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13 寮生活

 モンスターによる学校施設の襲撃は、ちょっとした騒ぎになった。

 日下部さんは事情を説明するために先生とどこかに消えていった。俺については「私が声を掛けたせいで巻き込まれただけ」と日下部さんが言ったおかげで、すぐに解放された。


 ダンジョンマスターを名乗る虚子(うろこ)という少女については公表されないことになった。それどころか、先生にも言わないらしい。日下部さん曰く「この件は公安で処理する」とのことだ。俺も口留めされた。探索者も一枚岩ではないらしい。


 モンスターがダンジョンから溢れて校舎付近に出現することは、そう珍しいことではない。だが建物内にどうやって侵入したのかは謎のままだ。


 夕方まで後始末に追われ、主に精神的にどっと疲れた俺は、ふらふらになりながら寮に帰った。


「おうアギトただいま」

「おかえっんぐっ」


 本を読んでいたアギトは、油断していたのか普通に返事しようとして咳き込んでいた。

 もうそこまで言ったら返事しろよ。


 食事や入浴を済ませて、後は自由時間だ。

 といってもこの寮は学生寮にしては規則が緩く、時間に関してはそこまで厳しくない。

 門限はなし。とはいえ許可なしに学校の敷地から出ることはできないから、用がなければ帰ってくる。


 食事は共同のキッチンがあるので自由に食べる。男子生徒などガサツな男飯なのかと思いきや、しっかり当番を決めて全員分作ることになった。先ほどは共同スペースに集まってそういった話し合いをして、ちょっと楽しかった。


「おうソータ! 明日の朝飯ちゃんと作れよー」

「任せとけ! 最高の卵かけごはんを作ってやるよ」

「いやもうちょい頑張れよ」

「ばっか、秘伝のたれがあんだよ」


 共同生活を送るとなれば、必然的に仲も深まるというもの。

 裸の付き合いと夜まで一緒っていう一体感。うん、最高。

 俺はさっそくできた男友達と共に、くだらない雑談に興じていた。


 探索者はチームで行動することも多いからな。団体行動を学ぶためにも、寮生活は適している。


「アギトくん、チョコレート食べる?」

「……どうも」

「あの大門寺カブトの息子だぞ? もっと硬派なものをだな……おし、せんべいをやろう」

「……ああ」


 我がルームメイトは、話し合い中もむすっとした顔で立ち尽くしていた。なんとなく皆距離を置いていたのだが、それはクールだと評価されていた。


 たぶん大勢の前だから、緊張で話せなかっただけだと思うな!


 部屋に戻ってゆっくりしていると、アギトがちらちら見てきた。目が合うと咳払いしてが口を開く。


「何か騒ぎがあったらしいな」

「うん。でも日下部さんが解決してくれたよ」

「あの女か……俺がいたらもっとスマートに解決できたのだがな」

「いやめちゃくちゃスマートだったよ」


 なんせ公安迷宮庁の捜査官だからな。なんで未成年が入ってるんだろ。


 アギトは入試で負けたのを気にしているのか、面白くなさそうだ。でも彼女が相手なら仕方ないと思う。

 自信家で負けず嫌い。人を見下すような態度がなければ、好感の持てる男だ。


「次は俺が解決しよう」

「あ、そう。頑張って」


 授業初日から色々あったなー。

 なんだかんだアギトとも普通に話せてるし、良いスタートを切れたと思う。


 とりあえず当面の目標は、バレないようにダンジョンの範囲を演習場まで広げること!

 あれ、完全に悪の組織の構成員じゃん、やってること。


 違うんだ。俺は探索者になるために力が欲しいだけなんだ! ダークサイドに落ちる気はない!


 誰に言い訳しているのか分からないまま、俺は眠りについた。


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