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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
二章 攻略本とまではいかないけど攻略のヒントもない時点で人生の難易度は高め
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知らず解決



 そもそもの話、私らは部外者では? と思わないでもないのだが、ロッドさんは一応いてほしい、と言ってルーウェンさんとディットさん以外のこの場にいる人――つまりはギルド長と私とマトハルさん――も席につかせた。

 他にもまだギルダーさんがたがいたらどうなってたかはわかんないけど、少数なら巻き込んでも問題ないと思われたのだろうか。

 というか、これ明らかに巻き込みだよね。私がいらん事言ったからって可能性もあるけど。


 ルーウェンさんがスタンジーへ行き、そこでこのロッドさんの……なんだったっけ、セグルス家? そこに行く用もあったからって事で足を運んだ時に、家の人間死んだっていう話が出てたんだったよね。

 魔法の研究絡みでセグルス家とリースラント家はそれなりに関わりがあったし、そういう意味で関わる事が多かったのはロッドさんのお兄さんだったけど、ルーウェンさん曰く弟の方がとっつきやすかった、と。

 私が知る情報は大体この辺だ。

 セグルス家の人が死んだって話が流れるより少し前にロッドさんが家出したとかどうとかで、もしかしたらこの弟が家の人間を殺したのでは説とかも出てたって話だったと思うけど、ルーウェンさん曰くあいつを知る人間からすればそれはない、との事。


 うーん、そう、だろうか?


 私はそんな詳しくないからそう思うだけかもしれないけど、確かにロッドさん、見た目はとても儚げなんだよ。何かこう、幸薄いっていうか、幸せになれなさそう。

 漫画とかならヒロインに片思いしてるけど絶対その想いが報われる事はなくて、挙句自分が犠牲になって最終的に死ぬとかそういう終わり方迎えてそうなイメージがとても強い。

 あくまで見た目から得られる印象だけど。


 その報われなさから読者人気はそこそこ高そうだし、なんならどうしてこの人とヒロインはくっつかなかったのか、とか言われたりしそうな程度には人気でそうな感じなんだけど……


 だからといってこの人が犯罪をやったりしないという保証にはならない。


 一見するととても穏やかで人を傷つけるなんて事しそうにない人が実はとんでもねぇ凶悪犯罪の犯人だった、なんて前世だと割とあるあるだったからね。むしろ見た目からして明らかに凶悪犯ですやん! みたいな人ってそんないなくない? 海外とかは割とこう、筋肉とかタトゥーとかでごつい見た目してそれっぽい雰囲気の人とかはいたように思うけど国内だと逆にそういうの少数だったような……


 うーん、でも、仮にロッドさんが家の人間を皆殺しにしたとして、こうして堂々とギルドに所属して依頼こなして生活してるか、ってなるよなぁ……や、意外と普通の生活してたら怪しまれてもすぐにその疑いが向けられなくなったりする事はあるけどさ。


 とはいえ、スタンジーでロッドさんの家の人たちだけではなく、他の貴族も数名死んでるって話だったしロッドさんが何かを知ってる可能性はあるわけで。



 椅子に腰を下ろしたロッドさんは、テーブルの上に腕を乗せ僅かにではあるが顔を伏せた。

 角度的にとても……儚い雰囲気たっぷりです……


「正直な話、僕はあまり詳しい事を知らない。スタンジーでの貴族が死んだ話は確かに僕があの街を出る前の話だったけれど、あれの大半は恐らく自滅だろうし」


 ロッドさん曰く。

 最近街の周辺で魔物を見る回数が増えてきた、とかでちょこちょこギルドに魔物退治の依頼が出るようになった頃、スタンジーの貴族たちの間だけで研究成果を発表し合う催しが開催される予定だったのだとか。

 予定だった、という時点で開催はされていないらしい。

 大々的というよりは内々での、それこそ個人的な、とでも言おうか。ともあれ、そういった感じだったらしい。


 開催時刻だとか場所だとかを決めて、あとはその日を待つだけ、というはずだったようだけど、ロッドさんは不参加だった。というかそもそも研究成果の発表するにしても、それをやっているのはロッドさんではなくお兄さんだったようなので、参加するのは兄で確定している。

 ロッドさんの家は兄が研究発表を、両親が見学というか見物というかで参加するつもりらしかった。

 その手の集まりがどういう感じでやるのかを私は知らないので、そこはふーんと流す。


 ただ、その発表会のついでに親睦会とかもやろうとかいう話が出ていたのは間違いないらしい。


 なんていうか、私が前世で読んだライトノベルとかに出てくる貴族と比べると随分とゆるい雰囲気だなと思えてしまう。お茶会だとか夜会だとかとはまた違う感じで集まって魔法の研究成果次第かもしれないけど、協力関係になればより発展できそうだとか、手を貸してくれればうちの研究が大いに捗るだとか、そういうのもありそうっちゃありそうなので、そこも聞いてる分には別におかしいとまでは思わない。


 でもそういうのって、発表終わってからじゃないかな? と思いはしたけど。

 ルーウェンさんもそう思ったらしく、怪訝そうであった。


「研究内容次第では、今後さらに忙しくなると判断されたのかもしれない。ともあれ、事前に打ち合わせを兼ねて、という話で兄が呼ばれていった」


 研究発表するのが兄なら、呼ばれるのが兄なのは当然の話か。


「ところでその日僕は何故か途轍もない寒気に見舞われて、最初は風邪を疑ったのだけれどそれらしい症状は寒気以外一切なく、医者を呼ぶのも……と思って自分から病院に行く事にしたんだ」


