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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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それは些細な願い事



 そういうわけであの討伐戦で一体何が起きたのか、というのをルーウェンさんとディットさんから聞く事となった。とはいえギルド長は既に他のギルダーから大体の事は聞いてる。けれども、ディットさんが腕を切断寸前までいってしまった事に関してはよくわかっていなかったらしい。


 大まかにはコフ、という猿っぽい魔物が増えてきた挙句、それが人を襲うようになってきたから討伐する――という流れだ。

 コフ単体であればそこまで凶暴ではないけれど、集団になると途端に凶暴性が増すだとかどうとか。


 まぁ、人も集団になった途端イキっちゃうようなのいるから魔物がそうだったとしても別に何にもおかしなことはないように思える。集団になる場合って外敵がいてそれから身を守るために生存率を上げるために群れるのか、はたまた個の力が弱くても集団という数の暴力であればどうにかなるから、とかそういう理由が大半だと思うけど、コフの場合は他の住処を追われて流れてきた先がこの近くで、自然と集まった結果凶暴化したのでは、という話だった。


 そもそも前はそんなのいた感じしなかったもんな。マトハルさんと一緒に薬草採りに行く時に見かけた事もないし。

 コフは雑食性。単体であれば木の実や花の蜜、木の根や食用になるだろう花や草を食べるので放っておいてもそこまでの問題はでないのだが、集団になればそういった餌はあっという間に食い尽くしてしまう。そうなると他に食べられそうな物を求め――野山にいる動物や他の魔物も時として食べるのだとか。

 単体でそういうのを狙わないのはやっぱり勝ち目が薄いとかなんだろうか。集団だと狩りもそれなりに成功しやすそうだけど、単体だと失敗したら無駄に労力費やすだけで余計にお腹空くだけだもんな。それならちまちまそこら辺の食べられそうな植物採取する方がマシ。


 集団になると普段警戒してる人里にも接近するようになって、そこで人の食べ物を奪ったりもするらしいけど、もっと酷くなると人間を餌として認識してしまうらしい。

 そこら辺は討伐戦当日、ギルド長から聞いてはいた。

 それに関して私の感想は人の味を覚えた熊みたいなものか、というものだった。


 とはいえ、単純に集団であったなら、こっちもまた集団で討伐にいけば勝ち目はある。

 本来のコフ単独であれば全く苦戦はしないそうだけど、集団になって凶暴性が増したコフはそうもいかない。結果として討伐戦になったのだから、つまりそれだけ危険性が上がったというわけか。

 ……討伐戦とかしないで放置して目についた相手だけ倒してたらもっと色んな所で被害が発生してたんだろうな。人里に近づいて食料奪うって話だし、そうなるとこのウルガモットに侵入したりするのも時間の問題だったって事かな。


 ルーウェンさん曰く、そのコフの中に赤化したコフが紛れていたらしい。

 最初は普通のコフだけだったはずなのに、樹上の巣の中から数匹赤化したコフがやって来てからは戦況がやや不利になってしまったのだとか。


 赤化、という言葉もギルド長から聞いたなそういや。

 何か強い個体だったっけ。赤化の他に黒化ってのも聞いたような。


 ゲームで例えるならノーマルコフはそこらの雑魚と同じ扱いにしてオッケーだけど赤化とか黒化した個体は雑魚扱いすると痛い目にあうボスみたいなもの、と考えていいと思う。とりあえず本来のやつより強いのは確実、と。


 で、その赤化したのが何体か出てきたらただでさえ凶暴化してるコフを相手にしてるのに途中からボスが追加されたみたいなものだし、苦戦していた……と。樹上に巣を作ってるだけあってどいつもこいつも身軽だし、まず木の上から落とすところから始めないとこっちの攻撃が当たらない。でもコフはひょいひょい身軽に動き回って攻撃に転じてくる。

 ……普通に考えて厄介ですね!?


 コマンド選択制のゲームなら攻撃、とか選んだら後はキャラの命中率とか相手の回避率とか計算してダメージ計算に入るけど、現実はまず射程範囲というか間合いというかが壁になってた、と。

 ゲームでも攻撃範囲がショート・ミドル・ロングレンジとかで決まってるのとかあるけど、現実はもうちょっと面倒な感じだった、と。


 巣ごと落っことせばいい話なんだろうけど、そのために魔法を使うにしても下手な魔法を使うと木ごと燃えたりするからまず炎系は却下。

 魔物退治の方が重要だから木の一つや二つ切り落としたり燃やしちゃっても……と思われるだろうけれど、そのノリでバンバン燃やしたりしてったら最終的にウルガモット周辺の自然は大体焼け野原になりかねない。そうなると薬草とかも採取できなくなるし、はたまた木の実なども絶望的。

