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異世界転生に安全地帯なし!  作者: 久我拓人
第1章
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~気が付けば死んでいたらしい~

 気が付いたら俺は変な場所にいた。

 まったく見覚えがない所だ。

 見上げたら雲がちょっとだけある青い空。地面というか、床みたいな場所は白い石みたいなものがずっと続いている。

 空に太陽は無い。でも、明るい。

 やっぱり変な空間だった。


「夢か?」


 分からないけど、ほっぺたをつねってみたら、それなりに痛い。


「何も無い……」


 振り返ってみたら、そこには何もない。永遠に同じ場所が続いてるみたいだった。

 やっぱりここは夢の世界なんだろうか?

 仕方がないので真っ直ぐ進んでいくけど……どこへ向かっているのかもわからない。

 しばらく進んでいくと、真っ白な柱が等間隔で建っていた。

 これ、大理石でいいんだっけ? なんか、海外の神殿みたいな場所だなぁ。

 とにかく、良く分からないままに進んでいくと……

 おじいさんがひとり居た。

 なにやら一段高くなった場所で、大きな机に向かって仕事をしているっぽい。

 紙になにかを書いているみたいだ。羽ペンっていうんだっけ。初めて見たなぁ。

 オシャレっていうよりも、なんかこれみよがしに使っているぞ、という感覚になる。

 あんなの本当に使ってる人、いるんだ。ボールペンのほうがよっぽど使いやすそうだ。


「ん? おぉおぉ、すまんかったね」

「え?」


 こっちに気づいたおじいさんが声をかけてきた。


「はぁ……えっと、ここはどこですか?」

「お前さん、死んだんじゃ。ちょっとしたミスでな。体ごと消失してしもうた」

「は? え?」


 死んだ?

 俺が?

 なるほど、やっぱり夢っぽい。

 死んだっていうんだったら、いまの俺は何なのだ、っていう話だ。ちゃんと手も足もあるし、服だって着てる。なんで高校の制服を着てるのか分からないけど。


「通学途中だったからの」

「は、はぁ……」

「とにかく、死んだんじゃ。あきらめてくれ」


 そう無感動に言われてしまうと、なんか良く分からないけど、そうなんだろう、と思った。


「いや、まぁ……分かった。分かったっていうのも、どうかと思うけど。いや、え、どうなってるの?」

「そのままじゃよ」


 かかか、とおじいさんは笑った。


「だ、だとしたらあんたは、死神?」

「おしいのぅ。残念ながら死ではない。ただの神じゃ」

「あぁ……なるほど」


 言われてみれば神様っぽい。

 白くて長いヒゲに、なんかゆったりとしたローブっぽい服。でも、全知全能感は無い。ただのお爺さんだ。

 神様っていっぱいいるって聞いたから、その中のひとりなのかもしれない。


「あ、あの……それで、俺はどうしたら……?」


 このまま天国に行くか、地獄に行くか……選べるんだろうか? だったら目の前の神さまは、閻魔大王ってことになるけど。


「お前さん、消えたいか?」

「いえ、いやいや、それは嫌だ。まだまだ生きていたいに決まってる!」


 たとえこれが夢だとしても、死にたくない。消えたくない。


「ふむ。しかし、元の世界には無理じゃ。お前さんの体は、もう消失しとるからの。ただの幽霊になってさまよわれても困るしのぅ。その管理をするのも手間がいるし、無駄に仕事は増やしたくないわぃ」


 神さまは笑った。笑い事なんだ。

 はぁ、と俺は納得するしかない。


「じゃ、じゃぁ……どうすれば?」

「別の世界でよければ、新しい体を与えてやれなくもない。ちょっとしたお詫びに、特別な能力をプレゼントしてやろう。それで許してくれ」

「許すもなにも……」


 これって、夢じゃないの?

 というか俺は本当に死んだのか?

 通学中に? だから制服のまま神の元まで来たってこと?


「よく分からないんだけど」

「まぁ、そうじゃろうな。ま、後になれば分かる。ほれ、このまま消えるか、新しい世界で新しい人生を歩むか。どっちがいい?」


 そんな二択なら決まっている。


「新しい世界で」


 決まりじゃな、と神さまは笑った。

 本当に神さまなんだろうか。ときどき、笑ってるんだけど。


「では、お前さん。え~っと名前は須磨歩夢だったか」

「あ、はい」


 確かに俺の名前は須磨歩夢だ。すまあゆむ。うん。ちゃんとその名前で十六年生きてきた。

 俺の名前を知ってるってことは、本当に神さまなのか?


「では、スマ・アユムよ。おぬしの新たな生に祝福を。そして、《クリエイト》の能力を授けよう」

「クリエイト?」

「うむ。思い願うがいい。さすれば、お主の思い描いた物を作り出すことができる」

「なんでも?」

「なんでもじゃ」


 へ~。

 と、感心した瞬間――


「うわっ!?」


 俺の足元が消えた。まるで雲の上に立っていたみたいに体が落下し始めた。

 スカイダイビングなんかしたことないけど、きっとこんな感じなんだろう。

 ひゅっ、と体の中の内臓というか、下半身というか。

 なんかそんな部分が冷たくなったまま、俺は雲の上から落ちていった。

 最後に神さまの顔が見えたと思う。

 もうすっかり俺に興味をなくしたように、ただ見下ろすだけの神さまに。

 きっと、すでに仕事に戻っているのだろう。


「うわあああああああああああ」


 そんな神さまを呪う暇もなく、俺は新しい世界へと落下するのだった。


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