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06 歩く防犯装置
おじさん達が周囲にはべるようになって、視界の隅に姿がチラつくのが当たり前になった頃、それは起こった。
愛され体質である私は、よく事件に巻き込まれる。
「いたぞ! 車におしこめ!」
「きゃあっ!」
この愛され体質には目立つ効果もあるらしく、良いカモを狙っている誘拐犯からマークされる事が多いのだ。
そうやって私は何回目になるのか分からない事件に巻き込まれて、どこか人目のつかない所まで運ばれていく。
でも、不思議と恐怖はなかった。
だってこの後の展開はすでにしれているから。
「工事で行き止まりだと、そんな馬鹿な」
車が止まって、運転していた人が訝しんでいる。
車の先には行き止まりの看板があった。
誘拐犯たちはまだ、自分達の末路に気がついていないようだった。
進路上で交通整理をしていた制服姿の男性が、車へと近づいてきた。
間違いない。
知っている顔だ。