好きなのは構わないと思うんだけどな。

 その逆で女だからって皆が皆甘い物好きってわけでもないし。

 限度越えてなきゃどうでもいいのでは?


 でも、私にそう言ってくるって事は、だ。


「ディットさんも甘い物は好きなんですか?」


 周囲の女性陣に聞こえないようにこっそりと訊ねてみる。するとディットさんは声に出さずに小さく頷いた。甘さ控えめシンプルなスコーンとか注文してたから、苦手なのかと思ったんだけど違った。


「実は、ですね」


 こちらも声を潜めて内緒話をするかのようにこっそり、といった声量で話す。


「かなり好きなんですが、外では食べないようにしてるんです」

「なんで……あ、もしかして」

「えぇ、その、差し入れ、とかでですね……」

「あ~、それは……」


 予想通りというべきか。


 お近づきになれなくてもせめて、みたいな感じでお菓子を差し入れしてちょっとでも記憶に残りたい、みたいな人も恐らくそれなりにいるんだろう。

 それでなくてもディットさんは貴族。あわよくばを狙っている女性がいないとは言い切れない。正妻じゃなくても愛人狙いで、とかいう人ももしかしたらいるかもしれない。


 甘いお菓子の差し入れ、とこれだけ見ればまぁよくある話だよね、ってなるけど。

 それも行き過ぎるととんでもない事になる。

 市販のお菓子ならまだしも、そういう手合いって大体手作りなんだよね。己の料理の腕で胃袋を掴め! とかいう考えなら確かにそれは間違ってないんだけども。

 ただ、その手のお菓子とかって下手すると謎の恋のおまじないも活用する奴が出てくるわけで。

 おまじないと言う名の異物混入なんだけど。


 ぶっちゃけそのおまじない実行して成就した奴見た事ないんだけど。

 どっちかっていうと生理的嫌悪マックスにする呪いだと思うんだよね。


 髪の毛とか爪とか最悪経血とかさ……普通に気持ち悪いだろうに。


 これ性別変えたら男性からの食べ物の差し入れの中に精液入ってるとかいうやつだぞ。誰が喜ぶんだ。それやって許されてるのエロコンテンツ以外見た事ないぞ。

 現実でやられた方はトラウマ発症するわ。


 貴方が好きです、でこれやられるより貴方が大嫌いですでやられた方がまだ納得する。だって嫌いだからやったんでしょ、ってわかりやすいもの。でも好きなのにこんな仕打ちを!? ってなったら意味わかんないからね。愛情表現歪んでらっしゃる!? って自分なら間違いなく問いかける。


 そうなると途端にディットさんに対してイケメンも大変なんだな……という感情が芽生えてくる。え、これストーカーとか大丈夫……?


 外でこの手の甘い物を食べてると、何かやたらとクッキーとか差し入れでもらうらしいんだけど、まぁ、うん。マトモなの一割あればいいほうって話されてしょっぱい気持ちになったよね。九割異物混入系かよ……それは泣いていい。食べ物を粗末にするんじゃない。


 顔を近づけてひそひそこそこそ話していたけど、とりあえず離す。まだ口をつけていないフォークでざっくり取り分けて、私はディットさんにそれを差し出した。


「ディットさん、そっちのスコーンも気になるので一口下さい。というか交換しましょう一口分」

 とりあえずまだ自分の口はつけてないフォークなので、問題なかろう。ディットさんはきょとんとした顔を一瞬だけ浮かべて、すぐにこちらの意図を察してくれたらしい。ありがとう、と小声で返された。

 ディットさんが食べやすいサイズにしたスコーンを私の口元へ、そして私はディットさんにフルーツたっぷりめの一口分をシェアしたわけである。


 何かその光景を見て周囲のお姉さんたちが小声で叫ぶというのをしていたが、もう……何も気にしない事にする。もしかしたらこれが私の最後の晩餐かもわからんね……とか思ったりもしたけど、後悔はしていない。

 だって食べたいのに食べられないって結構ツライよ!?

 食べたいのに目の前で食べてる人見てるだけとか結構キツイよ!?


 ダイエットしてるとかならまだしも、そうじゃないのにそれって一体どんな仕打ち!? ってなるよ!?


