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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
一章 自衛のために好感度とかもっとわかりやすくしてほしい

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春の訪れ



 さてそういうわけで花祭り当日である。


 切り花にしてもある程度長持ちできるやつは私たちが花を編んでた時点で飾り付けたりしてたけど、定期的に霧吹きで水をかけたりしていたし何かもうその時点で祭りが目前、という雰囲気がしていたので私もついそわそわしてしまった。


 春の訪れを祝う祭り。

 ここら辺は北国って感じじゃないから冬の時点で雪に覆われて真っ白、とかでもないから例えば冬が終わりそうな雪が溶けつつある、みたいな感じの春の訪れはあまり感じられないけれど。

 けどやっぱり枯れ木みたいになってた木々から小さな芽が出ていたりだとか、草もすっかり生えなくなった地面から少しずつ伸び始めた草だとか、そういうもので春の訪れを感じ取る事はできる。


 あと、地面見てると冬の間はいなかったアリとかがね、時々いるなっていうのも春になってきたんだなっていうね……春の訪れを感じるにはちょっとどうなのかなって思わなくもないんだけど。もうちょっと華やかな訪れを感じたかった。


 ともあれ、花祭りは始まった。


 祭りの始まりの時点でまず一度高所から花びらを撒くらしく、上から色とりどりの花びらが降ってきた。同時に風の魔法を使える人が簡単に風を吹かせたのか、降りつつも風に乗って舞うそれは、カラフルな雪のようで。


 これ全部白い花びらとかだったら雪と見間違えたかもしれないな……春の訪れ祝うっていうのに冬を彷彿とさせるのどうなの?

 なんて思ってしまう。


 街のそこかしこで出店が出ていて、いつもは閑散としている通りも今日ばかりはとても賑わっている。

 普段から賑わってる所は更に、といった感じだった。


 ずっと上から花びらが舞ったり降ったりしてくるようならうっかり鼻で吸い込んだりするかもしれないな……なんて危惧したものだけど、花を撒くのは決まった時間にやるらしいので、一度目が終わった後はしばらくはないらしい。

 ギルド長に聞いた。

 花を撒くのは祭りの始まりの時と、あと中盤で一回、それから終わりごろ、の合計三回らしい。


 去年私が花祭り始まる前は外に出てなかったのは今更言うまでもないんだけど、祭り終わった後いつ外出たんだったかな……翌日とかだとうっかり掃除しそこねた感じでそこかしこに花びら残ってそうだし、そうなれば気付いたはずだけど……花祭りの存在自体気付かなかったわけだからな。

 んーと……あ、そうだ。去年の今頃花祭りって事は祭り終わってから数日後だな私外出たの。


 あちこちに飾り付けられた花を見て、ついでに出店も見て回る。

 あ、あれ私が編んだやつ。へー、ここに飾られたのか……あっちのはディットさんが作ってたやつだな。何かやたら超大作になってたからあれは覚えてる。

 ノーマル花冠ならともかく、そこから更に花でウィッグでも作るんですか? みたいな感じで編み込んでたものだからどこに飾るやつなんだろうって思ってたけど……髪の毛の一房、みたいに伸びていたそれは建物の柱に巻き付けられている。

 建物に直接飾り付けるにしても、一輪一輪ちまちまやるよりは確かにああした方が手っ取り早いし祭りが終わったら速やかに撤去できそうだもんな……あれ実際に花冠として頭に乗せたら柱に巻き付いてる部分は間違いなく地面に垂れて歩くたびに引きずっていたに違いない。


 とはいえ、全部が全部誰がどれを作っていたかなんてわかるはずもない。

 多分あれ私が作ったやつかなー、みたいなのはちらほら見かけたけど、でも絶対私が作ったやつ! とまで断言はできない感じなんだよね。

 まぁ、他の場所でもああいう感じで色々作ってたらしいから、私が作ったやつかもしれないな、と思ったやつが実は全然違う人の作でしたなんてオチもあるはず。


 屋台でチョコバナナ売ってたからとりあえずそれを注文して早速食べる。


 食生活は前世とあまり変わらない感じなのが救いだよね。とはいえ世界観的に米が主食って感じじゃなくてパンが主食っぽいので、時々とてもお米が恋しくなる。

 売ってないわけじゃないけどね、ちょっとお高いのよね……


 綿飴もあってそっちも気になったけど、流石にチョコバナナに続いて甘いものの摂取は口の中がとんでもない事になりそうなので綿飴は保留。

 ちょっと離れた所からなんとも言えない香ばしい匂いが漂ってきたから、多分向こうにしょっぱい系の食べ物があるっぽいのはわかった。

 焼きそば、お好み焼き、串焼き……そこら辺はあるよねきっと。何かソースのいい匂いするもん。


 食べ物以外の屋台もあったけど、まずはお腹が空いてるので食べ物を見る事にする。

 屋台の食事とか前世だったら衛生面が! みたいに言われてたけど、でもやっぱりお祭りで食べる食べ物って妙な魅力があるよね。お祭りの雰囲気ブーストとか絶対かかってる。魅了魔法まではいかないけど、というか魅了魔法に関してはあるのかもよくわからない。

 あったとしても禁忌扱いになってそうな予感。


 ゲームであったっけ……?

