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第1章1節 さようなら灰色の生活

さて、紳士諸君。女性は好きだろうか?おそらく8割はYESと答えるだろう。その中でも清楚な美少女が好きな男性は多いのではないだろうか?言わずともわかる。何故なら俺もだからだ。

「最近のアニメ、面白いけど好みじゃないんだよなあ…」

そんな独り言を呟きながらYシャツ姿のまま新作アニメの情報を雑誌で集める。私、氷室重晴(33)は自称マニアだ。

オタクではなくマニア。アニメ好き、ゲーマーだが、フィギュア等は持っていない。

「最近のは鬱展開が少なすぎるんだよなあ…主人公最初から最強とか特に嫌だわ…つまらん。それにヒロインが被り過ぎてないか…?」

そんな身勝手な持論を語りながら雑誌を棚に戻し書店を出る。空を見上げると満月を中心に満天の星空が広がっていた。

「…疲れた、今日って何日だっけ…?」

正直覚えていない。毎日何も変わらない日々をすごしていた。季節感も感じられず、今日が何日だったのかもわからなかった。

「特別なこと、何もしてないんだけどなあ…何で毎日こう…疲れてるんだろうなあ…」

空から目を離し、また歩き始める。きっと10年後も20年後も今のように毎日疲れた体で働き、疲れきった状態で独りで過ごすのだろう。そんな人生に意味はあるのだろうか?

「はぁ…俺はどこで間違ったんだろう…」

誰も答えるわけもなく、ただただ冷たい風が吹くだけだった。

 駅から電車に乗り徒歩10分、そこに俺の家がある。今日も何も変わらず降車駅まで着いてしまった。

「ちょっとでも変化があるだけで全然違うんだけどなあ…」

せめて独り言じゃなく誰か話す人がいれば違うんだろうな…そう思いながら歩き始める。しかし、変化に気がついた。

「あれ…?ここ、今朝まで木があったよな…?」

気のせいかもしれない。毎日見てはいるが気にせず通り過ぎることが多かった、もしかしたらなくなっていたのかもしれない。考えていても仕方がない、帰ろう。俺にできることなんてそのくらいだ。

家に着き、ドアを開ける。やはり今日も何も変わらなかった。ため息を1つ吐き出す。

「ただいま。」

誰もいない、返事があるわけがない。ドアを閉めて電気をつけようとするが、おかしなことに壁が見当たらない。振り返るがドアも見当たらない。疲れていることもあり頭が回っていないせいかテンパる事もなかったが、少しずつ現実が見えてきた。俺は今、家の中だと思って入ったどこかに閉じ込められている。ドアもなくなった。

「ちょっと待て、こんな変化は求めちゃいないよ!?」

焦る。さっきまで頭が働いていなかったから何も考えられなかったけど、どう考えてもおかしい。

「ここどこだよ!?誰かいないのか!?誰でもいいから返事してくれ!!」

すると暗闇から声が聞こえた。小さく、課細い声だった。

「ここです。私はここです。氷室重晴さんですね?」

そこには小さな宝石の欠片の様な物が落ちていた。

欠片が…喋ってる…?そんなわけない。疲労困憊なのだ、これも夢の中だろ?そう思うと欠片が答えた。

「私はあなたの考えていることがわかります。聞こえるのです。少々急いでいるので話を進めさせていただきます。私はクリスタルの小欠片、元は大きなクリスタルでしたが破壊神に崩されて以来この様な姿です。このような姿ではありますが、この世界の管理者です。」

そりゃそうだろう。このちっぽけな欠片が世界の管理者?そんなわけがない。信じられなかった。

「信じられないのはわかります。ですが事実です。受け入れてください。世界は大小差はありますが、私のような欠片が管理、作成しています。元は一つの世界でしたが、破壊神に崩された際に世界も粉々となったのです。私はその欠片のほんの一部です。」