 ちなみにスコーンは甘さ控えめだけど材料がいいの使ってるんだろうなってのがわかる美味しいやつでした。ディットさんがスコーン食べてるから私も作って差し入れしよ! とか女性が思ったとしても、これと同じかそれ以上のを作るとなると中々難易度高いんじゃなかろうか。シンプルなのって簡単だからこそ奥が深いって部分あるからね。クロテッドクリームも同じく。



 多分自宅でそこそこ甘い物とか食べられるとは思うんだけど、うちでもたまにならパンケーキくらいならご馳走しますよって言っちゃったんだよね。何かこう……その場の勢いとか同情票とかそういうのが集まってしまって。パンケーキって……とか苦笑い浮かべられてないだけマシだけど、社交辞令くらいに受け取られてるだろうなとも。


 けど、実際その日が訪れてしまったわけだ。

 それが今日です!

 女子力がどうこういうのがここにかかってくるわけですよ。我ながら長い前置きだったぜ……!


 ところでパンケーキと言われてどういうものを想像するだろうか。

 ホットケーキとそう変わらん? まぁそうね。でも、前世とかでやたら豪華なパンケーキを食べるかお目にかかった事があれば、そっちを想像する事もあるよね。ちなみに私はディットさん相手なのでその豪華な方のつもりで言った。

 そう、あのメレンゲ泡立てて生地と合わせて低温でじっくり焼くタイプ。

 あの口の中でシュワッととろけるようなふわふわ食感かつ、フルーツとかナッツとかクリームをたっぷり乗せた、お店で食べるとなると最低でも千円以上するようなやつだ。


 前世の私も流石に一人でふらっとお店に行って食べるには敷居が高すぎて、休みの日に上手い事友人とでかけたりした時にそういうお店に行く流れになった時だけ食べていた、ある意味特別な日のおやつである。いやだって、普通の日にお菓子として食べる物の値段って考えるとちょっとセレブすぎない? うち一般家庭だったからね。私も前世で働いてたけど、だからって一日のお菓子として食べる値段と考えると千円オーバーはちょっとキツイわ。

 たまの贅沢ならまだしも。日常的な、って考えるとちょっと厳しい。

 しかも最低価格で千円ちょっと、だからね。お高いパンケーキとかそれ以上の値段してるからね。


 いやでもこれなら貴族であるディットさんに出したとしても大丈夫なのでは。

 庶民の家庭料理とかお菓子に興味あります、とかならまぁ普通のホットケーキにバターと蜂蜜とかなんだけど、今回はお外で甘い物が食べられないディットさんのためにちょっと凝ってみようかなと思ったわけだ。


 ちなみにディットさんと出かける時は別に奢ってもらうとかそういうのはない。というか私が断った。下手すると餌付けされそうだし。散々餌付けされた後で魔法関連のトークに持ち込まれて逃げられなくなると面倒……いや、そこはまぁ、さておき。

 とはいえ、あまりウルガモットの街中に詳しいわけでもない私をあちこち案内してくれるお礼を兼ねて、というのもある。ちょっとした気持ち程度と言ってしまえばそれまでだ。



 ちなみに先日薬草調達しに行った際、運よく森の中で春に採れるメイプルベリーという楓の木の近くにだけ生息するとかいうとても甘いイチゴのような果物が採れたので、それもパンケーキに飾る事にした。

 見た目がイチゴなんだけど、その名前は私聞いた事ないからなぁ。前世。味見に一つ食べたら何か練乳でもかけましたか? ってくらい甘かった。これそのままで充分だわ。下手に何かかけたら甘ったる、ってなりそう。


 メレンゲを作るのがちょっと大変だけど、メレンゲさえ作ってしまえば後は事前に用意しておいたセルクルをセットして中に生地を流しいれて、弱火でじっくり焼くだけだ。

 前世でも一応自作した事あるから、まぁ失敗はしないはず。

 うん、お店で食べたいなって思っても金欠だった時とかね、自作したよね。頑張れば作れなくもない、っていうやつは逆に言えば頑張れば作れる。流石にフルーツとかいっぱい乗せようってなると高くついちゃうから、クリームこれでもか、って盛るだけだったけど。


 今回は森で採れた他の果物とか木の実とかを使っての作成です。

 欲を言えばバニラアイスとかもね、添えたかったんだけど、流石にそこまでは無理だったのでクリームましましにする事にした。


 ふわしゅわのパンケーキの上にこんもりと乗ったクリームと、そこに果物を使って作られたソース、それからメイプルベリー。砕いたナッツ類も散らして、これは我ながら映えるのでは……? と思ったけれど残念ながら写真を撮る機材はないし、あっても撮影した写真をどうしろとってなるのでそこは断念した。

 ネットとかないもんなこの世界。写真は一応機材があるからどうにかなるけど、でもあまり一般的じゃないっぽい。


 ともあれ、人様に出すには問題のない一品が出来上がったわけだ。


 私がとても神妙な顔をして出したそれを、ディットさんは目を輝かせて見ていた。

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