少年の話。
始まりの鐘が鳴る。授業が始まる。
教卓に先生は…いない。いや、いないというより実物がない。
この私立魔穂雨学園は、実は教師がいない。代わりに警備員、別名「監視員」がいる。
それもそのはず。
魔法。いわゆる非科学的現象を使えるようになった子供たち。
それは自分の世代で始まったようだ。
少し前まで人類は魔法を使えなかった。しかし、実際自分の世代で使えるようになっている。
前の古い世代の人たちによると、これは人類の進化の過程なのだそうだ。
そして、その子供たちに勉強を教えようとする古い世代の人たちは、魔法という武器を持った子供たちを怖がった。だが、利用する価値はあると考えたらしい。自分たちが捨てられるとは思わなかったのか。
誰も子供たちの教師をやろうとはせず、3Dの立体映像で子供に教育を受けさせることにしたらしい。だから授業中に早弁をしても誰も怒らない。今こうして――あぁ、いやなんでもない。
話がそれたね。今言った通り、僕たちは本物の教師に会ったことがないってわけだ。
それが目の前にいたら―――当然、びっくりするよな?
◆
ガラッ
教室が静まりかえる。
一人の男がはいってきた。何だこいつ。皆が騒ぐ。
明らかに俺たちの世代ではない。俺たちは比較的新しい世代だから。
男の容姿も不思議だ。始めてみるものだった。
黒いジャケットになぜだかシャツがビリビリに破けてしまっている。ついでにジーンズも。
そんなものに意味があるのか?という疑問を口に出せないまま、その男は何も言わず教卓の前まで一歩ずつ近づいてくる。まさか?
「今日から、この魔穂雨学園の教師となりました、柏木啓介でーっす。皆ー、席ついてー。」
…これは悪夢の始まりか、それとも天国への扉か。