 ステータス異常は毒とか麻痺とか眠りとかあったのは覚えてるけど、魅了はどうだったかな……混乱はあったような気がする。あと暗闇。よくあるRPGの状態異常ラインナップ。


 というか、魅了が実際の状態異常にあったとしてもそれとは別の洗脳魔法みたいなのがありそうなのよね。彼女が作ったゲームだと。

 大体テストプレイすると最初と最後で全然話違うじゃん、みたいなのになってたりするから、初期にあったような気がする設定がいざ完成版プレイしてみるとなかった事になってるとかもよくある話だったもんな。それはフリゲに限った話じゃないからとやかく言うつもりもないけど。

 しかしこうして恐らくあのゲームの世界と同じようなものに転生した身としては、この世界どういう感じのやつなの? っていうのはハッキリしてほしい。切実に。

 今はまだ胃が痛くなるようなドがつくシリアス展開もないし、地獄を切り抜けたと思ったら更なる地獄が! みたいな絶望的な状況でもない。

 けれど、彼女が作ったフリーゲームをいくつもテストプレイしてきた身としては、だからこそ油断ができない。完成版は彼女の個人サイトにひっそりと展示されてるだけだったけど、何がどうしてそのサイトにたどりついたかわからない他の人たちはさ、体験版みたいな状態の、話が二転三転してた頃の部分なんて知るはずがない。だから最初から最後までシリアスたっぷり! みたいな作品でも何とも思わないのかもしれないけれど、未完成版のテストプレイしてた私からすればブレ幅っていうの? 反動? まぁなんていうか落差が酷すぎてね。


 だって最初はとてもほのぼのとした展開だったんだよ。

 あっ、今回のゲームは主人公が町の人たちと交流していくほのぼの系なんだな、って思ってたのにバージョンアップしてちょっと前回までのセーブデータ引き継げないから最初からプレイしなおして、とか言われてさ、プレイしたらほのぼのがログアウトしてデスゲーム始まりました、なんてのもあったからね!?

 当初は引っ越してきた主人公ちゃんに色々教えてくれてた近所のお兄さんポジションだったキャラが最初の刺客になってたとか、そんな驚きいらないよ!


 他の人はさ、優しいお兄さんだった頃のそのキャラなんて知らずに最初の敵として認識して倒すだけだったかもしれないけど、私にとってはかつてのお兄さんの記憶がある分倒しにくいわ! ってなるわけで。

 もういっそ開発途中のネタとかも全部ブログで晒してくれ。そして他の人たちにその地獄を分配してくれ、って時々すんごい思ったよね。なんで私だけ地獄度余分に多く存在してるの……? テストプレイヤーだから? それにしたってそういうサプライズは正直遠慮したいくらいなんだよな。

 私の気持ちは他のプレイヤーとは分かり合えないし、分かり合えそうなのは製作者である彼女くらいなんだけど、その彼女が元凶っていうね。


「よーっす、楽しんでるか?」

 あまり考えても仕方のない事は考えないようにしよう、とか思ってもどうしてもふとした瞬間に考えちゃう罠に陥ってた私に声をかけてきたのはカイルさんだった。

「って、聞くまでもなかったか?」

「あ、はい。ここの串焼き美味しいですね。焼き加減が絶妙で」

「ははは、そう言ってもらえると嬉しいねぇ」


 ちなみに一本目を食べ終えて二本目の追加注文をしたところでカイルさんに肩をぽんと叩かれたわけなんだけど、カイルさんに答える間も惜しいとばかりに二本目の串焼きにかじりつく。

