現在進行形で未確定
ところでギルドにお手伝いとして時々行くようになったわけですが。
ディットさんと出会う事はなかった。いや、後から冷静になって考えたけど、お手伝いとして行った時に遭遇したらどうするかな、って思ってはいたんですよ。
まぁ、今の今まで一度も出会ってないからその心配も杞憂なんだけど。
とはいえ、これから先遭遇しないとも限らない。
いやでも、ある程度時間経過してるからな……もうこっちの事とか忘れてる可能性もあるのでは？
もしくは、あの時私が使った回復魔法見て、ギルドに勧誘とかそういうやつだった可能性もある。
まぁ、どっちにしても会ってないのでその辺は全部推測だ。
そんな事よりも。
ゲームで見かけた事のある人が他にもいた。
カイルさんがいたのでもしかして、と思ってたけどいたんです。いたんですよ他にも。
彼の後輩にあたるフレッド君。主人公の仲間になる剣術科に通ってた人。
でも彼学校卒業してた。
えっ、てことはつまりここ、私がプレイしていた時点でのゲームよりも時間軸先、ってコト!?
なんてこった、それじゃ原作知識みたいなもの全く役に立たないやつじゃん。や、どのみち最初から役に立ってないけど。
フレッド君の見た目は基本的に平凡っぽい感じだ。
茶色い髪、といっても染めたみたいな感じじゃなくて落ち着いた色合いで、目も同じく。平民には割とよくある色合い、とも言われている。
……貴族とか平民とかで色って変わるものなの？ と思うけども、言われてみれば貴族とか金色とか銀色の髪の人多いような気がするな。
それとも、この国の、とかそういう意味合いだろうか。
この国とは別の国とかだとまた色合いが異なる可能性はある。
ほら、肌の色だって南国と北国じゃ違うわけだし、髪や目の色だってそうなると異なっていてもおかしなものでもない。
けど平民、って言い方だとやはり貴族と比べてると考えるべきかな。
そこら辺どうなってるんだろう。わからぬ。
……というかだ、今普通にフレッド君とか気軽に呼んでるけど実際は年上なんだよな。私がプレイした時点ではむしろプレイヤーだった私の方が年上だったけど、今の私の年齢はテストプレイしてた時のフレッド君と同年齢。
そしてフレッド君は既に学校を卒業し、ギルドで働いている。つまり現時点で年上はフレッド君……いや、フレッドさんである。
この国での成人は十八歳からだけど、既に成人してるってよ。
そしてなんと、彼は既に結婚しているらしい。おっと？ お相手はどなただ？
テストプレイの時点で何かいい雰囲気だった主人公ちゃんか？ それとも喧嘩ップルの雰囲気が漂いつつあったキャンディさんか？ はたまた大穴としてアンリさんか？
思えば主人公ちゃん視点だと仲間になる男性キャラで一番身近にいたわけだけど、視点変えるとフレッドさんてばハーレムチームの主みたいになってませんかね？
仲間自分以外女って傍から見ればハーレムもどきだと思われても何もおかしくないぞ……？
なんて思って気になったものだから、新入りか？ みたいに声かけてきた時にちょっとした自己紹介ついでに世間話して情報を得た結果、結婚相手はどうやら主人公ちゃんらしい。
ゲームだと任意で名前を決めなきゃいけなかったし、デフォルト名はなかったから私何て入力してたっけな……グラフィック的に可愛らしい感じだったけど、当時の私はちょっとネタに走りたい気分だったから確か主人公の名前はアネゴにしてたような気がする。
皆が主人公ちゃんの事を「アネゴ！」って呼ぶ。仲間はまだしもどこぞのお偉いさんもだ。
学校内の行事によるクエストみたいなので、先生が説明したりする時も、
「アネゴ！ くれぐれも気を付けるのですよ」
とかそういうセリフになってて、いやそこだけ元気一杯アネゴ呼びしておいてすぐさま冷静さ取り戻すんかい、ってなったっけな。
まぁ、もっと酷い名前つけたりするプレイヤーも世界にはいるし、私のこの名前はまだ可愛いものだと思う。
でもこの世界での主人公ちゃんは当然アネゴなんて名前ではない。
どうやらミラさんというようだ。
思った以上にマトモなお名前……ッ!!