 薬草とかはまぁ、最悪行商人から遠路はるばる持ってきてくれたのを買うとかいう方法もあるけど、まぁ余計な出費だよね。


 ついでに周辺の自然が荒れるとコフ以外のそこら辺で生息してる動物が暮らせなくなる。草食動物は餌になる植物を求めて移動し、それらを餌にしていた肉食動物もまた行動範囲が変わる。

 雑草程度なら案外すぐに生えてくるかもしれないけど、木とかは流石にすぐ成長するわけじゃないから元に戻るまでに何十年もかかるわけだ。


 どう足掻いても生態系が変わるし自然を無闇に破壊するのはよろしくない。


 あたり一面焼け野原にしてでもここで倒さないとマズイ……!! みたいな状態ならともかく、そうじゃなかったら後が大変な事になる倒し方は極力避けたいのもわかる。勝っても結果街は滅びました、とかだと街の住人だった人たちこれから先どうすればいいんだ、ってなるもんね。他の所に行くにしても、行くアテがあればいいけどそういうのなかったらなぁ……私は運よく住む場所さっくり決まったけど、中にはそう上手くいかない人だっているだろうし。


 弓矢とかの遠距離武器で巣をどうにかしようにも、ちょっとした小鳥の巣ならともかくそんな軽いものでもないコフの巣はそう簡単に落とせるわけもなく。

 そこらに沢山いるコフを倒しつつ巣にこもってるだろう個体にも注意を払って……とかやってるうちに巣の中にいた赤コフが出てきて戦況はこちらがやや不利に。



「正直な話、すぐ近くに回復魔法を使える奴がいてくれれば……とは思っていたが赤コフが出た時点でいなくて正解だったと思ったな。何せあいつら頭は回る」


 ふぅ、と溜息混じりに述べたルーウェンさんは、昨日の事を思い返しているのだろう。なんというかとても難しい顔をしていた。

 怪我を治す回復魔法を使える奴がいる、となれば勿論それは早いうちに倒さないといつまでたっても終わりが見えない。

 ゲームでも敵に回復魔法使えるようなのがいたらまずそっち集中して倒すし、回復役が狙われるのは言われるまでもなくよくわかる話だ。


 とはいえ、そういう事を考えずに近くにいる相手だけを襲う魔物も結構いるらしいので、普段の討伐であれば回復魔法を使える相手も同伴させてそちらの守りを固めつつ……なんて事もあるらしい。

 ただ今回は魔物の巣を発見した時点で相手がコフであるというのはわかっていたし、通常個体のコフもそれなりに知恵が回るので回復役を連れていけばそいつが狙われるのは分かり切っていた……と。


 だから私はギルド待機だったわけね。


 わざわざある程度負傷した時点でギルドに引き返してまた魔物の巣がある場所まで行くって無駄に疲れそうだし時間もかかるしで非効率的では? と思ってたけど納得はした。

 その場から撤退するギルダーを追いかけようとしていたコフもいたらしいけれど、そういうのはその場に残った人たちで倒していたようだし、全員が撤退するなら勿論追いかけただろうけれどその場に残る者がいる以上はコフもそっちのけで追いかけるわけにもいかなかった、って事か。

 もしそうしていたら、撤退したギルダーが危険極まりない状況になってただろうけど、同時にコフの巣もがら空きだ。例えばウルガモットにまでコフがやって来てたならともかく、その手前で撤退したギルダーを倒したコフがいざ住処に戻ってきたらもう何も残ってませんでした、じゃあ、ねぇ?


 試合に勝って勝負に負けた、とかいう以前の話だ。


 赤コフが数体いた時点でこちらも苦戦していたけれど、それでも時間をかけて着実に仕留めていった結果、終わりは確かに見えてきていたそうだ。


 けど――


「終わりがほぼ見えた頃、でしたね。

 コフの数も大分減って、木の上の巣も今なら魔法で狙いを定めても邪魔が入る事はない、と判断したルーウェンが魔法を使って巣を落としたんです。炎だと木に燃え移るかもしれないから、風の魔法で揺り落とす感じで」

「あぁ、まだ巣の中にコフがいるならそれを追い出す事もできるだろうし、巣が木の上から落ちた事でまだいる他のコフの動揺を誘えるだろうと思ってな」


 実際にその試みは成功したらしい。いくつかの巣が樹上から落下して、まだいたコフたちは自分たちの巣が落下して壊れた事に激しく動揺したらしい。

 コフにもそれなりの知能があるようだし、だとしたらわからなくもない。

 自分たちの巣を壊しにやってきた連中と戦って追い払おうとして、少なくない犠牲も出て、でも巣が落ちて壊れた、なんて事になったら一体何のために戦ってたんだ、ってなるだろうなとは思う。


