~いざ洞窟探検~
レイルゥが指した方向へ歩いていくと、そこには洞窟があった。
自然にできた穴っぽく、掘ったようではない。
「アユム様、あれ」
洞窟前には、なにか骨のようなものがあった。
近づいてみると……やっぱりそれは骨で、頭蓋骨の形から動物っぽいことがわかった。
まぁ、さすがに元がどんな動物かは分からないけど。
「ここに住んでいるみたいですね」
「なるほど」
洞窟に集団で住んでいるのなら、この中のヤツらを倒せばいいってことだ。
何匹かは外に出ているかもしれないけど、戻ってきたら全滅してた、なんてことが分かったら別の場所に移動するだろうし。
たぶんそれで依頼は完了できるだろう。
「よし、行こう」
と、洞窟に入っていこうとする俺の服をルイルは掴んだ。
「アユム様。明かりがありませんよ?」
「あっ」
そうだった。
ゲームなんかでは、洞窟の中だろうが遺跡だろうが、普通に見えてるもんな。
良く考えたら洞窟の中に明かりなんてある訳がない。
「え~っと、あったあった」
近くに適当に落ちている太い枝を拾ってくる。
これに火をつければ、たいまつになるはずだ。
「クリエイト・ファイア」
と、俺はまるで魔法みたいに火を思い願った。
俺の願った通りに枝の先が燃え上がるが……すぐに消えてしまう。先っぽが赤く光るだけで、明かりの役割は果たせそうにない。
「む……ダメか」
「アユム様。たいまつでしたら、燃えやすい木じゃないと……」
「そうか」
木だったら何でもいいわけじゃないのか。
「一旦村に戻りましょう。洞窟探索の準備を整えてから――」
「いや、その必要はない」
たいまつに成らないのであれば、たいまつ用の木をクリエイトすればいい。と、思うがそれはそれで非効率的だ。
なにせ俺はもっと便利な物を知っている。
それをクリエイトすればいいだけの話だ。
「クリエイト・LEDライト」
思い願うのは、小さくて明るいLEDのライト。真っ白な明かりが細いペンみたいなやつで凄かった気がする。
「おぉ! 召喚ですね!」
「すごいですご主人様」
目の前に現れた物に驚くルイルとレイルゥ。
どうやら俺の能力はレイルゥから見てもスゴイらしい。ルイルが言っているように、召喚能力と考えてもいいか。どこから呼び出しているのかサッパリ分からないけど。
「む、やっぱり付かないか」
しかし、LEDライトのスイッチを入れても明かりは点かない。
まぁ想定済み。なにせスマホも電池が無かったし。
そう、電池だ。
LEDライトには電池が必要となる。だったら、それをクリエイトすればいい。
「クリエイト・電池」
このLEDライトに合う電池を思い願う。
出現する電池を不思議そうに見るルイルとレイルゥだが、俺はそんな視線を気にせずLEDライトにセットした。
「これで、どうだ」
スイッチを、カチ、と入れればLEDは真っ白に光った。
「おぉ~!」
「きれい!」
真っ白な光は、確かに綺麗なのかもしれない。
明かりが火だけならば、オレンジ色ばっかりだ。こんなに明るい白の光は、ルイルもレイルゥも初めてだろう。
興味深く、少し警戒しながらLEDライトを見ていた。
「これで、洞窟は大丈夫だろう」
「……えぇ、問題ないでしょう」
ルイルはレイルゥを見る。
その視線を受けてレイルゥもうなづいた。
ふたりとも覚悟は決まっているようだ。
「よし。じゃぁ改めて行くぞ」
LEDライトを左手に持ち、剣の柄に手をやりながら俺たちは洞窟の中へ入っていった。
「おぉ」
洞窟の中は、本当に真っ暗だった。
これは明かりがないとどうしようもなかったな。
ゲームとか漫画で洞窟の中へ行くのに明かりを持っていないのはおかしいということが分かった。
まぁ、ゲームとかだしなぁ。
本気にしちゃいけない、ってことか。
リアルなゲームだと明かりが必要とかあるのかもしれないな。
俺たちは、そのままゆっくりと歩いていく。
さすがにスタスタと速く行くわけにはいかない。そこそこ大きな洞窟だから、ライトで照らしながらゆっくりと移動していった。
「ふぅ」
自動盾があるので、どんな不意打ちにも反応してくれる。
それは分かっていても緊張するものだ。
まるでお化け屋敷みたいな感じ。
入ったことはないけど。
洞窟をゆっくり進んでいくと、やがて入り口の明かりは見えなくなっていた。
曲がり角は無かったけど、どうやら徐々に曲がっていたみたいだ。カーブしていたのか、それとも深くなっているのか。
体感では、ちょっとだけ坂になっている気がした。
「クリエイト・ボール」
試しにボールを思い願ってみて足元に落としてみる。
「どうされました、アユム様?」
「ほら、ボールが転がっていく。この洞窟、坂になってて深くなっていくんだ」
「さすがご主人様。すばらしい、どうさつがん、です」
どうさつがん?
洞察眼?
まぁ、いいや。
とにかく洞窟は一本道だけど、どんどんと地面に中に向かっているらしい。
狭くはなっていないから、まだ大丈夫だけど。
もし狭くなっているようなら、ちょっと注意をする必要があるな。
「お?」
そう思いながら進んでいると、すこし広くなっている空間があった。
なにかあるか、と思って警戒しながら近づくが……
「なにもありませんね」
「なんにもないです」
「そうみたいだな」
広くなっているだけで何も無かった。
モンスターとかの手がかりも無く、ただちょっと広がっているだけだった。
ただし、そこで行き止まりになっていて、新しい道が右側へと続いている。
「かなり広そうだな」
道の奥をライトで照らしてみる。
まだまだ先は長い。
これは結構な深さがあるっぽいし、結構大変だ――
「え?」
後ろから、押された。
右側の通路へ向かって歩き始めた途端に、体が後ろから押される。
何に?
自動盾?
自動盾が勝手に動いて、俺の体を、押した?
「あ――」
ちがう。
なんだ?
目の前に、穴が。落ち、落ちる!
「うわ!?」
いつの間にか、足元に大きな穴が開いていて、俺はそこへ落ちてしまった。
ひゅん、と感じる嫌な感覚。
息が詰まりそうな、息ができない感覚。
それがすぐに終わると同時に、衝撃を感じた。
痛み……じゃない。
なにか、液体みたいな、水? 暗くて分からない。ライトは……あった。
……いったい何が?
「え?」
上を向き、ライトを照らす。
そこには――
こっちを見下ろすルイルとレイルゥがいた。




