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異世界転生に安全地帯なし!  作者: 久我拓人
第1章
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~実は伝説の武器だった~

 コボルトと戦ってる女の子は、どうやらゲームでいうところの戦士っぽい。

 戦士っていうより、剣士のほうが合ってるかな。

 とにかく、武器は細身の剣だ。盾は持っていない。身長は俺より低くて、小柄な印象だ。胸を覆う銀色の防具に、スカートみたいになっている鎧。あとは手とか足とかを防いでいる防具をつけていて、わりと身軽な感じ。

 髪は長く、いわゆるポニーテールにしていた。

 そんな髪を振り乱しながら、コボルトと戦っている。

 近づけば分かったけど、コボルトの大きさは小学生の低学年くらいかな。そんなに大きくない。ただ、女の子と比べたら充分な気がする。顔がちょっと怖い。

 犬に襲われた経験は無いけど、マンガとかで見る唸る姿っていうか、鼻にシワを寄せて牙をむき出しにしている姿を思い出すくらいには、凶悪な表情だ。

 それでも、犬っぽいの犬だ。二本足で立って服を着せてもらってる犬に見えなくもない。


「おっと」


 見てる場合じゃない。

 女の子はコボルトに攻撃される一方で、持っている剣で防御を続けていた。見た感じ押されているので、助けないと。


「クリエイト……」


 いや、待て待て。

 単純に俺が剣や盾を持ったところで戦えるか?

 いやいやいや。無理無理無理。

 剣道どころか野球すらやったことないんだから、無理に決まっている。


「だからといって銃は」


 たぶん、クリエイトできてモデルガンが精一杯じゃないか? 銃とかって、現実感が無い。

 いや、もちろん剣も現実感なんてある訳がないんだけど、銃に比べたらまだ想像できるっていうのかな。包丁があるんだし。


「そうだ」


 考え方を変えよう。

 なにも俺が戦うことはない。だからといって、ロボットとかそういうのは想像が及ばないから無理。

 なので、自動で戦ってくれる武器があればいいんだ。


「クリエイト・オートソード!」


 思い願う。

 俺の思い通り、ではなく、剣自身が自動で戦ってくれる。

 そんな武器!

 自動剣!

 それは、俺の思い描いたとおりに手の中に現れた。

 ずっしりとした重さだけど、片手で持てないことはない。刀身は長く、日本刀みたいな感じで反りがある。でも、剣の柄はシンプルだった。まぁ、このデザインは俺の想像力ではあんまりね。美術の才能があったわけでもないし。

 でも、これは自動で戦ってくれる剣だ。

 思い願ったのは、どんな達人にも勝つ能力!

 切れ味も、たぶんイイんじゃないかな。


「よし、ついでだ」


 俺は更にクリエイトの能力を使う。


「クリエイト・オートシールド!」


 剣が自動で攻撃してくれるなら、自動で敵の攻撃を防いでくれる盾も作れるはず。

 どんな攻撃にだって勝手に反応して防いでくれるオート防御の盾。


「よし」


 左手に現れたその盾も、やっぱりずっしりと重かった。でも、持ち手をがっちりと握ると、途端に軽くなる。


「おぉ」


 いわゆるオートガード状態になったみたいだ。まるで浮いているように重さを感じなくなった。


「いくぞ!」


 自動剣と自動盾。

 そのふたつを構えて、俺はコボルトへと走る。


「×××××!」


 何事かを叫ぶコボルト。なんか言葉っぽいけど、もちろん分からない。でも、そんなコボルトの言葉に反応して、女の子が振り返った。


「俺に任せて!」


 と、女の子の前に移動して、そのまま剣を振りかぶった。


「おぉ?」


 途端に剣の重さが無くなる。いや、むしろ腕が引っ張られる。

 まるで飛んでいくみたいに剣が先走り、俺はついていくのが精一杯になった。それでも転ばないようになんとか踏みとどまると、剣がコボルトのナイフを弾きあげた。

 ギーン、と金属が響く音。

 それはナイフを弾いたのではなく、ナイフを斬ってしまった音だった。

 想像以上の切れ味に俺も驚いたんだけど、後ろで女の子も驚いた声をあげた。

 金属を斬ってしまうなんて、どんな剣なんだ、こいつ。手に伝わってくるのは、ちょっとした大根とかじゃがいもを切ったのとそんなに変わらない。


「ぎゃぎゃ!」


 さすがのコボルトも斬られたナイフを見て驚いている。

 しかし、それでも頭が犬だからか、それともモンスターだからか。折れたナイフをそのままにコボルトは切りかかってきた。


「お?」


 しかし、今度は盾が勝手に動く。

 左手を勝手に引っ張るようにして、しっかりかっちりと盾がナイフの一撃を防いだ。

 カツン、という軽い衝撃。恐らく攻撃の勢いすら盾が防いでくれている。なんとなくだけど、巨漢の体当たりすら軽く止めてくれそうな信頼感みたいなものが、この盾から感じ取れた。

 いや、それは言い過ぎか。体重差はさすがにひっくり返せないか。


「すげぇ!」


 この剣と盾があったら、こいつには負けない。

 俺は一気にコボルトとの距離を詰めると、自動で動いてくれる剣に合わせて声をあげた。


「くらえ!」


 容赦なく、しかも恐ろしいほどの速度で振り下ろされる剣!

 それはコボルトの頭から一気に股下まで両断し、地面に触れる寸前でストップした。


「ぎゃ?」


 それがコボルトの断末魔、かな。なにをされたか理解していないような顔をしていたが、すぐに結果が出る。

 ぱっくりとコボルトは左右に割れた。

 遅れたように噴き出す血。危うく服に付きそうになったので、慌てて後ろへと下がった。


「血は防いでくれないのか」


 オートシールドは動く様子がない。まったく。攻撃にしか反応しないのか。もっと便利な感じで想像すれば良かった。

 まぁ、なんにしても。

 俺はコボルトを倒したのだった!


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