信じがたいが、目の前で起こっていることを疑っても仕方がない。それにしても世界が粉々?バラバラになったと言うことだろうか?つい北欧神話のアースガルドやミッドガルドを連想した。生物毎に生活圏が違うと言うことだろうと、今は推察する。

「俺はどうすればいいんだ?何をさせる気なんだ?」

少し黙る小欠片。

「…私はマナが尽きようとしています。マナが尽きれば世界は滅び、私も滅びます。異世界にある大欠片からマナを分けてもらいたいので、異世界で大欠片を探して、その事を伝えてほしいのです。」

マナ…って確か自然界から生み出される魔力…だっけ?ここでゲームの知識を披露することになるとは思っていなかった。

「なんで俺なんだ?」

真剣な表情で問いただす。別に俺じゃなくてもいいだろ?よりによって何で俺なんだよ。30超えたおっさんだぞ?

「あなた…自分の世界に疲れてらっしゃいましたよね?よい気分転換になるかと思いお誘いしました。」

間違ってないけど、そんな理由!?自分を特別扱いはしていないが、少し拍子抜けした。他にも有望な若手がいたはずだ。

「はい、有望な方はたくさんいたので、全員に声をかけてます。こちらも世界がかかっています。あなたも見たはずです。木などの植物はマナを生み出す貴重な収入源なのですが人間が増えるに連れ、開拓することで自らマナを減らしました。」

温暖化みたいなものか…

「じゃあさ、世界さんよ。俺がそれをするとして、俺にメリットはあるの?異世界のことはわからないけどさ、多分命がけな事だってあるよな?」

想像できる異世界はあるけど、世界は欠片の数だけってことだ。予想外の世界だってあるはずだ。命がけなのは間違いないだろう。

「それでは2つ願いを叶えましょう。そのうち1つは今叶えます。その代わり1つ呪いをかけます。戻った際にもう一つの願いを叶え、呪いを解呪します。」

何で呪い!?

「ちょっと待て、呪いはいらないんじゃね!?」

少し間を空けて小欠片は答えた。

「願いを叶えるにはマナを消費します。しかし呪いは人の生まれ持った才能や能力を下げることでマナを還元させることができます。移住されて大欠片を探さない…となっても困るので、大欠片を見つけるまでは呪いを受け入れてもらいます。」

…そりゃ仕事放り出されたら元も子もない。納得はしたくないけど納得した。それにしても願い…急に言われても思い浮かばない。あえて言うなら…

「探索のためにも、若返らせてほしい…」

ふと声に出てしまった。しかし間違ったことは言っていないと思う。

「真面目なのですね、見直しました。それでは若返らせましょう。」

真面目…そうなのかもしれない、よく根は真面目といわれた。自覚はまったくない。ただ、どこかで真面目と言われたくないと思う自分がいた。ただただ、反抗期を引きずっていただけなのかもしれないが…自分に向き合わなくてはならないのかもしれない。

「それでは16歳まで若返らせます。」

18とか20とかでいいんじゃないのか?未成年では不都合もある。酒も飲めないのでは情報収集にも手間がかかってしまう。

「異世界の環境に慣れてもらうにはそれくらいが調度いいのです。探索や冒険の際に今の年齢ですと生命の危機に瀕します。ですので成長期を選ばせていただきました。16歳まで若返らせたら大欠片の世界…0世界へと送ります。」

16歳か…何してたっけ?学校が嫌いでよくサボってたな…

「まあ、覚悟はできたよ、いつでも送ってくれ。」

真剣な顔でそう話した。何で俺が?って思うところはあるけど、今までみたいにつまらない毎日を過ごすよりも有意義だ。

「それでは転送します。氷室重晴さん、御武運をお祈りいたします。」

光と共に俺の体が癒されるように疲れがとれるのがわかった。歳だったのかもしれない。その後、目を回したときのように立っていられなくなり、徐々に意識がなくなる。こうして氷室重晴(33)もとい、シゲハル・ヒムロ(16)の冒険は始まった。

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