「ただ、その中にまだコフがいたんです。それも――黒化したコフが」

「俺はそれに気付けなかった。黒い影のようなものが出てきたような気がする……程度にしかわからなくて、次の瞬間にはディットの腕が」

「わたしは巣から飛び出てきた黒コフを多分一番いい位置で見てしまったんでしょうね。気付いたのはその時点では恐らくわたしだけでした。そして黒コフは魔法を使っていたと思しき相手――つまりはルーウェンを狙った。凄まじく素早い動きでルーウェンに向かう黒コフの前に立ちふさがって、わたしもまた魔法を使いました。あまりにも早い動きに狙いをつける余裕も何もなくて、仮に外れたとしてもルーウェンがどうにかすると信じて」


「俺が見た時には魔法を使っただろうディットの腕が、骨ごと切れているのが見えた。まさかコフの爪でそんな風になるとは思ってもいなかったんだ。確かに鋭い爪をもっているが、本来のコフならそうはならない。黒コフだからこその威力だったんだろう。

 そして俺は情けない事に、ディットの腕がそうなった事に気をとられてしまった」

「わたしはその時点であまりの痛さに意識が飛びかけてたのでここからはおぼろげなのですが……咄嗟にカイルが近寄ってたのは覚えています。

 あとは……」

「そうだな。マトハルが俺の名を呼んで、俺に近づいていた黒コフが振り下ろそうとしていた爪をナイフで受け止めた。爪の強度も中々だったらしく、マトハルが持っていたナイフでも爪は傷一つつかなくて……このままだとマトハルも危ないと思って咄嗟に魔法を使った。剣で攻撃を仕掛けるには間合いにマトハルもいて巻き込みかねなかったから。魔法も制御をミスれば危険だったが、広範囲に及ぶものでなければ、と思い使って――」


「わたしはその時点でカイルから何があっても腕動かそうとすんなよ、ととてもきつく言われたのを最後に意識を失った、というわけです」


「どうにか黒コフを倒したけれど、その時にはもうディットは意識を失っていた。黒コフが死んだのを見て、まだ残っていたコフたちは散り散りに逃げていったが、追える範囲で他の者が仕留めたので、恐らくはもうこの近辺に近づいたりはしないだろう」


 どうやらこれが、コフ討伐における一連の出来事だったらしい。


 その後でルーウェンさんはディットさんを背負ってここまで戻ってきた、と。


 うん、カイルさんの言い分は合ってる。下手に腕動かそうとされてたらかろうじてくっついてた部分も取れちゃってた可能性あるし。


「成程な。そこら辺は報告してきた奴もよくわかってなかったが、そういう事か……仮に仕留め損ねた通常のコフがいたとしても、赤コフと黒コフに関してはもういないんだな?」

「あぁ、それは確実にあの場で倒した」

「ならまぁ、大丈夫そうだな。通常個体のコフなら逃げ出した時点で当分は人に近づこうともしないだろうし、新たに群れるにしても今回の記憶はそう簡単に消えやしないだろうし。群れても人里に近づくようならその群れから逃げ出す事も考えられる。

 とはいえ、前にも別の魔物が赤化したとか黒化したとかって報告が上がってるから、魔物の生態を調べるのを専門にしてるギルダーたちにはもうちょっと頑張ってもらう事になりそうだが……お前らはお疲れさん。当分はゆっくり休めよ」


 ギルド長はそう言ってから、

「ま、ゆっくり休めよ、は昨日の時点で言うべきものだったんだけどな」

 なんて付け足して笑った。


 一時はどうなるかと思ったけど、それでもこっちに大きな犠牲は出ていない。

 だからこそ、笑って終わる事ができた。


 ……とはいえ、正直ディットさんの腕が取れかけてたのを見たのは割と衝撃的だったんで、できる事ならそういう大怪我はしばらく見たくないな、と私は思うわけで。


 前にマトハルさんと出かけた時にも狼系の魔物で何かそういうのあったし、魔物界隈で何かあるんだろうか、そういう……強化イベントみたいなのとか。

 これで終わり、とは到底思えなかった。


 何せここは私が知ってる世界ととても似ているところだ。知り合いの作ったゲーム、私が知ってるのは断片的で、しかも主人公のミラが学生時代の頃の部分しか知らない。それだって完全に把握してるわけじゃないし、知らぬうちに続編作っちゃったー、とかならもうこの先何が起きてもおかしくはない。

 仮に、そう、本当に想像はあまりしたくないけど彼女があのゲームの続編を作ったと仮定しよう。

 だとしたらこんな魔物が強化されて街周辺に出てくるようになりましたよ、なんての、どう考えたって何かの前兆であってこれが本番です、とはならないだろう。


 この世界が仮に彼女と無関係だったとしても、何か波長とかそういうのが彼女を彷彿とさせるのでこの世界に神様がいたとして、それはきっと彼女と同じような事を考えていたり事象を発生させるに違いない、とさえ思えてくる。

 勿論実際どうか、までは知らんけど。でもそう思えるなら思っておいた方が心構えはできるのでそう思う事にする。


 息つく暇なく次のイベントが……なんて事にならないといいんだけど。

 あまり暇だとか退屈だとか言わないからせめてもうちょっと平穏を謳歌させていただきたい。

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