05 ダンジョンコア
「……誰?」
『ダンジョンコアでございます。意思はなく、ただマスターをサポートするためのコミュニケーション機能です』
「ダンジョンコアって何?」
『ダンジョンを作成、管理するための装置です』
うん、夢じゃなかったわ。
ダンジョンを作成する装置。そんな話聞いたことがない。
試験のために迷宮関係の研究は調べつくしたが、そんな論文は一つも見たことがなかった。
二十年前に突如現れたダンジョンは、どこから来たのか、誰が作ったのかなどは、一切判明していない。
分かっているのは、同時期にジョブに目覚めるための装置が人類にもたらされたこと。そして、迷宮から出土される魔石がエネルギー産業の救世主になったこと。
発電量は原子力発電のおよそ十倍。世界のエネルギー問題は瞬く間に解決し、安定供給が求められた。
その他にも、有用なアイテムが多く発見される。それがダンジョンだ。
だがそれを人為的に作るとなると……。
「どうやって作るんだ?」
『ご説明いたします』
探索者志望である前に、一人のダンジョンファンとしての好奇心が、そう質問していた。
ダンジョンコアから聞いた話をまとめると、こうなる。
一、全てのダンジョンはダンジョンコアを持つダンジョンマスターによって管理されている。
二、ダンジョンマスターはDPを消費してダンジョンを形成、アイテムやモンスターなどの配置、増築などを行うことができる。
三、DPはダンジョン内にいる人間がMPを消費することで獲得できる。また、人間が死亡した場合はより多くのDPを獲得する。
四、ダンジョンマスターはレベルに応じたものしか作成できないが、DPを蓄積することでレベルを上げることができる。
五、ダンジョンの構造や性質は自由に決定することができる。
MPとはジョブを得た人間、つまり探索者が持つものだ。時間経過で回復するそれは、消費することでスキルや魔法を発動することができる。RPGゲームにそっくりで、陰謀論を唱える人が根拠に挙げるものの一つだ。
つまり、ダンジョンは探索者を招いて戦ってもらうことで強化されるのか。さらに、モンスターを使って探索者を殺せば、より多くのDPが手に入る、と。
「いや、これなかなかやばい情報だぞ……」
荒唐無稽な話なのに、俺は意外とすんなり受け入れていた。
あるいはそれも契約の効果なのか。もしくはロジカルでゲーム的な設定だから、現代っ子としてはなじみ深かったからか。
「ダンジョン研究の論説がひっくり返るぞ」
俺が今知った事実だけで、新情報てんこ盛りだ。
おそらく、ダンジョンコアに聞けばもっと情報を引き出せるだろう。頭がパンクするからやらないが。
「だけど、これを他人に話したら……」
自分がダンジョンマスターである。それを明かしたらどうなるか。
間違いなく、捕まる。そして散々研究対象にされた挙句、罪人として処刑される。
なぜなら、ダンジョンは富をもたらす資源であると同時に、多くの人間を殺害し続けた場所でもあるからだ。
ジョブや探索者が許可制になったのは、ダンジョンで死亡する事例が大量に発生したから、らしい。
ダンジョン時代の黎明期、ジョブを得たばかりかジョブのない状態で多くの人がダンジョンに乗り込み、命を散らした。
さらに、今でもたまにダンジョンから溢れ出してきたモンスターが外の人間を襲う事件が発生している。
探索者は魔石を手に入れるだけでなく、モンスターが溢れないように間引きする役目もあるのだ。
「ぜっったい誰にも言えねえ」
まだ死にたくない。
ていうか、俺がなりたいのは探索者だ。悪役の親玉なんかじゃない。
俺はダンジョンコアのことは一旦忘れ、部屋に戻ることにした。
時刻は朝七時前。ちょうどいい時間だ。
説明長くなりました。
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