 店主さんも褒められて悪い気はしないらしく、にっこにこ。私は串焼きが美味しくてにっこにこ。

 ついでに私が話す暇があるなら食べるわ、とばかりに食べてるせいか、カイルさんも「オレにも一つ」と買う流れになって店主さん更ににっこにこ。

「お、ホントにウメェ」

「焼き加減もだけど、塩と胡椒の量がいい仕事してるよね。薄すぎず、かといって濃すぎない。あ、次そっちのタレのほうください」

「まいどー」


「てかお前、マフラーで口元隠してる割に綺麗に食うなぁ」


 なんて感心したように言われたけど、一応私だってあれだぞ。食べる時はちょっとだけマフラー口元より下に下げて食べてるから。隠してるのは喉のあたりであって、別に口元は晒しても何の問題もない。ただ、首を完全ガードとばかりにマフラーで巻いちゃうと、絞まりすぎる気がするから口元あたりまでふわっと巻いてるだけで。

 あと黒いマフラーだからうっかりタレがついたとしても汚れは目立たない。ただ、口元付近の汚れになるので匂いは常に、って感じになるかな……

 常に漂うタレの香りとか、嫌な臭いではないけれどそのうちどっかで小腹空きそう……

 あと甘いもの食べてる時にタレの香りがしたらそれはそれでなんというか……うん。まぁ汚してから考えよう。今はまだ汚してないのでセーフセーフ。


 正直まだ食べたいけど、他の店のも気になってるからここで満腹になるまで食べるわけにもいかない。名残惜しいが店主さんに美味しかったです、と再度告げて私はその場を立ち去った。


「で、次はどこ行くんだ?」


 何かカイルさんがナチュラルにくっついてきた。

「次は向こうの焼きそばいこうかなって」

「お、いいねぇ! あの店去年も焼きそばやってたけど、味は保証するぜ!」

 おっと去年食べた事のある経験者か。経験者の言葉なら信用できそう。私とカイルさんの味覚に激しく違いがなければ。


「そういえばカイルさんはどうして?」

「あ、見回り。毎年祭りの時期はほら、どうしたって浮かれるだろ。で、浮かれた空気に便乗して悪事働こうってやつはどうしても出るからな。見回りだよ見回り」

「ギルドのお仕事ですか? え、じゃあボクも見回った方が……?」


 正直そういう話ギルド長から一言も言われてないんですが。え、もしかして私が知らないだけで実は前にそういう話出てた? だとしたら危うく見回りサボるところだったわけか。あっぶな……

 なんて思っていたが、カイルさんは「いやいや」なんて言いつつ片手を振った。


「基本的な警備は騎士団が。街の見回りは自警団がやってる。オレたちギルダーは大半が自主的に、って感じのやつだ」

「自主的……」

「そ。騎士団は街のお偉いさんがいるあたりを中心に。自警団がそれ以外の場所を、って分担してるけどそれでも騎士団や自警団の目を盗んでやらかす奴はいるし、そういうの放置しておいたらそのうちこっちに応援要請来る場合もあるからな。

 依頼を出されたわけじゃないが、ある程度の人数が手伝いに回ってる。何事もなければそれで良し、こっちが手伝った事で何かに貢献した場合は後日謝礼金とか届けられるから、タダ働きってわけでもない。どのみち騒ぎになってその場に居合わせたらどうしたって解決に乗り出すわけだから、ま、なんだ。

 見回りって言ってるけどオレたちも普通に祭り楽しんでるだけだな」


 にかっと笑うカイルさんに、私は「あー」とそういう事ねという感じで声を出した。

 自警団だけじゃない、ギルドの人も見回りしてますよ、となればまぁ、悪事を働こうとしてる奴からすれば抑止力になるのかもしれない。

 いや、やらかす奴はそれでもやるんだろうけれども。


 けど露骨に見回りです、みたいな物々しい雰囲気出してたら今度は普通にお祭り楽しんでる人が何事? みたいに思うかもしれないし、あくまでも普通に祭りに参加してますよ、のていでいる……ってことでいいのかな?


「ま、そういうわけだから、しばらくは便乗させてもらうぜ」

「はぁ……」

 まぁ、私はギルドで手伝いをしてるとはいえ、いかにもなギルダーって感じではない。カイルさんが一人でそこらをぶらぶらしているよりは、私がいる事で見回りしてる感じも薄れるから油断した悪党とかをあぶり出せる可能性もあるのかもしれない。

 そこまで考えてるかどうかは謎だけど。


 ゲームで知ってる範囲のカイルさんだと裏表はあまりなさそうだったし、天然なのか意図的なのかこっちも判別に困るんだよね。まぁ、敵対してるわけじゃないから私が今何かを心配する必要はなさそうだけど。


 なんて思ってたのが駄目だったのだろうか。

 焼きそばを購入し、ちょっと落ち着いて座って食べようと思って移動した先で、私はまんまと巻き込まれてしまうのである。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 知り合いの作ったゲームが製作途中でぜんぜん違う話になるってことがよくあったって話何回やるんだよ まだ23話なのにもう5回ぐらいは見たぞ
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