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45 第二迷宮専門高等学校

 学校対抗戦の会場は年度ごとに各校で持ち回りで、今年は京都にある第二迷宮専門高等学校だ。


 初めて日本にダンジョンが現れた日……新宿駅と京都駅は、突如現れた巨大な遺跡に飲み込まれた。

 その時駅の中にいた人々、そして彼らの救助に向かった自衛隊や警官。その全てを殺し尽くしたダンジョンに対抗するために作られたのが、第一と第二の迷宮専門高校だ。


「すげぇえええ! デカい!」

「うん、君はいつもうるさいね」


 神奈川県西部の山の中に作られたサンメイは、どちらかといえば広大な土地を使った施設が特徴で、悪く言えば閑散としている。

 しかし京都の、通称キョウメイは繁華街近くに作られ国会議事堂を思わせる巨大な一つの建物に、多くの施設が凝縮されている。また最新の技術や機材が使われていることでも有名で、第一と合わせてエリート校だ。


 迷宮専門学校は通っていた中学校がどこの地域かによって受験できる高校が変わるため、学校ごとの格差があるわけではない。しかし、ここに通いたいがために関西に引っ越す候補生がいるほど、人気な学校ではある。


「やはりソータを連れてきたのは間違いだった気がするわね」

「邪魔なだけな気がします」


 日下部さんと長瀬がいつもの調子で辛辣な言葉を投げかけてくる。


 一緒に貸し切りバスを降りた二、三年生は微笑ましい視線を向けてくるが、これはこれで恥ずかしい。ちなみに、アギトはバスに乗り込む前から緊張でガチガチに固まっていた。可愛いやつである。


「しっかりサポートするから安心してくれ!」


 各学年の代表者が出場する学校対抗戦であるが、全生徒が応援に来るわけではない。

 バスに乗ってやってきたのは代表生徒と、彼らに指定されたサポートの生徒だ。代表者一人につき一人まで指定できる。


 俺はアギトのサポートとして、長瀬は日下部さんのサポートとして同行を許された。

 雨夜は研究科の十式をサポートに指名したようで、彼女は工具や素材の詰まった大きなキャリーケースを引きずっている。


「三人まとめてこの十式がサポートするっすから、大丈夫っすよ」

「ソータの百倍信頼できるわ。よろしくお願い」

「雪華様、ゼロは何倍してもゼロです」

「こいつら……」


 十式の方が信頼できるという点は反論のしようがない事実だ。

 にしても、ちょっと涙がちょちょぎれるぜ。


「開会式は明後日だから、今日は部屋に行ってゆっくりしてるんだよー」


 引率の古屋敷先生が、全体に向かって声を掛けた。他にも各学年の担任が立っている。あまり関わることがなかったので、名前も知らない先生だ。


 上級生は個人戦三人、団体戦が一パーティ四人の計七人が代表生徒となっている。一年生とは違って、研究科の生徒がサポートとしてつくのが一般的なようだ。ほぼ専属のような形で、装備の手入れや戦術の助言などを行う。


 合計四十人近くが降り立ったのは、キョウメイの裏門だ。対抗戦期間中は学校内の宿泊施設に滞在することになる。


「相手校ですから、あちこち歩き回らないようにしてくださいね。失礼のないようにお願いします。あなたもですよ、古屋敷先生」


 真面目そうな女性教員が俺たちとついでに先生にも注意した。半年の付き合いでも年齢不詳な古屋敷先生が、下手な口笛を吹いてそっぽを向いた。それを見て女性教員の目が吊り上がる。


 さては先生、過去に何かやらかしてるな?


 会場校の代表生徒以外はお手伝いとして活躍しているみたいで、女子生徒の案内でサンメイに割り当てられた部屋に案内された。


 四人部屋だが部屋数には余裕があるらしいので、一年生は男女で別れて三人ずつになった。


 部屋に入ったところで、俺はずっと言いたかったことを口に出す。


「負けるためにわざわざ本校までようこそ、みたいな嫌味言われると思ったけど、めっちゃ良い人だった」

「そんな典型的なやついるわけないだろうが……」


 アギトと雨夜に飽きれた顔で見られた。

 ええ、なんかそういうイベントあった方がテンション上がるじゃん。


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