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転生悪役令嬢が乙女ゲームプレイヤーとは限らない

作者: くまごろう

「何ココ…まるでどこぞのBでLな王道学園じゃない…」




私、オリヴィア・カイヤナイトは学園の入学を控えたほんの一週間前、前世の記憶を思い出した。


前世の私は腐ってるわけじゃないけどBL・NLバッチこいな、自分のツボにはまれば余裕で萌え滾れる何ともハイブリットなオタク…いや、オタクというには少しおこがましい。そんなオタクに片足突っ込んでウン十年…派遣社員として日々をなんとなく過ごし、仕事以外の時間は9割自分の為だけに使ってきた、心は永遠の22歳、筋肉と萌えをこよなく愛する独身貴族だった。


漫画や小説も雑食気味に読み漁るのでBでLなやつとか異世界転生ものとか明らかにティーン向けの者から鈍器になると巷で噂の分厚い小説までいろいろ読んできたそんな私だから、今の状況もなんとなく察する。







多分なんかの世界に異世界転生してる気がする。


小説なのか乙女ゲーなのかどんな世界なのかわからないけどこの世には魔法があるし魔物もいる。

かろうじて魔王はいないけど、私の知らない世界であることは間違いない。



そもそも私乙女ゲーは管轄外だったし。アニメ化したのかとかは見たことあるけどゲームしたことないし。


まぁでもあれよね。どんな世界だろうが自分の好きなように生きればいいわよね。



記憶が戻ってからしばらくは混乱していたけど元々流され体質で諦めやすい性格もあり、とりあえず現状に身を任せるしかないと何もしないことに決めた。

そもそも何の世界かわからなければ対処のしようがないし。行動を起こすのは世界観が分かってからで十分だ。


唯一私にできることは、なるたけキラキラしい人たちには関わらない方向で頑張ることだけだけどね!







…なんて覚悟を決めてきた入学式だけど、既に心が折れそう。

入学式で紹介された生徒会メンバーは王道から一歩も外れないような見事なメンバーだった。



俺様なオーラを振りまいている生徒会長

腹黒そうな作り笑いを浮かべてる副会長

無邪気なふりしてお互いしか認めません的オーラを放っている双子書記

無口で大柄わんこキャラの庶務





そろいもそろって御約束というべきか…上から王太子殿下に宰相子息、魔術師長子息、騎士団長子息…まさにテンプレだね!(ヤケ)





うぅ…怖いよぅ。なるべき関わらないようにしなきゃ


BでLな世界ならきっと彼らは自分たちの世界で勝手にやってくれるだろうから何の心配もいらないけど万が一乙女ゲームだったらどうしよう。

私が悪役令嬢だったら?


あ、申し遅れました。私、何の因果か侯爵令嬢というポジションを賜っております。


婚約者もいます。


生徒会には所属してないけどお相手は2つ上の公爵家の嫡男で王太子殿下とはご学友だそうです。もしほんとに乙女ゲームなら私の婚約者も攻略対象に入ってておかしくないよね。王太子殿下と懇意にされていて次期公爵様ですよ。




ちなみに婚約者との仲は良くも悪くもって感じ?お互い政略だと理解してるのでどっちかというと同志に近いかな?

まぁこれもテンプレって言ったらテンプレだけども。





なので、もし乙女ゲームだったら完全に悪役令嬢になる気がする。まぁ万が一ヒロインっぽい子が出てきたら学園は長期休養とかで領地に逃げる気満々だけどね!


ルート展開もわからないしバッドエンドもどんなのがあるのかわからない状態で流れに身を任せるとかそんな危険は冒せないもの。






















…なぁーんて思ってたことが私にもありました(遠い目)



「オリヴィア、どうしたの?」



はい、私が今いるのは婚約者の膝の上です。まったくどうしてこうなった?!












入学から半年、生徒会のメンバーはBL界のテンプレだったけどやっぱりここは何らかの乙女ゲームの世界だったらしい。

らしいというのはヒロインっぽい子がいたから。


脳内お花畑系のおそらく私と同じ転生者。しかもここが何の世界かわかってるタイプでイベントをこなしながら逆ハー目指してるっぽい。

なんでそんなことに気づいたかというとヒロイン(仮)が直接接触してきたからに他ならない。


ヒロイン(仮)曰く、


「あんたがオリヴィエ?なんか実際見るとパッとしないわね…まぁいいわ。私逆ハーエンド目指してるから!逆ハーエンドだと悪役令嬢が勢ぞろいしちゃうけど望むところよ!難易度激ムズだけど、すでに生徒会のみんなは私にメロメロなの。嫉妬から私のことイジメるにしても節度と常識を保ってよろしくね?いくら私が可愛いからってならず者を仕掛けるとか顔に傷をつけるとかそういうのはほんと駄目だからね?なにしたってこの世界じゃ私がヒロインで、愛される存在なんだから結末は変わらないのよ?あんたの婚約者のラブラド様だって近いうち攻略しちゃうから潔くあきらめてね!私の最推しだから最後にとっておいたの!あ、でもイベントに必要だから軽いいじめはしてもらわないと困るわね…まぁいいわ。なにもなければ冤罪でも適当なこと言って断罪してあげるから安心してね!その結果婚約破棄されても処刑エンドはないから安心してね。あ、ラブラド様が私のこと好きになっちゃうけど気落ちしちゃだめよ?だって私はヒロインなんだもの。じゃぁ私は他の悪役令嬢にも釘刺さないとだから。頼んだわよーーー!!!!!」



と、戸惑うこちらを無視して名乗ることすらせず一方的にまくしたてて勝手に去っていった。



まるで嵐のような人だわ…。でもこれでこの世界が何らかの乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢だということが判明したわ。

