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伍話 解決したが……解せぬ

ストックが尽きましたのでこの後は少し空きます。<(_ _)>

二人は暫く戻ってこなかった。いったい何処で喧嘩キャットファイトしてるんだろうか?


 接客に大忙しで何時の間にか商品は売り切れ。今日の仕事は終わりである。暖簾を下ろしながら二人が見えないか通りを見渡してみるが影も形もありゃしない。


「なんでこんな事に……」


 モテ期だと舞い上がっていたかなあ。モテると言う事はこのような修羅場が頻発すると言う事だと初めて気がついたよ。やはり慣れない事は身を滅ぼしかねないね。


 そうしてぼんやりと閉めた店の中で座り込んでいると店の表が姦しい。何だと思ってたらがらりと戸が開いて出て行った二人が帰ってきた。


「ごめーん! 少し話し込んじゃってさ! ほら、向こうにあるお社でね」


 そう由が言うと美代も口を開いた。


「お兄様! 話は付きました。これからは二人、お兄様に御仕えする事にいたしました」


 「はい?」


 何か聞き捨てならない言葉がでてきたぞ。


「何の話が着いたんだ?」


 恐る恐る切り出すと二人は満面の笑顔でこう言いやがった。


「仲良く二人で源三を分け合うの!」


「はあぁぁぁ?」


「あたいはさ、店もあるからお嫁に行けないし、かといって源三以外の婿なんて要らないから御妾さんでいいし!」


「美代が源三様の跡取りを、由さんが御店の跡継ぎを産めば万事解決ですわ!」


由が顔を染めてうっとりとしながら言う傍ら美代がどうだとばかりに胸を張り得意げに言ってくる。


「そ・そうですか……」


 自己解決してしまった彼女たちを見て俺はため息をつくのであった。


(この時代の女性はめちゃ逞しいわ。現代日本の比じゃないよね、これ)




 この話はたちまち親父の所に持ち込まれて承認された。由の母親は大乗り気だし親父たちも否は無いとの事むしろめちゃくちゃ祝福された。俺以外は全員ハッピーで俺だけが解せぬ状態になっている。


「どうしたの?源三、っと旦那様?なにか浮かない顔ですけど」


 由の店で黄昏いると由が心配そうに聞いてくる。


「いや、環境の変化に戸惑ってるだけさ、大丈夫」


「そう?養父様も良い方ね、私との式を挙げてもいいなんて、母さん喜んで泣いちゃったよ」


 そうなのだ、普通側室や妾とは華燭の式は挙げないのが普通らしい、もちろんこの時代重婚や一夫多妻が法律で禁じられていないので武士や商人などは居るのは珍しい事ではない。式迄挙げることはまず無いらしいが。


「まあ、榊原家の初代の作った家訓に{側室などを置く場合は大事に扱え、順序は必要だが式などはなるべく行ってやれ}というのがあるからな、面白い家訓だとは思うけどね」


 初代は全くユニークな人物だよな、衣服など見栄を張る事は嫌うくせにこのような部分は手厚くせよと言い残している。後本の収集家という側面があり我が家の庭には分不相応な書籍を収めた蔵まである。


「それよりさ、もう夫婦同然なんだしアレ・・しない?」


「え?あれってアレ・・ですか?」


「そっ、アレ・・よ」


 そういう由の顔が近づいてきて……


 バーン!と店の戸が開いた。


「お兄様! お迎えに参上しました! お由さん! まだですよ、お預けです!」


 美代がいきなり現れた!このタイミング、まさか気配を探っていたのでは?


「ちぇ!邪魔が入ったか」


 由が残念そうにしていると美代がにんまりと笑って俺の手を引く。


「式が終わるまで我慢です、美代はもう少しお預けなので料簡してください」


「はぁーい」


 こうして美代に手を引かれて家に帰るのであった。惜しかった、何かとは聞かないで欲しい、武士の情けだ。



 こうして式までの間を過ごすうちに我が家にあるものが届いた。


「これはなんですのお兄様?」


「これはポンプだ」 「ぽんぷ?ですか?聞いた事の無い物です」


 首をかしげる美代に菰にくるまれた物を見せる。


「黒光りしてますね?鍋みたいなものですか?」


「鋳物だからな、そんな風に見えるか、うまい具合に出来たみたいだな心太」


「へい、若様のご指示通りに砂型から起こしました。ですがこれで井戸の水が汲めるんですか?」


「井戸の水が?」


「まあ信じられないだろうがまあ組み立てて試そうじゃないか」


 俺はパーツ毎に作った手押しポンプを組み立てていく。棒の方は鋳物では強度が無いので鍛冶屋に頼んで作って貰った。中の弁とかは細工師に井戸に付ける木枠は大工を呼んで作って貰っている。井戸に降ろすパイプは竹で代用した。隙間を埋めるのは革を使った。


 鋳物師の心太や細工師の勘吉、大工の伊助に手伝わせて井戸に設置する。呼び水を入れて準備OKだ。


「良し、押すぞ」


 ハンドルを押すと若干の抵抗と共に中でピストンが上下する。そして数度上げ下ろしすると吐き出し口から水が出てきた。


「あっ!出ました!凄い、水が途切れずに、お兄様これはいかなる法術ですの?」


「法術とかじゃない、これがポンプという道具なのだよ」


「凄いですね、水汲みが楽になります」


「ま、家に伝わる文献が元だから俺の発明じゃないけどな」


「それでも凄いです!美代はお兄様を尊敬いたします」


 美代が喜んでくれてよかった。水汲みはどこの家でも重労働だからな、由の所でも喜んでもらえるだろう。でも初代様の蔵書にあった図入りの書だったけどどうやら初代が書き写した物らしくどこでポンプの情報を手に入れたかは判らずじまいである。本当に謎な人だ。




なおこの小説はフィクションであり登場する人物・団体・組織等は完全な架空の存在です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 合戦のない日常の生活なんですが技術革新がどんどんすすんでいるのが読んでいて楽しい。クラフトや内政中心のゲームが好きなのでその影響があるのかもしれませんが読んでいてどこまで進むのかと思いワク…
[良い点] 退屈男というか近松版鸚鵡ろう中記みたいな感じですね。 [気になる点] 江戸時代の江戸(男女比率ががが)に旗本とは言え モテモテは役者でもないかぎり相当やっかまれるかと。 [一言] 女性2人…
[一言] >心太 「ところてん」って…
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