表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/267

固めた決意は斜め上



 座って休憩できるスペースで焼きそばを食べる。

 うん、美味しい。ちょっと濃いめの味付けが中々にいい感じ。とはいえこれはあとで何か飲み物が欲しくなるなぁ……なんて思いながらも食べ終えて、空になった容器を捨てる。

 そうしてさて次は何いこうかなと思っていたのだが。


「おい、あれ」

 カイルさんに声をかけられて、あれ、と指し示された方へと視線を移動させた。


 花祭り、という事もあってそこかしこに花を飾るのは勿論ではあるものの、出店だとかのない――それこそたんなる居住区、みたいな部分はそこまで花を飾っていない。

 一応さらっとは飾っているようなんだけど、やっぱり人が多く集まるところと比べると飾っているといってもなんていうか……とりあえずそれっぽく体裁だけ整えました、みたいな感じだ。


 まぁ、後片付けとか考えると大変だもんね。

 人の多く集まるところはさておき、そうでもない場所まできっちり飾っていざそれらを片付けるとなると一体どれだけの人手が必要になる事やら……

 でもやっぱり何も飾らないのもなぁ、みたいなのが透けて見える感じで大抵の家のドア部分にリースを作って飾ったりだとか、窓のあたりに飾りを吊るしたりだとか。

 そういうちょっとしたのもそれはそれで味がある、と言えなくもない。

 向こうの家の窓際に飾られてるぬいぐるみに花冠がちょこん、と乗ってるのとかは可愛いし。あれなら祭り終わった後に花冠だけ外せばいいだけっぽいし、飾るのもそう手間ではないという事だろう。

 ちなみにカイルさんにあれ、と言われたのはそのぬいぐるみを窓際に飾っている家ではない。そのお隣だ。


 家のドアではなく庭に面した窓の所に一人の男がいる。

 これだけなら家の人が庭にいるんだろうな、となりそうだが違った。

 何せその男、周囲をきょろきょろと見回した後、窓に何やら貼り付けるようにしてごそごそと取り出したものは――


「空き巣ですねぇ」


 腰のポケットから小さなハンマーを取り出して、それを窓めがけて振り下ろそうとしているのを見て、私はとりあえず窓に結界を張った。

 この世界にガムテープとかってあったかな? とか思ったけど窓にくっつけたのは見る限り布かな? まぁ割った時の音が周囲に響かないようにしようっていうのはわかった。


 ガイン。


 と本来ならば割れるはずだった窓ガラスはしかし割れる事もなく、どころか鈍い音と共にハンマーを跳ね返す。


 頭上に「?」やら「!?」といったマークがたくさん飛び交ってそうな雰囲気の男に、カイルさんは音もなく接近し、

「はいそこまで」

 あっという間に取り押さえてしまった。

 ハンマーを持ってる方の手を捻りあげているので、下手な抵抗もできそうにない。


 なんだお前は!? なんて声を上げているが、どう見たってこの家に不法侵入しようとしているお前が言うな案件。仮にこの人が家主で家の鍵をなくしてしまった、とかであったならご近所の人に聞けば身元は確認可能だろうけれど、まぁこんな日に侵入しようとしてる以上、賊だろうね。


 その男をとりあえず自警団の人に引き渡して、再び出店巡りへと戻る。


「とまぁ、ああいう感じで祭りの日を狙って、ってな犯行がよくある」

「よくあるんですか……」


 治安大丈夫か?


 うちは大丈夫だったけど、それは多分周囲に他に店があったりして人通りがそれなりにあるからだろうな。

 あまり賑わう所ではないけれど、それでも何だかんだ人の出入りがあるから人目につかないよう犯行に及ぼうとするには無理がある。


 焼きそばを食べ終わった後なので、正直ちょっとだけ喉が渇いたなと思い果物を絞ったジュースを購入する。柑橘系の酸味が後味爽やかだけど、適度な甘さもあって良し。


 飲みながら、とりあえず周辺に視線を移動させてみる。

 またも出店が並んでる通りに出てきたからこの辺りで明らかに何かしでかそう、って感じの人は今のところいないようだけど、道を一本移動すれば人の通りもそれなりに減るのはよくわかった。


 祭りを楽しむついでに見回り、とはいうけど実際は祭りで賑わってる所から離れた場所でやらかそうという人がいるだろうから、やっぱり見回りは見回りで祭りがついでなんだろうな。

「お? なんだ? そんな見ても何も出ないぞ」

 とか言いつつカイルさんがさっき出店で購入したベビーカステラを一つ差し出してきた。有難く貰う事にする。うん、たまに食べると美味しい。


 ずっと出店のある通りにいても見回りにならないだろうなと思ったので、適当に食べ物を買っては休憩スペースになりそうなちょっと人の少ない所へ移動して、食べつつ周囲を観察する、を何度か繰り返す。


 幸いそう何度も同じ犯罪に出くわす事はなかったけれど、そろそろこの手段は使えそうにない。

 何故なら私のお腹もぼちぼち満腹を訴えているからだ。

 むしろこれ以上は食べたら吐く。

 祭りの雰囲気に浮かれてつい食べ過ぎてしまった……!

