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36 アサシンと技術者

「ぐはっ」


 呆気なく日下部さんに突き飛ばされた俺は、仰向けで倒れ伏した。

 うん、無理。勝てないって。


 夏休み前にレベル4に上がりステータスは上回っているみたいで、速度は負けていない。だけど技術と装備の性能がかなり高く、ガブリッチョなしじゃ太刀打ちできないだろう。


 他に対抗手段はあったかな……。

 ダンジョンの範囲を学校全体に広げたり、各種ポーションや新しく作れるようになった魔力草の量産に忙しくて、モンスターは後回しになっているのだ。


『ダンジョンクリエイト(植物系)LV4

 所持DP:32768pt


 設置メニュー

・薬草:1pt

・毒草:5pt

・解毒草:20pt

・魔力草:200pt

・レッサーヴァイン:20pt

・シードフェアリー:200pt

・ドライアド:2000pt

・デビルサンフラワー:20000pt

・イチゴヘビ:5000pt


 特殊メニュー

・レベルアップ:20万pt

・ダンジョン内転移:50pt

・モンスター収納:50pt

・アイテム収納;50pt』


 デビルサンフラワーは名前的にヒマワリなんだろうが、コストが高く召喚は見送っている。そろそろ消費したポイントも戻って来たし、召喚してみてもいいかもな。

 イチゴヘビは、草を身体から生やした小さな蛇だった。一日に数粒イチゴを収穫できて、これがめちゃくちゃ美味しい。戦闘能力はない。

 虚子のダンジョンを支配したことで、二つの系統が合わさったモンスターも召喚できるようになったみたいだ。


 うーんデビルサンフラワーの性能次第だけど、日下部さんやアギトに勝てる気がしないな。勝つ必要はないけど、これからダンジョンマスターと戦っていく以上もっと強くならなければならない。

 スキルは以前からあったいばらを操る『スティングソーン』に加え『グリーンウォール』という生垣のような植物の壁を創り出すものが増えた。いばらは攻撃力こそ高いが脆いので、防御手段ができたのは素直に嬉しい。


「いつまで寝ているのよ」


 目を閉じて思案していると、レイピアの切っ先でツンツン突かれた。

 気持ちを切り替えて立ち上がる。戦闘技術は今後の課題だな。


「いやー、一年代表の皆さんはお強いっすなー」


 その時、白衣の女性がニマニマしながら近づいてきた。後ろには遠慮がちに歩く美少年――もう一人の代表の『アサシン』雨夜(あまや)宗一郎(そういちろう)だ――がいた。


「雨夜君と……あなたは?」

「私は研究科一年、十式(じゅっしき)あかりっす。ぜひ皆さんに装備を作らせてくだせぇ。ぐへへ」


 芝居がかった口調で手を擦り合わせる十式。

 研究科の生徒と接する機会はあまりないから、同じ学年とはいえ初対面だ。だがダンジョン攻略に欠かせない存在でもある。


「技術者志望か?」

「っすよ。ちょうど雨夜っちのナイフを作ったところっす!」


 日下部さんのように武器をスキルで生み出せるジョブは珍しい。長瀬が自前のフルートを持ち歩いているように、多くの探索者は外から武器を持ち込む。

 だが、ここで一つ問題がある。従来の物質で作られた武器は、モンスターに一切のダメージを与えることができないのだ。これが最初期にダンジョンによる死者を大勢出した理由でもある。銃弾だろうと爆薬だろうと、あらゆる攻撃を無効にする。


 普通の道具であってもスキルの効果を付与すればダメージは通るのだが、MPは有限だし威力も落ちる。ならば、どうするのか。


 ダンジョン内で採れた迷宮資源を加工して武器にするのだ。ダンジョンによっては金属資源が取れるところもあるので、それを活用する。

 余談だが、ジャージのような見た目の探索者スーツも迷宮資源から作られている。


「……」


 話題に上がった雨夜はナイフを取り出して、無言で鞘から引き抜いた。黒曜石のような光沢のある黒い刀身が現れる。

 彼はあまり喋らないけど、見た目が抜群に良いからミステリアス男子として人気である。俺も無口になった方がいいか?


「まあ俺は関係ないからな。日下部さんとアギトはどうするんだ?」

「そうね……特に必要は感じていないわね」

「俺も同様だ」


 日下部は武器も鎧もスキルで顕現できる。攻撃スキルなどはないが、特殊効果のついた強力な装備を用意できるのだ。

 アギトに関しても、炎を操る分には装備はいらない。


「まあまあ、話だけでも聞いて欲しいっす」

「ふん、俺たちに協力することに何かメリットはあるのか?」

「なんでそんな喧嘩腰なんだよ」


 相変わらずの人見知りである。アギトは初対面の相手に噛みつくという習性を持っているぞ。


「スポンサーみたいなものっすよ。皆さんが活躍してくれれば、私も名前を売ることができるっす。研究者と違って、技術者は客商売っすからね。それに将来有望な代表生徒の担当になれれば、一生安泰っす」

「正直だな」


 迷宮研究科はその名の通りダンジョンを研究する学科だ。ダンジョンの解明や迷宮資源の利用方法、探索者装備の開発などを学ぶ。将来は研究者や学者、技術者になる者たちだ。


 とはいえ、この学校に入学する以上、攻略科ほどでないにしろジョブ適正も重視される。

 よって迷宮専門学校を卒業した者は『ジョブを持つ研究者』として、一般の研究者よりも厚遇されることになる。いわばエリートだな。


 研究をするにも実際にダンジョンに入れるか否かは大きな違いだ。『探索者ライセンス二種』という研究者用のライセンスを取得することになる。


 彼女が装備を提供したがるのは卒業して技術者となった時のために、なにか実績が欲しいのだろう。


「消耗品なんかも作ってるっすから、ぜひお話だけでも」

「そういうことなら、検討しようかしら」

「ぐへへ、ご案内するっす」


 丸眼鏡に白衣といういかにも(・・・・)な風貌の少女が、下心を隠しもせず笑った。

 白衣の上からでも分かる豊かな胸部に目線が行きそうになる……が日下部さんの太ももを見て心を落ち着かせる。危ない、俺としたことが教義に背くところだった。


新キャラが二人登場。

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[一言] 信仰は自由。 ももだけでなく全てを愛していいのです(温かな目)
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