 貴族なら医者を家に呼ぶ方が確実っぽいけど、寒気以外はなんともないとなると確かにそれで呼ぶのはちょっと……と思えるのは私の前世の価値観からだろうか。そりゃあ動くのもしんどい、くらいになってたら行くより来てもらった方が、とは思うけど自力で行けるならそっちの方が確実っぽくはある。


「ちなみに医者からは特に問題ないと言われてしまったので、すぐに帰る――つもりだった。

 家に戻ろうとして近づくにつれ、ぞわぞわとした寒気が背筋を走る感覚がして、どうにもすぐに家に帰れなかったんだ」


 なんというかそれは……風邪というよりは嫌な予感がして、とかそっち系統で言われれば納得できそうな気がする。虫の報せとか第六感とか。


「このまま家に帰るのはマズイと思いつつも、他に行くアテがあるわけでもない。無意識に重くなる足を引きずって家に戻れば――皆死んでた」

「それは……」


 ルーウェンさんが何かを言おうとしたようだけど、言葉にならなかったらしい。まぁ、何を言えって話になっちゃうよね。


「何があったかはわからない。ただ、あの時もしずっとその場にいるのも危険だと思った。それ以前に外出しなければどうなっていたかもわからない。何が何だかわからないままに、とにかく逃げる事にした」


 うーん、まぁ、わからなくもない。

 もしかしたら家の人たちを殺した殺人犯がまだ家の中にいた可能性とかあるわけだし。


 あ、でもその逃げた結果が彼に疑いの目を向けてしまったって事か……この場合どうするのが最適だったのかわかんないなぁ。

 そうある話じゃないとは思うけど前世の映画とかで見たパターンだと、こういうのって駆け込んだ先の警察――こっちだと騎士団か、それと犯人が手を組んで、とかいうのもあったりするからね。

 正義の側だと思った相手が実は、みたいな展開いっぱいありすぎて最早王道の域に到達してすらいる。もう何を信じていいのかわからない。

 主人公なら信じられるって思っても実は主人公の方が悪の側でした、みたいなどんでん返しとかもあるからな……もう何を信じていいのやら。


「ま、その犯人は先日どうにかしたんだけど」

「したのか」

「したよ」


 きょとんとした顔をしたのは私だけじゃなかった。思わず聞き返したルーウェンさんも今なんて? とか言い出しそうな感じの顔をしている。


 えっ、あの、こういう時って割と、犯人の手掛かりを見つけたからこれから犯人に引導を渡してくる、とかそういう展開になるとかでは……? もう終わってるんです?

 いやまぁ、映画とかはそうかもだけど現実がそんなタイミングの良さを常に発揮するかっていったらそりゃしませんけど。


「ちなみにその犯人は……?」

 ディットさんの質問にロッドさんは事も無げにさらりと答えた。

「少し前からこの辺りで幅効かせるようになったマフィア。

 あと発表会に参加する予定だった家の一つ」


 その意味をルーウェンさんもディットさんもしっかり理解してしまったのだろう。うわ、とか恐らく無意識なんだろうけど低い声が漏れ出ていた。


 えーと、つまり、その参加予定だった家の人がマフィア使って、って事だよね……?


 そもそも既に事件の犯人はどうにかされちゃった後、という事で展開の早さについていけてない。思わず私はギルド長を見たし、ギルド長もちょっと理解が追い付いてませんよ、みたいな感じで首を傾げていた。

 マトハルさんは特にこれといった反応をしていない。恐らくはもう犯人どうにかなってるなら解決済みだし興味もないな、といったところなんだろうか。


「どうにも他の家の研究を奪うつもりだったらしくてな。偽装工作までしてご丁寧にやらかしてくれたよ。あいつらは、僕が生き残っていた事は知らなかったらしくてぼろを出してくれたからどうにかできたけど」


 偽装工作って事は、恐らく襲われた家の一つとして紛れてたって事かな。他の家は死んでるけどここだけはかろうじて生きていたとか、はたまたたまたま出かけていて被害に遭わなかったけれど使用人が被害に遭ってしまったとか。


 というかこの人たった一人生き残った状態でそこから事件解決させたの? 一人で?

 ……強くない?

 ルーウェンさんの話だと人を殺せるような感じじゃないみたいな言われ方してたじゃん?

 確かに見た目からして虫も殺せそうにないくらい儚~い感じするけど、でもマフィアとかそれと手を組んだどこぞのお家の人倒しちゃってるんだよね?

 実は見た目に反してとんでもない武闘派なの……?

 とてもそうは見えないんですけれども……?


「だからもう、他の貴族が狙われるって事はないと思うんだけどさ。

 問題が一つ」


 大真面目な顔をしたロッドさんに、事件解決してるっぽいのにまだ何か問題が……!? と私は思わず固唾を飲みこんで見守ってしまっていた。いやだって何か知らんけどマフィアはもうどうにかなってるんでしょ? で、黒幕らしき家も。これで残党がまだ残っていてとても一人じゃどうにもできない、とかならまだしも、そういう感じでもなさそう。


 そんな風にロッドさんの次の言葉を待っていれば、彼は痛ましいとばかりの声で言った。


「…………金が無い」

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