一応サラッと外見的な特徴聞いてみれば髪の毛の色と目の色が一致してたし、主人公ちゃんで合ってる。
そっかー、どういう経緯があったかはともかくくっついたのかー。リア充末永く爆発しろ。
更に更にフレッドさんから聞きだした情報から推察すると、当時仲間だったアンリさんは現在故郷へと帰っているらしい。サポート系で回復魔法も得意だった彼女がここにいたら、間違いなくギルドのマドンナ的立場だっただろうに。
なんでも故郷に婚約者がとかどうとか。えっ、そうだったの!? テストプレイ時点で私が知る限り、そういうのなかったからな……ただ、ゲーム内でアンリさんは恋愛とかする意味ない、みたいに言ってたからてっきりそういうのに興味がないかはたまた百合要員かと思ってたけど、故郷に既に婚約者がいるというのであれば恋愛する意味がない、というのもわからんでもない。
そして主人公ちゃんと同じく攻撃魔法が得意であったキャンディさんだが。
こちらは他の国のギルドへ移籍したらしい。まぁゲームしてた時点で確か世界を色々見て回りたい、みたいに言ってたシーンがあったような気がするので、別に驚くものでもないかな。
案外その後の話が平和っぽくて逆に不安もあるんだけどね。
え、これ数年後に何かあった時に謎の死を遂げるとかそういうのあったりするやつ？ 無いよね、無いって言って。
私がプレイした時のゲームの内容だと主人公ちゃんは学校卒業目指してたし、でも既に卒業してるって事は成人もしてるわけだ。
って事は少なくとも当時の年齢からプラス２か３くらい、かな？
カイルさんの見た目は特に変化ないから年をとってたってわからなかったや。
……と、まぁ、これだけなら？
平和時空ワンチャンあるのでは？ とか思うわけだ。
嵐の前の静けさとか言ってくれるな。それは流石に私も遠慮したい。
けど、私の知るゲームの展開と同じであるならばいるはずのない人物もまたギルドにいたのだ。
彼の名はマトハル。少々目つきの鋭い黒髪黒目の青年である。
……この人もね、私ゲームプレイしてた時に見覚えはあるんですよ。ただ、ギルドの人ではなかった事だけは確かなの。
もっというと、敵だった人なんですけど。
え？ 何でいるの？ マジで何で!?
私がテストプレイしてた時点でのマトハルは、この国の盗賊たちをまとめ上げていた犯罪組織の親玉みたいな存在だった。
行くアテなくして犯罪者になっちゃったアウトローたちを集め、国の騎士団もおいそれと手出しできないくらいに巨大化した組織のトップ。
普段は冷静沈着だけど戦闘時には狂戦士のような変貌っぷりをみせたりするややイッちゃった系悪役。
その顔立ちだけならビジュアル系バンドとかにいそう、とか言われそうな雰囲気もあるけど、やめてくださいビジュアル系バンドに対する風評被害ですよって前世の私は突っ込んだ記憶がある。
頭も切れるタイプなので、参謀の役割もこなしていた。
実際、ゲームプレイしてた時に戦ったけど、強かった。レベル上げとかそこそこやっててその時点での魔物との戦いとかは余裕だったのにこいつとの戦いは余裕どころか苦戦してたしあと何ターンか戦闘続いてたらじり貧からの負けルートに入ってたと思う程度には苦戦した。
レベル上げを怠ってたらきっと何度か全滅してたに違いない。
もしかしたら倒す際の攻略パターン的なものがあったのかもしれないけど、そこら辺考えずに普通に戦ってたらかなり苦戦したのは事実。
で、倒した後弱った彼は後から応援に駆けつけてきた騎士団に捕まって、多分その後処刑されてたはずなんだよね。処刑シーンは直接なかったけど、でも国一つを騒がせて幅を利かせてた盗賊団の首領ともなればタダで済むはずがない。
イベント後に街の人たちの話で死んだっぽいのは聞いたし、流石に生きてました、とはならないだろう。何らかの司法取引でもしたとか？ いやでもこの世界の司法どうなってるのか微妙だけど、そうまでして生かす理由とかあるかな……？
その先のストーリーはわからないので何か変更したとかその後とんでもないどんでん返しがあったとかって可能性もゼロではないので何とも言えない。
何でその先のストーリー把握してないんだ、って言われると、その後にあったイベントでフリーズするバグが発生して知り合いにここから先何をどうやってもフリーズする、って連絡入れたらそれの修正に入ったっぽいんだけど、私がプレイしたのはそこまでだったから。
その後の手直しされたやつでまた不穏なイベントとかストーリーぶち込まれるんだろうな、とは思ってたけどその後リアルの私に何らかの出来事があって死んだっぽいしな。
じゃなきゃ私が転生してるはずがない。
一度だけ、これ転生じゃなくてリアルな夢とかではないよね？ って思ってみたしその時点でほっぺたつねるとかちょっと衝撃を与えてみるとかしたけど、まぁ現実でしたよね悲しい事に。痛い目を見ただけだった。
しかしマトハルがギルドにいるのは一体どういう経緯だ……？
彼がここにいる、って事は盗賊団は？
主人公ちゃんたちが倒したはずの盗賊団とかはどうなったんだろうか。
気にはなるけど、フレッドさんはマトハルの事敵視してる感じでもないし、カイルさんも監視してますみたいな感じでもない。
直接本人に聞くのが手っ取り早いのでは、と思わなくもないけど下手な事聞いて怒らせると私の身が危険だ。拳での語り合いとかまず負ける。というか勝ち目があると思う方がどうかしている。
気にはなるけど、深入りはしない方がいいんだろうな、というのが私の感想だった。
ますます私の知ってるゲーム知識は役に立たない感じすぎて、もうこれどうしたらいいのかさっぱりなのだわ。
なるべく日常を平穏に終わらせていくべく変なフラグは立てないようにしないとな……