婚約者のラブラドのルートもしくは逆ハーエンドだと私が悪役令嬢として彼女をいじめたりして、最終的になんかのパーティで断罪されるってわけね。



まったく親切なヒロインだこと。心の底から関わりたくない人種だけどあらかじめ教えてもらえたのはありがたい。お言葉に甘えていじめなどせず領地に引っ込みましょう。

ラブラドとの婚約は…とりあえずお父様に解消できないかどうか相談が必要ね。公爵家相手だからこちらからは言い出しづらいでしょうけど、こちら側の準備だけでも進めておいて向こうが言い出したらすぐに解消できるようにしておくくらいは可能よね。




「婚約解消って何が必要かしら?私の身の振り方も考えておかないといけないわね…」



ヒロイン(仮)が去っていったあと、すぐに自室に戻りそれから考えをまとめればよかったと後悔しかしていない。いくらいきなりのことに動揺していたからと言ってけして、けっして学園の廊下で無意識とはいえ口にしていい言葉ではないわよね…。








「婚約解消ってどういうこと?」










…ギギギ


そんな音がしそうなくらいゆっくり後ろを振り返れば、そこには絶対零度の笑みを浮かべ背後にはブリザードすら背負っている婚約者様がいて。


そんな婚約者様に逆らえるはずもなく先程のヒロイン(仮)に言われたことを包み隠さず白状させられましたとさ…。



さてさて…それからどうなったかというと。


色々白状させられたあの日、生徒会室へ乗り込んだ婚約者様は(生徒会役員じゃないけど生徒会長のためによくお手伝いしてたんだって)ヒロイン(仮)曰くメロメロになっていた生徒会メンバーにもブリザードを食らわせ、そのまま担任と学園長に現状の問題を伝えると私と彼の自宅学習と試験による単位取得を認めさせ、私の父には学園内で揉め事が起こっており、私を巻き込むわけにはいかないから自分の領地で匿うと丸め込め(あながち間違ってはいない)。


よくわからないままの私を抱えて翌日には彼の領地に向かう馬車の中で彼の膝の上に乗せられるという事態になったわけだ。



いやいやだからどうしてこうなった!?!?!うちの婚約者様こんなに甘かったですっけ?砂糖にはちみつとメープルシロップと黒蜜かけたような甘さが馬車内に満ちてるんですけど???


あれ?私たちの関係って良くも悪くもなく同志に近いものじゃなかったの??あれれれ??????



「リヴィ??」




愛称で呼ばれたことにびっくりして思わず「ぐりん」と音がしそうな勢いで彼に顔を向けると、思ったより近くにあった彼の顔が私のおでこにチュ…と音を立てて離れていく。



「ラ…!リッ!………なっ?!?!?!」


「あぁ…ずっとリヴィって呼びたかったからつい出てしまった。今更だけどリヴィって呼んでいい?」



恥ずかしくて、心臓が痛いほど脈打ってて苦しいから逃げ出したいのに彼はますます腕に力を籠めるから膝から降りることも離れることもできなくて。

真っ赤になった顔を両手で隠して頷くしかできなかった。




…だってほんとはずっと好きだったもの。

良くも悪くも、とか、同志、とか全部好きになりすぎないようにするための予防線だもの。


記憶戻る前も、戻ってからもずっと好き。

昔から無表情で何考えてるか、私のことどう思ってるのかわからなかったけど。




美味しいお茶を飲んだ時にたまに口元が緩んでいたりとか


勉強がうまくいかなくて落ち込んでるときに頭をなでてくれたりとか(無表情だったけど)


些細な事でも私が好きといったものは覚えててくれたり


たとえそれらが婚約者としての義務感によるものだとしても、好きにならない方が無理だわ。




だからこそ今のこの状態が理解できない。彼の性格上、そのまま婚約解消でもするかと思ったのに。どうなってるのかしら?



むむむ…と現実逃避のごとく彼の膝の上で考えていたら今度は頭上からチュ…と音が降ってきてフリーズした。




「なんか可愛く考え事してるけど、屋敷についたらいろいろ説明してあげるから今は俺のこと見てて?

 あ、俺のことはラディって呼んでほしいな。リヴィとおそろいみたいでずっとそう呼んでほしいと思ってたんだけどなかなかきっかけがなくて。」




グラブジャムンにさらに砂糖まぶして更にチョコレートでコーティングしたような顔で「ほらリヴィ、呼んで?」なんて極上の声で囁きかけてくるから、せっかく落ち着いた心臓がまた騒ぎ出して顔も真っ赤になってしまって。


手で隠したいのに両手はラブラドに捕まってしまったからとりあえず近くにあった彼の胸に顔を埋めて隠すことにする。


それでもやっぱり逃げられなくてそのまま小さく「ラディ」と呟くと、捕まってた手のひらにキスされた。


驚いて顔を上げると今度は鼻の頭。


そのあと唇を指でなでるとようやく膝から彼の隣へ降ろされた。…腰はがっちり捕まってますけど。





「口はまた今度ね。さて、そろそろ着く頃だ。あぁ、屋敷につく前に伝えるのを忘れていたよ。」



彼はそのまま私の首元に顔を寄せると一瞬チクっとした痛みを残して離れていった。

突然の彼の行動に言葉も出ないで固まっている私に、彼は今まで見たことのない最大の笑顔で




「…俺は君を手放す気はないから覚悟しておいてね」


なんて何ともヤンデレ臭いセリフを投げかけてきたのだった。



…結局これ、どんな乙女ゲームだったのかしら?


グラブジャムン=世界一甘いといわれているインドのお菓子。シロップ漬けのドーナツ。

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