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10 階層拡張

 迷宮専門高等学校は探索者を養成する学校とはいえ、通常授業もある。

 ジョブを手に入れたばかりでうずうずしている生徒たちが授業に集中できるはずもなく、身が入らないまま一日が終わった。


 そして放課後。


「おい、お前」

「俺は颯太だよ。俺に負けたアギト」

「くっ、そ、颯太」


 授業中もずっと俺のことを鬼の形相で睨みつけていたアギトが、顔を歪めて俺の名前を呼んだ。そんなに呼びたくなかったのか。


「次は勝つ」

「おう」

「俺が一番になるからな」

「わかったって」


 ふん、と鼻を鳴らしてスクールバッグを乱暴に取り上げると、アギトは席を立った。


「俺は演習場に行く」

「あそこならスキルの練習できるもんな。いってらっしゃい」


 演習場は監督の先生が常駐していて、放課後にジョブの訓練などを行うことができる。ダンジョンに潜ることを許されていない現段階の一年生にとって、唯一自由にスキルを使える場だ。


「俺は行くぞ」

「早く行けよ」


 お前は来ないのか、と言外に匂わせながら、ムッとして教室を出ていった。

 俺にはほかにやることがあるからな。


 そして向かったのは朝来たばかりの職業管理室。


 ここはジョブを獲得するためだけの部屋ではない。

 本命はむしろその後。

 ジョブのレベルとスキルを確認できるのだ。


 ゲームのようにいつでもどこでも確認、というわけにはいかない。

 ジョブストーンに触れることで初めて、レベルの上昇やスキルの追加を知る。スキルは知らなければ使えないから、小まめに来る必要がある。


「まあ俺には関係ないけど」


 そう呟いて、ジョブストーンの部屋に入った。


『警告:立ち入りを禁止します』

「何もしないからちょっと黙っててねー。あ、俺にジョブくれてもいいんだよ?」


 本当はダンジョンコアなんかじゃなくてジョブが欲しかったのだ。


『マスター、それは悲しいです』

「石二人がうるさすぎる」


 頭の中に直接語り掛けてくるから回避できない!


 聞き流しつつ、ダンジョンクリエイトのメニューを開いた。


 アギトと戦っている最中、DPを使ってレベルアップすることで勝つことができた。

 だが初期値100DPは、階層追加とステータス偽装で使い切ったはずだ。


『ダンジョンクリエイト(植物系)

 所持DP:324


 階層メニュー

・階層追加:200pt

・階層拡張:100pt

・部屋追加:50pt

・構造変更:任意pt


 設置メニュー

・薬草:1pt

・毒草:5pt

・レッサーヴァイン:20pt

・シードフェアリー:200pt


 特殊メニュー

・レベルアップ:700pt

・ダンジョン内転移:50pt』


「ポイント増えてるな。それに項目も増えてる」


 項目が増えたのはレベルが上がったからか?

 ポイントが増えたのはおそらく……。


『ダンジョン内でMPが使用されたため、DPを獲得しました』

「やっぱそれだよな」


 俺がダンジョンを地上階に設置した理由。

 それは、もしかしたらダンジョン攻略とは関係なくスキルを使ってくれるんじゃないか。そして、その場合でもDPを獲得できるんじゃないか、という予想があったからだ。


 その考えは当たっていた。


 たとえば俺がジョブストーンの部屋から出た時、生徒たちは思い思いに手に入れたばかりのスキルを使っていた。プロ探索者である古屋敷先生の監督下にあったから、それが許されていた。


 アギト戦では彼がスキルを使いまくってくれたおかげで、レベルアップのためにDPが溜まった。おかげで彼を倒すことができたのだ。


 つまり。


「これって最強では?」


 ダンジョンマスターになったから分かる。普通のダンジョンは探索者を呼び込むために資源を配置し、スキルを使ってもらうためにモンスターを配置する。植物系らしい俺がやるならば、ポーションの素材にもなる薬草を配置し、敵としてレッサーヴァインを召喚しておく。


 だが俺がやったのは、地面に透明な膜を張り付けるように、形のないダンジョンを作っただけだ。ここは学校だから、何もしなくてもスキルを使ってくれる。


「残念なのは、ここが演習場じゃないことか」


 緊急事態(コアに聞いたところジョブストーンと接触したためマスターとしての存在を強化する必要があったのだとか)でここに作らざるを得なかったが、演習場をダンジョンにできたらウハウハだよなー。


 階層拡張でも、演習場までは届かない。さて、どうしたものか。


 通路も部屋もいらない。むしろ、そんなものを作ったらダンジョンだとバレる。

 階層を増やすか? 地下室があれば俺だけの秘密基地! って感じで楽しいかもしれない。必要なわけではないので要検討。


 目下の目標はレベルアップだ。

 俺が目指すのはあくまで探索者。そのためには、高いステータスが必要だ。

 アギトには勝てたが、彼のレベルが上がったら手も足も出ないだろう。それに、先生には何をされたかも分からなかった。


「ここじゃたまにしかスキル使われないからなー。長期的に考えたら演習場まで伸ばすのは一番だよな」


 そう言って、階層拡張の項目をタッチして選択する。

 すると付近の地図が現れた。タッチパネルを操作するように、空中に浮かび上がるメニューを操作する。


「一回100pt。三回分じゃちょっと足りないな。たぶんあと400ptくらい。他にスキルを使いそうな場所だと……」


 施設の見取り図を思い返しながら、演習場と職業管理室の間にある建物を考える。


「迷宮資源室とか? とりあえずそこまで伸ばしておくか」


 スキルを使うかは分からないが、ダンジョン関係の建物までダンジョンの範囲を広げ、メニューを閉じた。なんかゲームをやってるみたいで楽しいな。


 そして扉を開けて外に出る。

 するとそこには、日下部雪華がいた。


「あなた、また長時間籠ってたわよね? それにまた嫌な空気を感じたわ……何してたの?」


基本はダンジョン呼びですが、

施設の名前等は迷宮になります。

ダンジョンという俗っぽいネーミングはしたくないというお偉いさんがいるからです。

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