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11 詰問

 日下部雪華。探索者を目指す猛者たちが集まるこの学校に、首席で入学した秀才。

 そして『演武の天使(ミカエル)』という強力なジョブを所有する、栄光が約束された少女だ。


「なにって、別にステータスを確認してただけだよ」

「さっき得たばかりのジョブを何度も確認してどうするの? レベルも上がっていないのに」

「うっ」

「放課後になって真っ先にここに来たわよね? 悪いけど、跡をつけさせてもらったわ」


 日下部さんの追求に、言葉が詰まる。

 ジョブは、モンスターとの戦闘を経ずにレベルアップすることはない。ダンジョンマスターのレベルもジョブスキルがなければ上がらないから、敵対というよりは相互に成長しているなー、と現実逃避する。だが彼女の詰問は止まらない。


「あなたが部屋にいる間、特に出てくる直前よ。中から不快な感じがしたの」

「気のせいじゃないかな?」

「古屋敷先生もそう言ってたわ。でも私は私の感覚を信じる」


 美少女に真っすぐな瞳を向けられるのは嬉しいけど、こんなシチュエーションじゃなかたら良かったのになぁ。


 職業管理室にいるのが俺たちだけで良かった。そんなに頻繁に来るところじゃないからな。


 間違いなく、日下部さんはダンジョンの気配を察知している。もしかしたら天使系のジョブはダンジョンを感覚的に捉えることができるのかもしれない。


 部屋に出る直前、つまり階層拡張を実行した瞬間ということか。ダンジョンの気配が一層強まったことで、さらに不信感を与えてしまった。


 さすがに学校内に作るのは迂闊だったか?


『ジョブにそのような効果はありません。また、ジョブストーンが探索者に対し能動的に情報を与えることもありません』


 じゃあ日下部さんの勘が鋭すぎるだけってことか?

 コアさんはめちゃくちゃ能動的に話しかけて来るけどね。


「こんなこと言いたくないけれど……拳使いがアギト君に勝つのもおかしいと思うわ。ねえ、何か隠してない?」

「くっ、俺が足フェチなことがバレたか?」

「ふざけないで」


 空気を和ませようと冗談を言ったら、凍てつくような視線で睨まれました。

 そんな美しい太ももを露出しているのが悪いと思います!


 しかし、まずい状況だ。

 彼女を納得させる言葉を捻り出せなければ、俺の立場が危うい。


「そう例えるならモンスターの――」


 彼女が確信に近づく言葉を放った瞬間だった。


「キシャーーー」

「は?」


 職業管理室のドアから、蛇が入って来た。


 ただの蛇じゃない。毒々しい色をした人間大の蛇だ。動画サイトで見たことがある。この学校付近にあるDランクダンジョン、通称『湿地洞窟』に現れるモンスターだ。名前は確か『ヘルコブラ』。


「武装顕現」


 日下部さんの反応は早かった。

 モンスターを目にした瞬間、虚空から取り出したレイピアを握って構えていた。本当に入学したばかりの探索者見習いか?


「下がってなさい」

「馬鹿言うな。俺も戦う」

「無理よ。あれは湿地洞窟でも下層にしか出ないモンスター。あなたが敵う相手じゃない」

「詳しいな。お前なら倒せるのか?」

「さあね」


 モンスターがダンジョン外で出現することは、実はそれほど珍しくない。


 一説によるとダンジョン内でモンスターが飽和した場合に、溢れ出してくるのだという。

 だがダンジョンマスターになった俺は、それが理由じゃないことは分かっている。


 探索者を呼び込むためだ。ダンジョンからモンスターが溢れ出してくると知れば、定期的に間引きせざるを得ない。だから、ダンジョン外というDPが得られない場所にわざわざモンスターを送り出して、ダンジョンの存在をアピールする。


 だがここは迷宮専門高等学校だ。探索者とその卵が大勢いる学校の敷地内で、どうやってここまで来た?


「すぐ終わらせるわ」


 日下部さんはスカートを翻して、ヘルコブラに突撃していった。


レイピアでモンスターと戦ったらすぐ折れそうですよね。

ファンタジーじゃなかったら不採用だったぜ……

あ、評価ください

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