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28 解毒

「シーちゃん、ありったけの解毒草を持ってきてくれ!」

「分かったよ!」


 日下部さんを連れて地下室に転移した俺は、地面に寝かせシーちゃんに指示を出した。


 ダンジョン資源の一つである解毒草は、普通の薬とは違う。完全にファンタジーの産物で、現代薬学や化学では説明がつかない効果を発揮する。

 毒と一口に言っても種類は様々だが、そのほとんどを除去することができるのだ。具体的にどの毒に効くか、というのは研究段階だが、自然由来の毒やモンスターから受けた毒はほぼ全て解毒できる。


 病気や感染症には効かないものもあるが、日下部さんの身体を蝕んでいるのはヘルコブラの毒だ。蛇モンスターの中では上位とはいえ、解毒草の効果はある。


「俺に出来ることは……」


 ダンジョンクリエイトのメニューを開く。


『ダンジョンクリエイト(植物系)

 所持DP:8361pt


 階層メニュー

・階層追加:600pt

・階層拡張:100pt

・部屋追加:100pt

・構造変更:任意pt

・環境変更:任意pt


 設置メニュー

・薬草:1pt

・毒草:5pt

・解毒草:20pt

・レッサーヴァイン:20pt

・シードフェアリー:200pt

・ドライアド:2000pt


 特殊メニュー

・レベルアップ:3000pt

・ダンジョン内転移:50pt

・モンスター収納:50pt』


 DPの効率が上がったことで、ダンジョン内転移やモンスター収納は多用してもそれほど負担ではなくなった。


「とりあえず環境変更で敷き藁を」


 地下室はダンジョン内ではあるが、薬草などの栽培のために畑になっている。地面は土で、どういう原理か天井からは太陽光が差し込んでいる。

 日下部さんの下に敷き藁を設置し、看病しやすいように一段高くした。水を汲みやすいよう、近くの壁に湧き水を設置する。


 ダンジョン資源以外の設置物は、全て環境変更の範囲だ。構造変更で通路や部屋の形を変え、環境変更によって好みのダンジョンを作成する。


「解毒草と薬草たくさん持ってきたよ!」

「助かる! でもポーションの作り方が……」


 お勉強知識としては知っている。だが、ポーションは一般人が作れるものではない。

 この学校で言えば迷宮研究科の生徒が、特殊な道具やスキルを使って作るものだ。


 道具もなければスキルもない現状では、直接草を与えることしかできない。俺が腕をケガした時は軽傷だった上に、植物系ダンジョンマスターということで効き目が高かった。だが、日下部さんは普通の探索者だ。ポーションや解毒ポーションでなければ、効果が薄い。


『マスター。ドライアドを召喚してください。それと、余ったポイントを全て解毒草に』

「え?」

『ドライアドは薬学に精通する樹精霊です』

「本当か! 分かった」


 モンスター設置、ドライアド。

 2000ptを消費し、召喚を実行した。空中にどんぐりのような種子が現れ、地面に落ちた。そして芽を出したかと思うと、ぐんぐん大きくなって人間大の広葉樹になった。


 最初はただの木だった。だが、次第に顔が浮かび上がり手足が生え、女性の姿に変わった。


「わたくしを生み出していただき、感謝いたします。ご主人様」

「ドライアド、そういうのは後だ。今すぐ頼みたいことがある」

「なんなりと……いえ、委細把握いたしました。全ての解毒草と毒草、薬草をわたくしに集めてくださいませ」

「理解が早くて助かる。だが、毒草も、か?」

「はい。毒も使いようによっては薬になりますから」


 木のようにも女性にも見える不思議なドライアドが、母性を感じさせる表情で告げた。

 シーちゃんは地下室を飛び回って、増やした草を収穫していく。俺もDPを消費して、解毒草を大量に出した。


「母なる大地よ、わたくしに力を」


 ドライアドは集められた解毒草を抱えて、祈るように指を合わせて目を閉じた。キラキラと小さな光がドライアドから溢れて、神秘的に輝く。

 解毒草が一株、また一株と光っていく。存在が朧げになって粒子へと変わった。


「合成」


 ドライアドが水を掬うように両手を合わせて、光の粒子の中へ突っ込んだ。思わず見とれてしまう光景に、俺はごくりと生唾を飲んだ。


 解毒草だった粒子は彼女の手の中で青色の液体に変わって、天井を映した。ドライアドはそれをゆっくりと日下部さんの口元へ持っていき、注ぎ込む。


「日下部さん、頑張れ」


 彼女の素性はよくわからないし、俺の命を脅かす存在かもしれない。

 だけど、虚子と初めてあったときも今日も、常に俺を守ろうとしてくれた、大切な仲間だ。


「合成」


 次は薬草と毒草を合わせて、調合した。聞いたことがない組み合わせだ。迷宮資源を二種以上合わせる研究は難航していて、成功例はない。さすがは樹精霊といったところか。


 続いて作られた緑色の液体を、日下部は少しずつ呑み込んでいく。

 顔色がみるみるうちに改善していって、静かな呼吸をするようになった。


「もう大丈夫でしょう」

「意識は戻るのか?」

「じきに」


 ドライアドが当然のように頷いてくれた。ハラハラと見守っていたシーちゃんも、ほっと胸を撫でおろす。


 五分ほど見守っていると、日下部さんが突然咳き込んだ。一瞬不安がよぎったが、すぐに咳は止まって目を開けた。


「ここは……」


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