奮闘!告白大作戦〜勇者なんて聞いてない!〜
私は桜乃小春。
恋に恋する青春真っ盛りの高校二年生。
私には只今想いを寄せている人がいます。
名前は西條斎君。
あまり目立つような人ではないけれど、周りにさり気ない気遣いができる優しい人なんです。
彼への想いが募りに募って早二年。
入学式の日、怖い先輩に絡まれてるところを助けられて恋に落ちてしまった。
こんなシチュエーション現実に起こり得るのかって思っていたのだけれど、実際に起こって仕舞えば恋に落ちないわけがないと思うの。
だって、身を挺して助けてくれるなんて胸キュンものでしょ?
二年生になって、西條君と同じクラスになれたことは一番の幸運かもしれない。
しかも直ぐ後ろの席だなんて仲良くなれるチャンスだわ!
それから後ろの席という利点で、さり気なく毎日挨拶をするようになった。
勿論彼は優しいので、親しくもなかった私にも挨拶を返してくれた。
偶々彼の読んでいた本が私も読んだ事のある本で運命を感じたわ。
もうこれは話し掛けるチャンスでしょ!
本の内容で盛りがって、彼との距離もちょっとは近付けたかなって気がしたの。
でも、
他クラスの女子と親しそうに話している彼を見て、そんな気がしたのは私の勘違いなんだって気がついてしまった。
だってその子と話す彼は普段の無愛想な表情とは違って感情豊かに見えたの。
そう考えてしまったらもうダメで、マイナスなことばかり考えてしまう。
彼女は西條君とはどんな関係なの?
随分と親しそう。
私と話してる時と全然違う。
私と話をする時はちょっと素っ気無い気がしたけれど、もしかして迷惑だった?
西條君にとっての私って?
ただのクラスメイト?
それとも、迷惑な人?
ホントは私、西條君に嫌われてたり…
「ああぁ!もう!!」
バッチーン!!!
豪快に頬を叩くと痺れる痛さが顔全体に伝わった。
いや、掌にも響いてきた。
…ちょっと強く叩きすぎた。
「うじうじ悩んでも仕方ない!」
悩みに悩んで、深みにハマりそうになって、うん。
私は考えるのをやめた。
イヤだって、ウジウジ悩んでたって相手の考えてることなんて分かるわけないし。
悩み過ぎて立ち止まってたら意味無いよね?
それに、今まで頑張ってきた私らしく無いよね!
よーし!女は度胸!!
私、告白する!
当たって砕けろ!
(イヤ砕けたくは無いけど)
ある日の放課後。
校舎が茜色に染まる頃。
帰宅部はすでに帰宅し、部活の子は真っ最中の時間帯。
いつもは出席番号で日直を決めるなんてつまらないと抜かす担任に憤っていたけれど、今回は感謝しかない!
今日の日直は、西條君とサボり魔な三宅さん。三宅さんは日直の仕事をすること無く早々に帰ってしまってる。
律儀な西條君は、一人でもやる人だ。本当は手伝いたかったけれど、委員会の仕事があった為放課後に話があると待って貰っている。
教室には、西條君が待ってる。
ドキドキとは高鳴る気持ちを抑えて、深呼吸を一つ、二つ。
ソッと扉に手を掛ける。
落ち着いて……
スゥ……ハァ……
よし!行くぞ!
震えそうになる手足に力を入れて、扉を開いた。
開けた瞬間、傾きはじめた太陽の光が私の視界を一面覆った。
眩しい日差しに眩暈がしてギュッと目を閉じる。
余りの眩しさに、眩暈と揺れと少しの頭痛に私は一瞬足を止める。
ゆっくりと目を開けた瞬間ーーー
「おお!勇者召喚に成功したぞ!」
視線の先にいたのは、石造りの建物内にフードを目深に被った人々と立派な服装の青年が一人。
先程まで入ろうとしていた筈の教室の景色でも無く、待っている筈の西條君もどこにも居なかった。
「……は?」
「勇者様!」
「え?」
キョロキョロと見回して見るもそのような格好の人物も居らず、周りの人達は皆んな一様に私に視線を送っていた。
「え……と、私?」
「そうです!勇者様!」
「…………。」
え、いや何言ってんのこの人達?
「人違いでわ?私はただの女子高生ですよ?」
「じょしこうせい?と言うのはよく分かりませんが、召喚は成功しております。貴方様で間違いございません!」
「……。」
立派な服装の青年が力説するかのように力強く断言する。
その言葉に続くように後ろに控えているフードの人達も首肯を繰り返していた。
ええぇ?
マジで?
まさか、
本当に
ラノベで流行りのアレですか?
異世界トリップとか言う…
何でこのタイミングかなぁ!!?
実際にorzの姿になることってあるんだね(泣)
by 桜乃小春