 とりあえずあらかた気になった物は食べたので未練はないけど、あとは何を見て回ろう。

 そういや食べ物以外の店もあるようだけど、さっきちらっと見た限りでは花をモチーフにした飾りとかどう見ても女の子向けアイテムだったんだよね……


 見るのはいいけど買うかってなるとな……


 なんて思いながらもふらふらしていれば、再び上から花びらが降ってきた。


 おっと二度目のフラワーシャワー。

 祭りが始まった直後に降ってきたやつとは色合いがまた違って綺麗ではある。事実周囲の女の子とかが上を見てきゃあきゃあ可愛らしい声を上げてた。


 ついでに花びらが頭にくっついたのか、一緒にいた男の子にとってもらったり逆にとってあげたりしている。

 よく見れば結構周囲にいるなリア充が……!


「そういえば……」

「ん? どした?」

「いえ、前にカイルさんが話してた後輩の……フレッド、さんでしたか。その人どうしてるんです?」

「あぁ、あいつは見回りとかしてないと思うぞ」


 なんて言いながらカイルさんはフレッドくんについて話してくれた。


 前に、私が知るゲーム主人公でもあったミラちゃんと結婚したって話は聞いてる。

 だからまぁ、見回りとかするにしても夫婦で一緒に、とかそういうやつかなとも思ってたんだけど。

 何でも少し前にミラちゃんの妊娠が発覚したらしく、フレッドくんは甲斐甲斐しくお世話に回っているのだとか。

 仕事するにしても、あまり危険なのは選ばない事にしているらしい。


 まぁ、確かに今のうちに稼ぐぜ! とかで張り切って危険な依頼受けたりしてそこで死なれたら、ミラちゃん未亡人だし赤子は生まれた時には既に父はいないって環境になっちゃうもんな。ヤバいわ。前世と違ってこっちの世界福利厚生しっかりしてる感じでもないし、そうなったら母一人で働いて子育てとかそのうち母親も過労死して残された子は若くして天涯孤独ルートいきそう。

 周囲の大人がいい人たちならなんとかなるかもだけど、そうじゃなかったら行き場をなくして各地を転々として最終的に盗賊団とかに身を寄せたりするのかもしれない。

 どころか、途中で知り合った奴がヤバいやつだったりしようものなら、もっとヤバい組織に……なんて事もあるかもしれないわけだ。


 今のうちに稼ぎたい気持ちはあっても、それで死んだら元も子もないって事でフレッドくんは日々そこまで危険ではない仕事を数こなして稼いでいるらしい。

 で、今日は奥さんと一緒に花祭りを見て回るのだと前から言っていたのだとか。


 そうか……リア充末永く爆発しろ。


 ミラちゃんが主人公だったゲーム内容はぶっちゃけ途中までしか知らないので彼女に何があって今に至ったのかは知らないけれど、それでも途中までは何となく知った仲だ。一方的すぎるけど。

 なので是非とも幸せになってほしい。


 今頃さっきのリア充どもみたいに花びら髪とか肩にくっつけて、やだフレッド一杯くっついてる、いやお前こそ、ほら取ってやるから動くなよ、とかいう感じのやり取りでもしてるんだろうか。いや、もしかしたら祭り開始早々の花びらでそれやったかもしれない。


 露骨に目の前でイチャイチャされるとそれはそれでうわうぜぇ、って思うかもしれないので、是非とも私の視界に入らない範囲で盛大にいちゃつくがよい。


 ……冷静に考えると私一体何目線なんだろうね。

 少なくとも今の私ミラちゃんともフレッドくんともロクに接点ないもんな。


 まぁ、知り合う機会があったとしても正直あんま関わろうとも思わないんだけども。

 あのゲームからの時間軸よりは確実に今先なのは確かなんだけど、そうなると私の知らない続編ワールドに紛れ込んでる説があるわけで。

 前作主人公が仲間になったりする展開になったら色んな意味で危険な気しかしないので知り合うのはやめておこうとしか思えないんだ。

 ミラちゃん妊娠してるっていうから、じゃあ彼女が仲間になっても戦闘に参加したりするような事にはならないと思うんだけど、前作主人公が仲間になるっていうその事実だけで何かヤバいフラグ踏んでる気しかしないからね。

 というか万一そんな事になったら私も何気に主要キャラかそれに近い立ち位置のキャラ、って可能性出てくるから……一切そんな事はないモブでいさせてほしい。なので私はミラちゃんとは会える機会があったとしても会わないぞ……!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