~翌朝、横には盾にて~
気がつけば朝だった。
お酒に酔っ払ってしまった俺は、すっかりと深い眠りに落ちていたようだ。
「ん~」
体が痛い。というのもベッドが硬いから、かな。
普段なら絶対に熟睡できそうにないけど、酔っ払っていたのが幸いしてか、充分に眠れたようだ。
それでも体はバキバキと音を立てそうなくらいに凝ってるけど。
「ん?」
と、そんな俺の背中に張り付くように盾があった。
「なんで?」
自動盾。
オートで俺を守ってくれる盾がなぜかベッドの上にあり、俺を守っていた。
なにから?
「……レイルゥか」
いつの間にかベッドの上にはレイルゥが眠っていた。その両手は僕に向かって伸びているが、残念ながら届いていない。
空を切るようにしてぷらぷらと浮いていた。
う~む。
「いっしょに寝ていたのか」
なんというもったいない事を。
俺は生まれてからずっと彼女なんて出来たことがない。年齢=彼女いない歴というやつだ。もちろん、告白だのなんだの、そのずっと先のそういう経験なんてしたことがない。
遠くから聞こえてくるリア充どもの声にイライラしたこともあったくらいだ。
そんな俺の初めての体験。
女の子と初めてのベッドイン。
「それをこの盾は」
ぐぬぬ、と盾を握りつぶしたい衝動に駆られるが、残念ながらそんなゴリラみたいな握力は持っていない。
「このやろう」
仕方が無いのでベッドの下に投げ落としてやった。
ふわり、と浮いて衝撃はゼロ。
ますます憎たらしく思える盾だなぁ、こいつ。
自動剣はもちろん鞘に収まったまま壁に立てかけてある。
剣のほうがよっぽど主人思いのいいヤツだ。
うんうん。
「ん~、ん。ふわ~……おはようございます、ご主人様」
そんな事をしていたからか、レイルゥが目を覚ましたようだ。
「うん。レイルゥは、どうしてベッドに?」
「ん? ん~、お忘れですか?」
え?
なにが?
もしかして俺が命令したんだろうか?
まさか? まさかとは思うけど……その、酔った勢いってやつ?
「んふふ~」
レイルゥが頬を染めて、自分でほっぺたをおさえる。
え、ま、マジで?
「おはようございますアユム様ぁ!」
と、そのとき。
勢い良く扉が開いた。というか、もう扉を壊しかけない勢いで開いた。カギなんて無いだろうから、そんな勢い良く開けなくていいと思うんだけどなぁ。
「むむむ! やっぱりベッドの上ですか、レイルゥ!」
ビシィっとルイルはレイルゥを指差した。
「おはようございます、ルイル」
「……いつ、私が呼び捨てを許しました?」
「あぁこれは、うっかり。ゆるすがいい、ルイルさま。いまはレイルゥのほうがアユムさまにちかいもので、つい」
「なにがついですが、なにが! この奴隷が! アユム様から離れなさい!」
うがー、という勢いでルイルがベッドに乗ってきたかと思うとレイルゥをぽいっとベッドの外に落としてしまった。
「さぁ、アユム様。朝ごはんが出来ております! いっしょに食べませんか?」
「あ、う、うん。分かった」
なんだか良く分からないけど、関わらないほうがイイようだ。
部屋を出ると村長さんがすでに食事を始めていた。
どうやらパンとスープみたい。
「おはようございます、アユム様。どうぞ、遠慮なく召し上がってください」
「あ、はい。どうも」
村長さんには、どうやら奥さんがいないっぽいな……あんまり詮索しないでおこう。
気まずいし。
「あ、私も。私も食べます。いただきます」
ルイルも加わって朝食を食べる。
レイルゥは相変わらず後ろに控えているだけだった。
やっぱり一緒に食べよう、と命令はしないほうがイイよな。村長に妙な反応だと思われたりしたら、あとあと面倒になりそうだし。
「んっ……ぐっ!」
しかし、このパン。めちゃくちゃ固い。フランスパン以上の硬さだ。
ルイルはそんなパンをスープにひたしてから食べていた。
「なるほど」
俺もそれを真似して食べてみる。
ジャムもバターもないので、このスープ味で食べるのがデフォルトっぽい。
「ふぅ、おなかいっぱい」
しっかりと朝食は食べ終わった。
それじゃぁ、さっそく。
「モンスター退治に行きますか」
「アユム様、私もお供させてもらってもいいですか?」
と、ルイルも剣を持ち出す。
まぁ、仲間を多いほうがいいし、俺はいいよとうなづいた。
「レイルゥもついていきます! アユムさまの奴隷ですから!」
「危なくない?」
「いざとなったらおとりにしてください。アユムさまのいのちはレイルゥがまもります」
なんだか断っても付いてきそうな勢いだ。
「まぁ、俺なら大丈夫だから。後ろから付いてきて」
「はい! 分かりました!」
レイルゥはにっこり笑ってから、ルイルにも笑いかけた。
「ふたりきり、そしです」
「ぐぬぬ」
仲がいいのか悪いのか。
ルイルとレイルゥはにらみ合いつつ、いっしょに付いてくるのだった。