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一体どうしろと  作者: 猫宮蒼
序章 難易度選択にイージーがない時点で人生はクソ
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この状態から入れる保険があるなら教えてほしい



 何の前触れもなく転生してるな、と気付いたのがついさっき。


 人生詰んだな、って理解したのもついさっき。


 いや、これ一体全体どうしろと?


 そんな感じで私はとても途方に暮れていた。



 前世、異世界転生ジャンルのライトノベルはそれなりに嗜んでいた。

 仕事の人員的な都合上から休憩時間は基本的に一人だったので、ご飯食べた後は大体暇を持て余していたのもあって、その間にちまちまと気になって買ったままだった本を読み始めてたんだけど、そこから同じ作者さんの他の本も……みたいな感じで手広く手を出していったら、そのジャンルに流れ着いたんだったと思う。

 本を読むのは職場の休憩時間だけで、家に帰ってからは基本的にゲームに手を出していた。

 仕事と食料とか生活用品の買い物以外で滅多に外に出ないレベルで引きこもり一歩手前だった私が、なんで転生してるんだろうか……?


 ちょっと前世の自分の死因が思い出せないんだけど、これ私が把握する前に死んでたって事?


 いやうーん、まぁいいか。

 下手に死亡原因覚えてたらそれはそれでトラウマになってそうだしね。


 転生したって気付いた時点で異世界転生のラノベを思い浮かべたのは、まぁなんというかそういう事だ。


 異世界転生の中には前世で自分がプレイしていたゲームの世界と同じだろう世界に転生してしまった、みたいな話もたくさんあった。

 有名どころは悪役令嬢とかだろうか。

 悪役令嬢に転生した結果、このままゲーム通りになってしまったら断罪イベント待ったなし! 追放される程度で済めばいいけど処刑されるのだけは避けたい、なんていうものから、前世の記憶を思い出したのは断罪イベント終わってからでした、みたいなものまで幅広く。


 悪役令嬢以外でも、モブだと思うけど何故か主要キャラがぐいぐいくるだとか、気付けば仲間入りを果たしていただとか。

 いやあの自分に世界を救う力はないです健やかにモブでいさせて……みたいなのとか。


 はたまた主要キャラではあるけれど、途中で主人公庇って死ぬ運命を持つ人物になっていただとか。


 まぁ、ゲームの世界に転生しました系はそれこそ大量にあるわけで。

 けどだからって自分がそうなるとは誰も思わないわけよ。ああいうのは特に何も考えずに気楽に話を読んで楽しむものでは?

 ゲーム以外の世界に転生してる話も含めると大量にあるので、何かこう、今の自分をどうにかするような妙案とかないだろうか、と思ったのだけれど何にも浮かばなかったよね……



 ここがゲームそのものの世界だとは思わないけれど、恐らく限りなくそれと同じ世界だろうな、とは思っている。

 思っているのだけれど、それだけだ。


 ゲームのタイトルなんだっけ……いや、有名どころのゲームならまだわかるよ?

 あと前世で自分がハマって遊び倒していたゲームとかなら私だってここまで困らなかったよ。


 フリーゲームなんだ。よりにもよって。

 お店で売ってたりするようなゲームソフトですらない。中にはプロも交じってるらしいけど、大半はゲーム作りを趣味にしていたりするアマチュアの作品。

 無料で遊べるし、クオリティは勿論アマチュアなんでお察し案件ものからえっ、これ本当に無料でプレイしていいの……? 振込先とかないのナンデ?? みたいなものまである。


 中にはフリーゲームから商業になった作品もあるので一概にどう、とは言えないものだ。


 自分も前世、それなりにお世話になった。


 けどさぁ、その、フリーゲームにしてもだ、自分が転生したなと思えるこれはマイナーもマイナー、ドマイナー。

 気持ち的にはドドドドドドドドドマイナー、くらいのものだ。


 多分ネットで検索してもひっかからないレベル。

 何故って?

