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異世界転生に安全地帯なし!  作者: 久我拓人
第1章
5/13

~少女剣士ルイル・カッパーニュ~

「す、すごい」


 そう聞こえてきて、俺は振り返った。

 コボルトに襲われていた女の子は、呆然とした様子で俺を見ている。

 まぁ、そりゃそうか。

 自分が苦戦していた相手を、簡単に倒してしまったのだ。驚くのも無理はない。


「だいじょうぶ?」

「あ、あぁ。あ、いえ、はい!」


 こくこく、とうなづいて女の子は武器をしまった。

 流れるような動作で、剣を鞘におさめる。

 見た目は可愛いけど、そよりも剣士として美しいと俺は思った。


「見たところ、相当な騎士さまとお見受けします。命を救っていただき、まことにありがとうございました」


 と、女の子が頭を下げた。


「いやいや、俺は騎士なんかじゃないよ」


 騎士っていうのは、この世界での職業なんだろうか?

 まぁ、違うことは確かなので否定しておく。


「そ、そうなのですか!? も、もしや王族を守るロイヤルガードでは……?」


 違う違う、と俺は首を横に振った。

 ロイヤルガード?

 警察みたいなものか。そんなに強いのか、この世界の警察って。


「あ、名乗りもせず失礼しました。私の名はルイル・カッパーニュと申します。この村で剣士の修行をしているのですが……いや、お恥ずかしい限りです。村のためを、と思ってモンスター退治に赴いたのですが、逆に私が助けられるとは」


 ルイルちゃんは、面目ない、と頭を下げた。

 そしてちらりと向けたのは大きな檻、だろうか?

 なんか箱っぽいのが置いてある。

 あれに捕まえようとしたのかもしれない。

 殺しちゃって良かったのか?

 まぁ、なんにも言われないし大丈夫か。ダメだったら怒られてるだろうし。


「あ~……その。やっぱり剣士なんだね」


 この世界は、やっぱりゲームっぽい世界のようだ。剣士っていう仕事があるみたいだし、なによりモンスターもいたからなぁ。

 そういう意味で言ったんだけど、ルイルちゃんは顔をゆがめた。


「うッ。やはりそうですよね。私なんか、ぜんぜんそう見えませんよね。うぅ」


 なぜだ?

 ルイルちゃんが勝手に落ち込みはじめた。もしかして、地雷だったんだろうか? 剣士に見えないっていうのを気にしてるっぽい。


「あ、いや、俺はぜんぜんあの、この世界に慣れてなくて。剣士っぽいと思ったから聞いてみただけで」

「剣士っぽい!」


 ルイルちゃんの顔がパッと輝いた。

 かわいい……。

 しかし、やたら剣士に反応する女の子だな。このルイルって子。俺とあんまり年齢が変わらないように見えるんだけどなぁ。

 見た感じは中学生ぐらいの後輩っぽい。ただ、青い瞳なのでやっぱり日本じゃないのを感じさせてくれる。


「そういえばまだ名前をうかがっていませんでした。あなた様のお名前をぜひ教えていただけませんか?」

「名前?」


 はい、とルイルちゃんは俺に向かって一歩近づく。

 うわ。近くで見ると尚更のこと、すっごい美少女だ。

 こんな子に近づかれるなんて、なんかちょっと嬉しい。

 いや、別にいじめられてたわけじゃないんだけどね。でも俺には彼女なんていなかったし、特別仲のいい女友達もいなかったから。

 彼女はおろか、俺に好意を持ってくれる人なんかいなかったからなぁ。

 これはちょっと嬉しいぞ。

 助けて良かった美少女剣士!


「あー、俺の名前は須磨歩夢だけど」

「スマ・アユム……はい! しっかりとその名前、心に刻みました。スマ様とお呼びしてもいいでしょうか?」

「あ、いや、できればアユムで呼ばれたい」


 せっかくだから名前のほうがいい。


「分かりました、アユム様!」


 ルイルはすっかりと目を輝かせて俺にずいっと寄ってきた。

 うーむ、かわいい。

 あれかな~。部活とかしてたら、こんな可愛い後輩の女の子が寄ってきてくれたのだろうか?

 部活、入ってれば良かったかなぁ~。


「よろしければ村に寄っていきませんか、アユム様! ぜひ! ぜひお礼がしたいのです!」

「あ、うん。まだこの辺の詳しいこと分かってないし……」

「なるほど! アユム様は旅をしておられるんですね! 諸国漫遊をしているからこそ、あの強さ! なにより素晴らしい剣をお持ちなのは、冒険の結果というわけですね!」


 いや、違うけど。

 そう否定する前に、俺の背中を押していくルイルちゃん。


「ちょ、ちょっとルイルちゃん」

「私のことはルイルと呼び捨てにしてください、アユム様!」

「な、なんで?」

「え!? いや、そのほら……あはは!」


 なぜか分からないけど、ルイルはごまかすように笑って、俺を村の中へと押していくのだった。

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