 このゲームの製作者は私の知り合いだからだよ。

 よりにもよって個人で作ったはいいけど、フリーゲームを投稿するサイトに出すにはまだちょっと……とか言って公表すらしてない代物だったんだよ。少なくとも私が前世でご存命だったうちは。


 私は時々デバッグ作業みたいなの手伝ったりというか、事前プレイしてバグがあったりしたら教えるとかそういうの担当でもあったんだけどさ。

 最初の時点であまりにも色々バグが出て修正していくうちに気付けばストーリーにも大幅修正かけられて、当初の内容と大分かけ離れてったんだよね。


 で、製作者……彼女の事だからその後から更にまた手を加えたりして話が当初のものから完全別物になってるはずなんだよね。

 最初のジャンルが恋愛ものだったはずなのに、途中で修正されてアドベンチャーあたりに軌道修正されて、そこから更にホラーに変わってた、っていうのがね、割とね、よくある話だったのね……


 だからね、正直今の私の知識絶対役に立たないってわかりきってるの。

 そして変更後のストーリー一切知らないの……


 ね? 詰んでるでしょ?



 いや、これだけなら別に詰んでるには詰んでるけど途方に暮れるレベルじゃないとは思うの、私だって。

 問題は私の境遇だよ。


 とある街のちょっといい家のお嬢さんとして私はこの世界に生を受けた。

 これだけなら割と幸先のいいスタートに思えるけど、つい先日家に強盗が入りまして。

 家族死んだよね。

 唯一の生き残りイズ私。


 ねぇちょっとおおおお!? 初っ端からどんな仕打ちよこれええええええ!

 って叫びたい気持ちをご理解いただきたい。実際に叫んだら近所迷惑になりそうっていうか、まぁいらん注目浴びるからしないけど。


 そしてこの時点での私の年齢、かろうじて二桁。というか先日誕生日迎えて二桁になったばかり。

 え、この年齢の少女に一人で生きていけと……? いや、有名どころの某ゲームでは十歳が成人扱いで旅に出る許可とか出てたけれども。

 でもあの世界観だからそれってまだ許されてる感じするけど、こっちの世界でそんな年端もいかないような年齢の子が一人でとか、間違いなく死ぬわ。


 あっちはボールの中におさまってくれるモンスターだしお子様から大人まで安心して見てられるアニメにもなってたけど、こっちは普通に魔物出るんやぞ。最悪死ぬわ。

 世界が私に死ねって言ってくる……被害妄想じゃない感じなのが余計に悲しみ。


 ゲームの世界に転生しちゃった、まではいいよ。でもなんでよりにもよって知り合いが作ってたフリゲの世界なわけ? 多分登場人物あたりはそれなりに知ってるだろうけど、この世界どういうジャンルになってるのかまったくわからない。最初ほのぼのしてたはずなのに手を加えていくうちにどんどん不穏な話にするタイプの製作者だからな……現に今の私の生い立ちも既に不穏なんだけど。


 せめてゲームクリアまでバッチリやりこみました、みたいなゲームの世界であればよかったんだけど、自分の知識もどこまでアテになる事やら……


 何も問題が起こらない、なんて思ってないけどせめて転生していた事実に気付くのと人生詰みかけてる事実に気付くタイミングはちょっとずらしてほしかったわ……誰に頼めばいいのかわかんないけど。神様とか? お参りでお賽銭ケチったとか思われたからこの仕打ちなの? ちゃうねんあの時は出費がかさんで大きいお金もなかったしその前に買い物したせいで小銭もちょっとしか残ってなかっただけなんですって……


 なんてここで懺悔しても意味がない。


 ともあれ、前世多分死んでしまった私は流石にこの年でもっかい死ぬわけにもいかない。

 正直死んだとしてももう悲しんでくれるような身内がいないっていうのもキツイけど、なおの事生きなければ……という気がする。


 とりあえず、まずは自分が覚えてる限りの知識を思い返してみよう。

 ストーリーは全くアテにならないだろうけど、登場人物の何名かは名前そのままで出てくるはずだろうし。


 問題は、当初の予定では仲間だったはずのキャラでも話が変更された時に敵に回った、なんていう変更が有ったりした場合よね。味方だと信じてたらサクッと殺られました、なんてなったら目も当てられない。


 家族のいなくなってしまった一人きりの家の中で、私はとりあえず紙とインク壺とペンを用意して覚えてる限りの情報を書き出す事にした。頭の中だけで考えててもうまくまとまる気がしないからね。

 とはいえ実の所あまり時間もないので急がなければならない。


 まとめられるかな……

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